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友道康夫調教師インタビュー前編

  • 2011年09月20日(火) 12時00分
オルフェーヴルの三冠奪取に沸く3歳牡馬界に殴り込み! 数々のアクシデントに見舞われながら競馬では3戦無敗と、期待度急上昇のフレールジャックが神戸新聞杯に登場。未知なる可能性を、友道康夫調教師が語ります。

◆あわや…競走除外寸前

:フレールジャックは、デビューが今年の5月で春のクラシックには間に合わなかったですが、現在3戦無敗で注目が集まっていますね。もともと、兄弟のほとんどが友道厩舎に入厩しているゆかりの血統なんですよね?

友道 :そうなんです。長女のハルーワスウィートがいたので、その下はだいたい預けていただいています。この血統は、ほとんどが勝ち上がっているんですよ。だから今回も期待していました。まして、お父さんがディープインパクトですからね。

:入厩した時に「うちのディープが来た」とおっしゃっていたそうですね。

友道 :ああ(笑)。うちのこの世代にディープの仔が3頭いるんですけど、その中でこれが一番ディープらしかったのでね。小さい時から体全体が柔らかいというか、バネがあって、すごく良い馬でしたよ。

:牧場からもその辺りの期待度とか成長具合は、聞いていらっしゃいましたか? 育成時代は、オルフェーヴル(皐月賞、ダービー1着)やリアルインパクト(安田記念1着)と調教していたとか。

友道 :そうそう。一緒の厩舎だったらしいです。牧場でも本当に順調にきているということで、それこそ、去年の新馬戦が始まる最初の阪神開催で使えるくらいだったんです。それで、連休明けにはトレセン近くのグリーンウッドまで持って来たんですけど、その時にお尻に水が溜まるようになってしまって。

:じゃあその時は、トレセンのすぐ近くまでは来たけども入厩はせず?

友道 :はい。最初に入厩したのは去年の9月か10月頃です。でも、来てから1週間でまた水が溜まり始めて。応急処置的に1週間に1回くらい注射器でピューッと抜いていたんですけど、それでは治らないので、1回牧場に戻したんです。結局、怪我したところの肉がうまくひっついていなくて、その間に水が溜まっていたんです。なので、わざと新しい傷を作って、それを修復させると。

:わざと傷を…。じゃあ、回復までに結構時間がかかりましたか?

友道 :次に入厩したのが去年の年末なので、3か月かかっていますね。その時にはもう良くなって、ゲート試験も受かったんです。で、いよいよ競馬だという時に、今度は挫石で爪を痛くして。それでまた放牧に出たんですよね。

:2回入厩して、2回仕切り直しに。

友道 :そうなんです。順調に行ったのは3回目の入厩です。そこからはデビューまで順調に行けました。(福永)祐一に何回か調教で乗ってもらったんですけど、「すごく良いバネしているし、走りそうな雰囲気」と言っていましたよ。

:祐一さんをパートナーに選ばれたのは、何か理由があったんですか?

友道 :この馬、普段は大人しいんですけど、スイッチが入ると結構気合いが乗るタイプなんです。なので、当たりの柔らかいソフトなジョッキーに乗ってもらおうと思って、祐一にデビュー前から声を掛けていたんです。

:性格的にちょっとヤンチャなんですね。

友道 :兄弟もみんな気が強いところがあるんですよね。お母さんもきつかったですし。

:ディープインパクトもデビューの時はうるさかったですよね。

友道 :ディープの仔って、うるさいけれども何か頭が良いと言うか。自分を分かっていますよね。お父さんのサンデーサイレンスは、とにかく気が強いという感じで。

:じゃあ、フレールジャックはおじいちゃんが出たんですかね。スイッチ入ると、カッとなるような。

友道 :そうですね。この前のラジオNIKKEI賞(11/7/3、中山芝1800m)の話なんですけど、レース前にゲート裏で待っている時に、立ち上がってラチを跨いだらしいんです。最初は大人しく乗っていたのに、急にポンと立ち上がってポンと跨いだって(笑)。

:ええっ!? 障害飛びたいのかな(笑)? 体は大丈夫だったんですか?

友道 :祐一は「これはだめだ、競走除外だ…」と思ったらしいですね。それが、跨いだ時に、ラチの上にちょうど腹帯がきたみたいで。

:腹帯がクッションになった。

友道 :そう。だから怪我はなかったですし、祐一が手綱を引っ張ったら、また自分で戻ったらしいです。それで、そのまま普通に競馬を走って。

:で、そのまま重賞を勝ったと。すごいですね。振り返ると、予定から1年近く遅れてのデビューにはなりましたが、デビュー戦の未勝利戦(11/5/7、京都芝1800m)ではいきなり1番人気に。

友道 :調教でもある程度動いていましたし、未勝利戦でも負けることはないかなとは思っていたんです。ゲートさえ普通に出てくれれば勝つんじゃないかな、という感じでは思っていました。

:ゲートの心配があったんですか?

友道 :いや、心配というか初めての馬なので。何回か使っている馬に比べたら、ゲートを出るタイミングが遅いかなと思ったんです。実際ゆっくりしたスタートだったのは、その分が出たと思います。

:ポジションは中団になりましたが、最後がまた強烈な。展開的に前残りの中、後ろから33秒6の脚で捕えて。

友道 :あの時、東京競馬場でレースを見ていたんです。で、4コーナーを回ってもまだ中団にいたから、「これはダメなのかな」って。でも多分、祐一は余裕を持っていたんでしょうね。自分で乗っていた馬だから、分かっていたんだと思います。

:最後は2馬身差で勝利。

友道 :うん。やっぱり違うなと思いましたよね。こっちが思っていた通りの走りをしてくれたというか。先々も期待が出来るなと思いました。初戦でそういう勝ち方をしてくれたので、2戦目(500万下、11/5/22、京都1800m)も大丈夫じゃないかなと思っていたんです。ところが、当日はすごい雨で。それが一番心配でした。

:しかも、前半はかかっていましたし。

友道 :3コーナーまでずっとかかり気味でしたからね。「この馬場でかかって、終い残れるのかな」というのがありましたよね。それでも、あのドボドボの馬場で最後まで諦めなかった。ああやって真面目に走ってくれるところが良いところですね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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