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友道康夫調教師インタビュー中編

  • 2011年09月21日(水) 12時00分
アクシデントで入退厩を繰り返し、予定から1年近く遅れてのデビューとなったフレールジャック。ところが一転、デビューしてみれば無傷の3連勝で重賞制覇。次走はダービー馬オルフェーヴルと対決です。

◆菊花賞か天皇賞・秋か

:デビューから2連勝した後、3走目のラジオNIKKEI賞(11/7/3、中山芝1800m)までは1か月半間隔が空きました。

友道 :そこはいったん、ノーザンファームしがらきに放牧に出しました。2戦目の道悪が堪えたみたいで疲れが残っていたようだったので、しばらく放牧に出したんですよ。

:疲れを取るために。

友道 :そうですね。だから放牧に出した時は、「ラジオNIKKEI賞を使おう」というのじゃなくて、「具合が良ければラジオNIKKEI賞を使いましょう」という感じだったんです。で、牧場でもしっかり乗ってもらって、疲れもないし、行けるというので、「じゃあラジオNIKKEI賞に」と。

:先生は、ローテーションを先に決めるんじゃなくて、馬の様子を見ながら決めていらっしゃるんですか?

友道 :春のクラシックとかが目標なら、ある程度ローテーションは決めますけど、この時期は大きなレースがないので、どっちにしても秋に備えるような感じですからね。
:それで順調に具合が良くなったので、ラジオNIKKEI賞に行ったということなんですね。リフレッシュしたのと、ここまで実戦を2回経験して、馬の気配が変わったなという感じはありましたか?

友道 :いや、調教ではそんなに時計は出ない馬なんです。でも、乗り心地は良いみたいですけどね。ただ、このラジオNIKKEI賞の時は、結構調教でも動いたんです。だから具合が良いのかなと思っていました。

:初めて関東での競馬でしたが、当日の馬体重が10kg減の436kgと。

友道 :それは輸送で減ったわけではなかったので、そんなには心配していなかったです。トレセンにいる時に1回測ったんですよね。そうしたら体重が減っていましたので。

:輸送が原因じゃなかったんですか。夏場だったというのも?

友道 :うん、それもあったと思います。お父さんも440 kgくらいだったでしょう。そう思えば、あまり減り過ぎるとあれですけど、これくらいが良いんでしょうね。実は僕、この馬の競馬を現地で見るの、この時が初めてだったんです。

:生で見るのが(笑)?

友道 :そう(笑)。装鞍所で見ていたら結構イレ込んでうるさかったので、厩務員と助手に「うるさいね」って言ったら、「これはましな方ですよ」って。だんだん大人しくはなってきているみたいですね。初戦が一番元気良かったみたいです。

:祐一さんは「レース前はかなりナーバスだった」とコメントされていましたが?

友道 :それは、ラチを跨いだのがあったからじゃないですか?

:あっ、本当の直前に(笑)。

友道 :そうそう(笑)。そういうことをひっくるめてのことだと思います。でも、そんなことがあったなんて、あの時は見ていても分からなかったんですよ。で、競馬の後に厩務員が「ゲート前大変だったんですよ。大丈夫ですかね」って言うので、それでみんなでお腹の下を見てみて。

:傷いってないかな、って。またこのレース、1コーナーですぐ前にいた馬が大外に膨れてしまって競走中止したんですよね。それについては、祐一さんは影響なかったっておっしゃっていましたか?

友道 :うん。祐一は「影響はなかった」って言っていましたよ。映像を見ていても、ちょっと外に振られたけれども、その後は普通に走っていましたしね。本当は、その膨れた馬の後ろに付けて、折り合いをつけようと思ったらしいんですけど。

:あれ、いないって(笑)?

友道 :そう(笑)。そこからちょっとムキになって走っていたんです。まあでも、そこまで気にしていないような感じでしたし、最後までしっかり走っていましたからね。

:デビュー3戦で重賞を手にしたということで、ここまで先生の期待通りに来ていますか?

友道 :そうですね。本当にここまで順調に来ています。ラジオNIKKEI賞の後はすぐ放牧に出して、8月26日に帰って来たんですけど、馬体も20kgくらい増えていると思いますし。

:またレースを見ていても、位置取りの自在性があるなと思うのですが?

友道 :3回とも違う位置取りで勝っていますね。やっぱりそこは、競馬に行くとセンスがあるんですよね。あとは競馬までもう少し平常心でいてくれれば。まあそれも、初戦に比べれば徐々に良くなっているみたいですからね。

:今の時点で心配なことはそんなにないですか?

友道 :そうですね。心配といったら距離くらいですね。先日も祐一と一緒に北海道にいたんですけど、「距離持つかな」って言っていました。

:神戸新聞杯の結果次第で、次走が菊花賞か天皇賞・秋かということですが、先生の中ではどちらの方がというのはあるんですか?

友道 :いや、五分五分です。本当に。まあ、どのレースになるかは分からないですけど、この馬にGIを獲らせてあげたいですね。

:タラレバになってしまいますが、もしもデビュー前のアクシデントがなかったら、春のクラシックには乗っていたと思われますか?

友道 :クラシックには乗っていたと思いますよ。勝ったかどうかは、分かりません(笑)。でも、それだけの手応えは。それこそ育成が始まった時から期待していましたからね。

:菊花賞、天皇賞・秋、どちらに進んでも鞍上は祐一さんで?

友道 :はい。乗ってくれると思います。祐一はやっぱり、当たりが優しいですよね。こういうガッと行きたがる馬を、うまくなだめてくれますよ。

:担当の厩務員さんもやっぱり優しい方ですか?

友道 :優しいです。去年の12月にうちにきた若いスタッフなんですけど、この馬で3勝して、もう1頭の担当馬も結構勝っているんですよね。そう言えばこの前、フレールジャックに咬まれたか何かで、おでこに青たん作ったって言っていました(笑)。

:痛い…。やっぱりヤンチャですね。でも、いつでも元気いっぱいなのは良いことですよね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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