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川須栄彦騎手インタビュー後編

  • 2011年08月23日(火) 12時00分
19歳という若さで、厳しいプロの世界で堂々と渡り合っている川須栄彦騎手。常に結果を求められる勝負の世界にいて、何を考え何に悩んでいるのでしょうか。その心の内に迫ります。

◆2人にできるんだから

:高倉君が川須君を意識しているというお話でしたが、通算の勝ち鞍が同じくらいなのもあって、高倉君は意識しているみたいですね。

川須 :高倉は1年目でポーンっと勝っていたので、余計でしょうね。高倉はすごく負けず嫌いですから。僕も負けず嫌いですけど、競馬学校に入った時からもう5年くらい一緒にいて、お互いの性格も分かっています。今僕がポンポンっと勝っているので、そこでイライラしているというか。

:「今はちょっと勢いが違うので、僕ももっとがんばらないといけない」っておっしゃっていました。

川須 :そうですか。1年目は向こうがたくさん勝って、「そんなに勝ってすごいな」って思っていました。それに、あれだけ勝ってフェアプレー賞も獲って、技術的にも本当に尊敬できるところがありますし。

:はい。

川須 :ただ、そこで自分が変に焦るというのはなかったですけどね。自分は自分のチャンスが来た時に、結果を残したいなと思っていました。でも、常に同期には負けたくないですし、ちょっとでも上に行きたいというのがあるので、上の方を意識して追いつけ追い越せくらいの気持ちで、2人で刺激し合いながらがんばっています。

:良いライバルですよね。高倉君に「川須君はどんな人ですか?」って聞いたら、「真面目を装っている天然です」っておっしゃっていたんです。逆に、川須君から見た高倉君はどんな人ですか?

川須 :あいつの場合は、強そうな感じで意外に繊細と言いますか。悩みやすいし、傷つきやすい。僕と逆かな。

:川須君は結構どっしりしている?

川須 :そうですね。悩んでもなるべくすぐに切り替えます。ただ、僕はちょっと足りない部分があるんです。もっといろんなことを考えないといけないなと。考える人ほど悩むと思うんですよ。「もっと考えろ」って、逆に僕は言われる方なので。

:「もういいや」って思っちゃうタイプですか?

川須 :んー、なるようにしかならないというか。自分が出来ることをちゃんとやれば、あとはなるようにしかならないなと思っていますし、だめならだめでも、人生なるようにしかならないって。

:確かに。高倉君などの同期や、年の近いジョッキーがリーディングを争うくらいがんばっていることに対してはどう思いますか?

川須 :余計刺激を受けますよね。僕がデビューする前に三浦(皇成)先輩がワーッと勝って、僕がデビューした時に、デビュー2年目だった丸山(元気)先輩が勝って、「2人にできるんだから、自分にだってできる」という気持ちでやってきました。まあ、2人は学校時代の先輩なので、いろいろ言われる方でしたので。

:競馬学校は、上下関係が厳しいんですよね。

川須 :そうなんです。今だったら普通に話せるんですけどね。もし僕たちの下の期にインタビューをする機会があったら、多分同じことを言いますよ。

:「川須先輩、怖かったんです」って。

川須 :いや、「川須先輩より高倉先輩の方が怖い」って言いますから。聞いてくださいね(笑)。川須先輩は優しい先輩です。ただ、何も言わないから逆に怖いというか。僕はどちらかと言うと、言うのが面倒くさかったので。

:あっ、私もB型なので分かります。そこまで周りに興味がないというか。

川須 :そうなんですよね。フレンドリーに行きたいのと、そこまで興味がないのと。本当に自分の大切な人にしか言わないというか。そういう面で冷めているって言われます。

:でも、何かやろうと思い立ったら、すぐにやったりするんですよね。

川須 :そう。自分の気持ち次第ですよね。自分ががんばろうとか、自分が目指していることに対しての努力は全然苦じゃないです。

:今年二十歳になるということで、何かしたいことってありますか?

川須 :したいことですか? したいことは、今は本当に仕事が大切だと思っていますので、まずはしっかり結果を残すことと、技術を身につけること。ある程度自分の地位というか、そういうものを確立するまで、最低3年は本当にがんばらないといけないなと思っています。

:減量がもうすぐ取れそうですよね。

川須 :そうですね。もしかしたら今年中に取れるかもしれないですし。これから減量は取れていきますし、自分の中ではもう、1kg減で乗せてもらっているとは思っていないので、ちょっとずつステップアップしていかないと、と。

:はい。

川須 :減量がなくなって、年が明けてまた0からになったら、勝ち鞍が伸び悩むこともあるかもしれないので、今こうやって流れに乗っている時にしっかり基礎を固めて、最低限自分で自信を持って乗れるくらいの騎乗技術を身につけないといけないなと。今だからこそいろんなことを試して、いろんなことを学ばないといけないと思います。

:何勝したいとか、数字の目標はありますか?

川須 :「今年何勝する」というのはないです。それにとらわれていると、月とか週で「ああ、何勝足りない」って意識しちゃう部分もありますから。

:そうすると力み過ぎたりしますよね。

川須 :そうなんです。今これだけ勝てていること自体、自分が一番びっくりしているわけですし。まずは勝てるだけ勝ちたいというのもありますけど、後々はGIでも依頼されるような騎手になりたいですね。だから、言ったら「一流」というか、そう言われる方たちの中に入りたいです。

:ちなみに、同期が一番意識するということですが、今年入ってきた下の期は意識しますか?

川須 :意識しません。ある意味、下も上も気にしないですね。正直、今騎手で誰を意識するかって言われたら、一番は高倉を意識するんですけど、ある意味ではそんなに高倉も意識しないんです。もう本当に、自分との戦いだと思っています。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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