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田辺裕信騎手インタビュー後編

  • 2011年09月06日(火) 12時00分
「重賞を獲りたい」「GIを獲りたい」、そういう目立った活躍は望まず、自分の仕事を着々とこなしていく田辺裕信騎手。そんな自分を貫く田辺騎手の信念とは。そして、先日発表された結婚話にも迫ります!

◆「結婚するか?」って

赤見 :デビューしてからずっと小西一男厩舎の所属ですよね。10年ですから、長いですね。ちなみに、なぜ所属になったんですか? 先生に聞いたことはあるんですか?

田辺 :「何で僕なんですか?」って? いや、ないですよ(笑)。減量が取れて「フリーになったら」って言われたら辞めようかと思っていたんですけど、そう言われる気配が全然なくて、今に至っています。

赤見 :でも、小西厩舎にすごく合っている感じがします。厩舎の雰囲気も良いですよね。

田辺 :そうですね。和気あいあいとしていて。和気あいあいって、仕事として良いのかどうかは分からないですけど、居心地がいいですね。それと、最近は他の厩舎から良い馬が回って来ることが多くなって、うちの馬が入っているときでも譲ってくださったりしますね。

赤見 :先生は「他の厩舎の馬もどんどん乗ってこい」というような感じですよね。先生も、田辺騎手の今の活躍を喜んでくださっているでしょうね。じゃあ、先生から言われない限りはフリーにはならない?

田辺 :ならないです。なるメリットが分からないですよね。

赤見 :そういう師弟関係っていいですね。では、意識しているジョッキーはいますか?

田辺 :意識しているジョッキーですか? みんな意識していますけど、その中でも中舘(英二)さんですよね、やっぱり。中舘さんはね、うまいですよ。もう昔ですけど、僕がデビューしてすぐの時、「頭が悪いやつは乗れない」っておっしゃっていたんですよね。中舘さんは頭脳派ですよ。

赤見 :ご自分を分析すると何派ですか?

田辺 :真似派。

赤見 :真似派(笑)? 誰の真似派?

田辺 :中舘さん! いや、裏を取りたいんです。そうやって分析をしている人の裏を取りたいので。

赤見 :なるほど。じゃあ「この人には負けたくない!」というのは?

田辺 :中舘さん!

赤見 :それも中舘さん(笑)。中舘さんだけですか?

田辺 :いやいや、特にそういうのはないですけど。自分が乗っていたらやっぱり勝ちたいし、でも自分が乗っていないレースだったら応援したいですし。成績のことは、今はありますけど、僕はあまりそこにはこだわりたくないので。みんな均等に勝てたらいいと思いますしね。

赤見 :何か、精神的に悟りを開いているような。欲がないですよね。ガツガツした感じがない。

田辺 :欲はありますよ、僕。稼ぎたいですし(笑)。

赤見 :でも、「上に行きたい」とかそういうのは。

田辺 :上に行きたい…まあ、そうですね。目立つ仕事ですからあれですけど、でも、去年や一昨年は「この辺がいいな」って思っていたくらいですからね。あまりそういうのはなかったんですかね。

赤見 :成績が振るわない騎手からしたら、うらやましいと思いますよ。

田辺 :出走登録の方法が変わったのって、分かりますか? 僕がデビュー3、4年目くらいから徐々に変わっていって。走る馬に上のジョッキーが乗るので、乗っていないようなジョッキーは余計に苦しくなるんですよね。

赤見 :はい。

田辺 :僕もその部類に入っていたので。「ちょっとイーブンじゃないな」とは思っていましたよね。

赤見 :そういう思いをしてきたからなんですね。そうすると今年の目標というのは? 「前の年より多く勝つことが目標」ということですから、今年はもう達成しちゃった?

田辺 :そうなんですよ。目標はいつもあまり持たないんですけど。まあ、成績はあまりガクッと下がらないようにしないといけないですね。

赤見 :GIを獲りたいとかは?

田辺 :GIですか? でも僕、今年くらいの50、60勝か、G1獲るかって言われたら、50、60勝を選びます。

赤見 :それはなぜですか?

田辺 :賞金の関係で(笑)。まあ、多少の上げ下げはあるでしょうけど、長くジョッキーをやっていくには、ある程度の成績は出していないといけないと思いますので。

赤見 :GIの一勝も未勝利戦の一勝も、同じ一勝ですもんね。ではプライベートの話ですけれども、ジョッキー皆さんだいぶ結婚されていますが、ご予定はありますか? えっ、あるんですか!?

田辺 :実は、もうしたんですよ。

赤見 :ええええっ!? おめでとうございます!! どんな奥様なんですか?

田辺 :競馬のことは何も知らないです。僕はその方がいいので。

赤見 :ちなみにプロポーズの言葉は?

田辺 :「結婚するか?」って(笑)。

赤見 :何か、その場が見えるような(笑)。じゃあ、今年の活躍は奥様の存在も大きいんでしょうね。

田辺 :いや、それは今はいいから言えますけど、ダメになったら下げるって言われるじゃないですか。

赤見 :確かに、すぐそう言われちゃいますよね。だからあまり意識させないようにしているんですか。

田辺 :そうですね。

赤見 :優しいですね。そう言えば、すごくお酒を飲むって。結構人にも飲ませるタイプだって聞きましたが?

田辺 :昔は(笑)。

赤見 :今は?

田辺 :多少(笑)。

赤見 :あはは(笑)。酔っぱらうとどうなりますか?

田辺 :酔っぱらうと真っ赤になります。

赤見 :気分は?

田辺 :気分はずっといいので。飲む前からハイテンションですよ。

赤見 :なるほど。仕事でもプライベートでも、あんまり気持ちは変わらない感じですか?

田辺 :そうですね。だから、仕事に対してのストレスはないですね。

赤見 :ストレスがないんですか!? それって、天職ですね。

田辺 :ただ、朝が早いのが嫌です。暗いうちに乗るなら朝早くじゃなくても、夜遅くでもいいんじゃないかって思います。「今日は21時から調教始めます」だったら、21時から3頭乗って、そこから飲みに行ったりもできますし。それでそのまま朝は寝ていられますよ。

赤見 :たしかに。それは新しい意見(笑)。最後に、田辺騎手がジョッキーとして一番大事にしていることは何ですか?

田辺 :一番大事にしていることは、人間関係。人間関係はやっぱり大事ですよね。良い馬ばっかり選んでいたら、絶対亀裂が出てきます。それに人間関係がしっかりしていなかったら、良い馬は回ってこないです。そういうのは大事ですよね。

赤見 :だからずっと所属厩舎も大事にされているんですね。何だか、とても納得です。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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