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田中清隆調教師インタビュー中編

  • 2011年09月14日(水) 12時00分
阪神JFから池添謙一騎手とコンビを組み、クラシック路線を歩んできたホエールキャプチャ。GIタイトルにはまだ届いていないものの、常に堅実な走りを見せてくれます。この崩れない強さ、どこからきているのでしょうか。

◆桜花賞は悔しいレース

赤見 :デビューから2着、1着、1着、初重賞出走のファンタジーSが3着、GIの阪神JFが2着と、善戦続きだったホエールキャプチャがついに重賞タイトルを手にしたのが、年明けのクイーンC(11/2/12、東京芝1600m)でした。

田中 :はい。

赤見 :ここは本当に、横綱相撲でしたよね。

田中 :そうですね。あの時はスタートもうまく出てくれて、道中も何の不利もなくて。本当の、100%の力を出し切ってくれたレースでしたね。

赤見 :この時は東京でのレースでしたが、追い切りに乗るために池添騎手が栗東から美浦まで来られたんですよね。あれは池添騎手からの申し出だったのですか?

田中 :そうです。1回感触を確かめたいというので乗ってもらいました。

赤見 :池添騎手は「クイーンCは負けられない」って、強い気持ちを持っているっておっしゃっていましたよね。そして、いよいよクラシック戦線を迎えるわけですが、まずは桜花賞(11/4/10、阪神芝1600m、2着)。

田中 :はい。

赤見 :人気になるだろうと思われた2歳女王のレーヴディソールが骨折で回避、ホエールキャプチャが押し出されるように1番人気となりましたが、結果は2着。やっぱり、8枠16番という枠の影響が大きかったでしょうか?

田中 :そうですね。まあ、枠なんでしょうけど…ここは、残念なレースでした。

赤見 :この時もちょっとスロースタートで後ろからの競馬になり、最後の直線で大外に持ち出してメンバー最速の脚で上がってきたけども、内で脚を溜めていたマルセリーナに及ばずと。

田中 :ええ。まあ……仕方ないですよね。勝てたレースだとは思いますけど、競馬はいろいろありますからね。

赤見:先生の中では、かなり悔しい2着?

田中 :悔しかったですね。

赤見 :そしてオークス(11/5/22、東京芝2400m)ですが、今度はマルセリーナにつぐ2番人気。いつも人気を背負いますね。ここもまた惜しかったですね。

田中 :そうなんですね。あれはゲートの中で半立ちというか、伸び上がるようなスタートをしちゃったものですからね。

赤見 :その影響で最後方からになりました。それですぐに内に入って、良い位置につけて、後ろで待機策を取りましたね。

田中 :まあ、良い位置とは言っても、それだけ脚を使っていますから。それにスタートの遅れでも、あれで3馬身4馬身は不利ですからね。

赤見 :そう考えると、初めての2400mでしかも雨も降っていたなか、あの追い上げは…。本当によく追い詰めましたよね。34秒0の末脚は断トツのメンバー最速。さすがだと思いました。ただ、今後も考えると、やっぱりネックはスタートになってきますか?

田中 :そこなんですね。競馬でテンションが上がるのが影響していると思いますね。落ち着きがないところですね。

赤見 :ひと夏を越えて、その辺りの精神的な成長は見えますか?

田中 :それはどうでしょうか。競馬になったらまた燃えるのかなとは思うんですけどね。ただ、夏は順調に過ごせましたよ。まあ、体は多少大きくなったかなという程度で、春と雰囲気は変わりませんけれど、もともとがね。

赤見 :もともと体型的にむっちりという感じではないですもんね。

田中 :そう。ボリュームのある馬じゃないですね。どっちかと言ったら、トモのさびしい馬でしたから。

赤見 :それでもここまでずっと馬券圏内を外していないというのは、頼もしいですよね。そういう成績を残せるこの馬の最大の武器は、どの辺りに感じていらっしゃいますか?

田中 :最大の武器は、心肺が良いということですね。

赤見 :心肺の良さですか。

田中 :はい。やはりオープン馬は心肺が優れていますからね。同じような稽古をしても、どんどん良くなっていきます。心肺機能は持って生まれたもので、良くならない馬は良くならないですから。

赤見 :持って生まれた天性の才能なんですね。そこが強さの秘密という。そう言えば、レディパステルも一度も掲示板を外していない堅実な馬でしたね。

田中 :あの馬もそうですね。4着5着はありましたけど、掲示板は外していないですね。まあ、ホエールキャプチャとはまたちょっとタイプが違うんだけど、二頭ともがんばり屋です。

赤見 :そして、どっちも気の強い女の子。レディパステルもちょっと気性が激しかったということで、管理されるのも大変だったんじゃないですか?

田中 :そうですね。乗ったりする時も結構かかったりとかね。ちょっと気に入らないと立ち止まってしまったりして。

赤見 :それは結構、本格的に激しい気性だったんですね。

田中 :割とね(笑)。そういうこともあったから、あのオークスは勝てた喜びが大きかったんですけれどね。

赤見 :ホエールキャプチャやレディパステルのように、競馬で必ず一生懸命走ってくれる真面目な馬は、逆に怖さみたいなものってありますか?

田中 :いや、それはないですね。馬も人間も真面目なのに限ります(笑)。

赤見 :なるほど(笑)。じゃあホエールキャプチャに関しては、ゲートさえスムーズだったら最高という。

田中 :そうです。レースで燃えすぎないようにしてくれればね。スタートしちゃえばいいんですけど、ゲートを切るまでがテンション上がってしまうので。その辺でもう少し落ち着くようになってくれれば、言うことないんですけどね。

赤見 :唯一の課題ですね。今回もローズSの後は、そのまま秋華賞まで栗東滞在を?

田中 :そうです。最初は直前輸送でもいいかなと思ったんですけれど、やはり渋滞とかいろいろ考えて。もし渋滞に巻き込まれたら、それだけ不利になりますからね。

赤見 :3歳牝馬の繊細な時期ですし。この秋どんなレースを見せてくれるのか、楽しみです。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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