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高倉稜騎手インタビュー前編

  • 2011年08月02日(火) 12時00分
乗れてる若手騎手に迫るこの夏の特別企画。2人目のゲストは、栗東の高倉稜騎手です。昨年は37勝を挙げ、JRA賞最多勝利新人騎手を受賞。世代最強騎手のデビュー2年目、その思いに迫ります。

◆リスポリ騎手に刺激

:騎手デビューした去年は、37勝を挙げてJRA新人賞を獲得。順風満帆な騎手生活のスタートを切りましたよね。そして2年目の今年ですが、勝率、連対率、複勝圏内率全てが、去年の数字を上回っている成績です。これに関してはいかがですか?

高倉 :順調と言えば順調ですかね。ローカル、特に新潟で結構勝ち星を上げられたのはあります。今は中央場所にいて、ちょっと勝ち星が落ちているので、中央場所でもしっかりと勝ちたいと思っているんですけどね。あと、勝つだけじゃなくて内容も大事で。自分の納得できる勝ち方をしたいです。

:今年は若手ジョッキーの勢いをとても感じるのですが、現段階のリーディングの順位(7月31日現在、関西リーディング16位)はどうですか?

高倉 :順位は……もうちょっとがんばりたいな、というのはあります。競馬が終わるたびに順位は確認するんです。「あっ、1個下がった」「1個上がった」って、結構見ていますね。

:チェックしているんですね。

高倉 :はい。ただ、今年は川須(栄彦)が目立ち過ぎているので。「お前、今年川須に負けてるな」って言われます。

:同期だから比べられちゃいますね。

高倉 :そうですね。「お前もがんばれ」って言われて、「あれ? がんばっているんだけどな」って思いながら。でも、そういう存在がいることは、すごく刺激になります。

:今年デビュー2年目、今の自分を客観的に見て、どういうふうに思っていますか?

高倉 :競馬で落ち着いて乗れるようにはなってきたかな、というのはあります。だいぶ冷静に判断できるようになってきたかなと。前はちょっと、カッとする面もありましたので。そういう負けん気で、先輩に怒られることも多かったんですけど。

:それは勝ちたい気持ちが前に出てるっていうことですよね。具体的にどんな感じで怒られるんですか? レース中に馬の上で怒られたりするんですよね?

高倉 :そうですね。レース中だと「オイッ」って言われたり。びっくりしますね。

:自分に向けて言われているって、分かるんですか?

高倉 :それは分かります。自分のちょっとした動きですぐに声を掛けられるので。それで「まずい、俺だ」と思って、上がって行ったら怒られますね。もちろん、危ないから「ちゃんと引け」「そこは行く場所じゃない」って注意されるんですけど。

:そこは経験ですもんね。

高倉 :そうですね。あまりに言われると言い返したくなっちゃうこともあるんですけど、そこはぐっと堪えて「すみません」って謝ります。まあ、今では言われることもだいぶ減りましたけど、でもやっぱり、まだ怒られますね。

:プロスポーツの世界ですね。デビューしたばかりの頃は、そうやって怒られることが多かったということですが、デビュー当時を振り返って「こんなダメなところがあったな」って、反省点はありますか?

高倉 :癖馬に乗る時に、昔はちょっと弱気になっていました。

:癖馬に。それは怖いなっていう感じですか?

高倉 :怖いというか、周りに迷惑をかけたくないというか。もちろん危ないのもありますけどね。でも、最近はそういう癖馬でも「前のジョッキーが乗った時より上手く乗ってやる」って思うようになりました。自分の中で、競馬に対しての余裕も出てきたのかなと思います。

:そうやって自分自身の中で変化があると、仕事の幅も広がりますね。騎乗依頼をもらう厩舎も増えたかなという手応えは、ご自身でも感じていますか?

高倉 :増えたなっていうのは、はい、感じます。いろいろな厩舎の馬に乗りたいですから、うれしいですね。前は、初めて頼まれる厩舎だと「ミスしたら次は乗せてもらえないんじゃないか」って、プレッシャーも感じていたんですけど、それはだいぶ無くなりました。最近は、もう全然大丈夫です。

:今デビュー2年目で、今年で二十歳ですよね。それでプロの中で仕事をしていて、成長もしていて、すごいなと思います。理想の騎手は武豊さん、秋山真一郎さん、岩田康誠さんと以前おっしゃっていましたが、それは今も変わらず?

高倉 :はい。あと、年明けに来日したリスポリ騎手(伊、22歳)、上手いですよね。年も近いですし、「ああいうふうになりたいな」と思いました。

:外国人ジョッキーさんは今すごく増えていて、良い刺激にもなりますか?

高倉 :そうですね。乗り方も違いますし。日本はあまりがっちりハミをかけて乗る人はいないんですけど、ウイリアムズ騎手なんかはがっちりハミをかけて、抑えながら乗っています。やっぱり、すごいなと思いますね。

:そういうのを見ていて、自分も海外競馬に行きたいなっていう気持ちはありますか?

高倉 :海外ですか? 実は、8月にアジアヤングガンズチャレンジに行くことになりまして。

※8月6日(土)にオーストラリアのフレミントン競馬場で行われる国際見習騎手招待シリーズ「2011アジアヤングガンズチャレンジ」に、高倉稜騎手がJRA代表として参加。同シリーズは3レース(芝1000m、芝1800m、芝2000m)で行われ、獲得したポイントにより優勝者を決定する。

:そうなんですか。オーストラリアですよね? 何人かで行くんですか?

高倉 :両親と一緒に行きます。…本当は1人で行きたかったんですけど。

:そうなんですか(笑)? 海外の競馬をいっぱい吸収して、帰って来られますね。

高倉 :そうですね。楽しみです。


【次週は】
昨年はJRA賞最多勝利新人騎手を受賞し、世代最強騎手となった高倉稜騎手。しかし、そこに立ちはだかるのが、今年急成長中の同期・川須栄彦騎手です。

プライベートでは大の仲良しというふたり。大好きな買い物も一緒に行ったりと、気の合う親友同士です。

ところが、競馬となれば一転。たちまち、最大のライバルへと変わります。今年の重賞・マーメイドSでは、ライバル心むき出しの攻防も。

ふたりの熱い関係に迫るインタビュー後半も、お見逃しなく!

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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