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友道康夫調教師インタビュー後編

  • 2011年09月22日(木) 12時00分
フレールジャックの一族に、もう一頭光輝く若馬がいます。先日、鮮やかにデビュー勝ちを決めた2歳牝馬のヴィルシーナ。オーナー佐々木主浩氏の同馬への思い、そして競馬愛に迫ります。

◆札幌が盛り上がった!

:フレールジャックの姪っ子のヴィルシーナ。馬主が佐々木主浩さんということで、新馬戦(11/8/28、札幌芝1800m)を勝った時は話題になりましたね。

友道 :この時の札幌競馬場はすごかったですよ。勝った後の「おめでとう」という声も多かったですし、ファンの方がみんな色紙を持っていましたね。

:馬主さんもスターだと、また盛り上がりますね。

友道 :やっぱり盛り上がりが全然違いますよ。また、こういう馬が走れば競馬が盛り上がって良いですよね。

:ヴィルシーナは、佐々木さんにとって思い入れのある血統だそうですが?

友道 :そうです。フレールジャックのお姉さんハルーワスウィートの仔なんですけど、そのハルーワスウィートが、この一族でうちの厩舎に初めて決まった馬なんです。この馬、すごく血統が良いんですけど、尻尾がないんですよ。

:えっ、尻尾がないんですか? ちょこっとしかない?

友道 :いや、全然ない。生まれつきなかったんです。お母さんのハルーワソングが持ち込み馬で、ハルーワスウィートは日本で生まれたんですけど、生まれた時からなくて。

:尻尾がないと走りにくいとか、バランスが取りにくいということは?

友道 :バランスが取りにくいっていう話ですけれども、この馬の場合は生まれつきだからこういうものだろうと思っていたんじゃないですかね。虫を払えないのはかわいそうでしたけどね。でもこの馬、5勝もしたんですよ。

:すごい!

友道 :その子どもがヴィルシーナなんですけど、佐々木さんはハルーワスウィートのことを知っていて、「尻尾がないのに一生懸命走っていてかわいいね」っておっしゃっていて。それで、その子どもをずっと持っていらっしゃるんです。

:そうだったんですか。そういう思い入れのある馬で初めて新馬戦を勝たれて、かなり喜んでいらっしゃいましたか?

友道 :喜ばれていました。その晩は何だか盛り上がりましたね。佐々木さんは本当に馬がお好きなんですよ。野球より好きなんじゃないかな(笑)。

:野球よりですか(笑)。競馬場にもよく来られていますよね。

友道 :そうですね。調教も見に来られますし、牧場にも行かれています。僕らより熱心かもしれないです。

:自分の持っている馬はわが子みたいな感じで、見守っていらっしゃるんですね。佐々木さんって、何か怖いかなというイメージがあったんですけど。

友道 :いやいや、全然。おもしろいし、すごく良い方です。一緒に道を歩いていると、よくサインを頼まれているんですけど、必ず応じていらっしゃいますよ。

:そうなんですか。優しい方なんですね。ヴィルシーナもディープインパクト産駒ですが、フレールジャックと似ていますか?

友道 :やっぱり似ています。体も、毛色が違うのでパッと見は似ていないですけど、大体430、440kgくらいで小柄で、歩かせると柔らかくて。その辺が似ていますよね。

:ヴィルシーナは現在放牧中ということですが、次走はどの辺りを考えていらっしゃいますか?

友道 :どこというのは決めていませんが、どこか1、2回使って、阪神JFだと思っています。だから逆算すると、10月の頭にはトレセンに連れて来て、10月か11月に1、2回使ってと。

:牡馬も牝馬も楽しみな馬がいますね。厩舎自体、勝ち星はほぼ毎年増えて、200勝も達成されました。先生の中で、順調ですか?

友道 :そうですね。順調ですよね。

:今年が開業10年目ということで、何か「やってやろう」という意識はありますか?

友道 :あっ、今年10年目なんですか(笑)? 全然そういうのが。毎年、毎年必死ですので。

:積み重ねということなんですね。重賞も、05年からずっと勝たれてきましたが、昨年はちょっと一休みで。

友道 :そう。去年は重賞勝ちがなかったんですよね。毎年うちのスタッフには、「勝ち星も大事だけど、大きいレースに出走できる馬をたくさん作ろう」という話をしているんです。

:大きいレースに出走できる馬を作るのが、厩舎の目標なんですか。

友道 :そうです。毎年、重賞を勝てるというか、GIを勝てるような厩舎にして行こうという話はスタッフにしています。やっぱり、もっともっとGIを勝ちたいですよね。重賞勝ちも嬉しいですけど、やっぱりGI勝ちって、また格別に違いますもんね。あの感動を毎年味わえるようにしていきたいです。

:GIの感動を。

友道 :そのためには、まずは無事に出走させるようにというので、毎日毎日の馬のケア、チェック、そういうのは入念にしてもらうようにしています。

:先生のところは、若いスタッフさんが多いですよね。

友道 :そうですね。まあ、平均年齢は30歳くらいじゃないですかね。みんなやる気がありますよ。僕よりありますから(笑)。

:そうなんですか(笑)?

友道 :うん(笑)。だから本当に、現場のことはスタッフに任せられるというか。この時期、僕はよく北海道に行っていて、今日も10日ぶりくらいにトレセンに帰って来たんですけど、それでも厩舎は全然大丈夫ですから。僕はいない方がいいんじゃないかな(笑)?

:いやいや(笑)。でも、すごく良い信頼関係ですね。

友道 :そうですね。現場のことは本当に信用しています。安心していますね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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