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安田隆行調教師インタビュー中編

  • 2011年09月28日(水) 12時00分
去年のスプリンターズSは、夢まであと一歩のところでまさかの降着となったダッシャーゴーゴー。今年はリベンジの一戦です。前走のセントウルSは1番人気で3着。本番に向けて、安田隆行調教師の評価は?

◆ダッシャーの勝ちパターン

:カレンチャンの次走がスプリンターズSですが、現時点で何か課題はありますか?

安田 :気持ちが入り過ぎた時にぐっと行くところがあるのでね。その辺りがちょっと怖いですね。もし、ハナに行く馬がいなくて、この馬が楽にハナに立って自分のペースで行けるようなら、ふわっと落ち着けるんじゃないかなという気もしますよね。その辺はやってみないと分からないですけどね。

:行き脚もすごくいいですもんね。

安田 :いいです。すごくいいんです。ゲートセンスが抜群にいいんですよ。だからカレンチャンに合うような競馬になればいいんですけどね。ある程度速い流れで前が行ってくれて、好位で前を見ながら競馬ができるというのが理想的ですよね。重賞3連勝でGIにチャレンジするわけですけれども、正直、この勢いをそのままGIにぶつけて欲しいなと思います。

:そして、そのカレンチャン最大のライバルになるダッシャーゴーゴーについてもお聞きしていきたいのですが、前走のセントウルS(11/9/11、阪神芝1200m)は1番人気で3着という結果でした。先生、ご覧になっていかがでしたか?

安田 :まあ、勝ち馬(エーシンヴァーゴウ)はずっと順調に使っていましたしね。うちの場合は、夏はひと休みして、セントウルSからスプリンターズSに行きたいと思っていましたから、あの負けは仕方ないかなと。結果的には悪くないと思っています。強いて言えば、もうちょっとペースが速くなって欲しかったですね。

:ちょっと展開が遅かったなという。


安田 :はい。もっとガンガン速い流れになって欲しかったですね。14番枠で、平均ペースになって、内に入れなかったんですね。その辺りがちょっとかわいそうだなと思いました。

:川田(将雅)騎手も内に入りたかったってコメントされていました。

安田 :ええ。もっとペースが速かったら、縦長になってすっと入れたんですよ。それができなかっただけに、ちょっとね。直線向いたところでもうハナに立ったでしょう。あの辺が早かったなと思うんですよ。ただ、これを使ってさらに良くなりますよ。

:ダッシャーゴーゴーは、今やスプリント界の中心的存在ですもんね。今ではずっと1200mを使っていますが、スプリント路線だなというのはどの辺りから考えていらっしゃったんですか?

安田 :お父さんがサクラバクシンオーなので、デビューの頃から長い距離はまず無理だと思っていました。2歳の時、小倉2歳S(09/9/6、小倉芝1200m)で2着、京王杯2歳S(09/11/14、東京芝1400m)が4着だったんですね。

:はい。

安田 :朝日杯FS(09/12/20、中山芝1600m、12着)は、まあ、2歳のチャンピオン戦ですしね。出られる条件も能力もそろったから、こういうのは出してやるべきだと思って出したんですけれども、やっぱり距離が長かったですね。で、去年のCBC賞(10/6/13、京都芝1200m)以降、ずっと1200mですね。

:それが3歳の時ですね。

安田 :ええ。そのCBC賞は、古馬相手にどこまで来るのかと思ったら、2着で。それで、夏の北九州記念(10/8/15、小倉芝1200m、11着)を使ったら、今度はボロ負けしまして。

:夏がちょっと苦手なんですか?

安田 :いや、夏は苦手じゃないんですけど、小倉の1200mというペースが、この馬にはすごく合わなかったんですね。

:忙しすぎたんですか?

安田 :忙しすぎて。それで、去年はCBC賞、北九州記念、セントウルSというローテーションだったのを、今年は、CBC賞の後は北九州記念を止めて夏は一息入れて、セントウルSからスプリンターズSへ行こうと、そういうローテーションを立てたんですね。

:今年はローテーションを変えたんですね。去年のスプリンターズS、今年の高松宮記念と、GIの舞台でちょっと悔しいことが続きましたけども。

安田 :ええ。降着がありましたね。

:川田騎手も悔しい思いをされていると思いますし、先生にどうしてもGIをプレゼントしたいと、以前このコーナーに出ていただいた時に言っていました。

安田 :そうですか。「じゃあ、賞金もってこい」って言っておいてください(笑)。でもね、何と言うのかな、あのレースを見たら、負けはしましたけどレース自体はね。去年のスプリンターズSは、4コーナーまで内で辛抱して、前のちょっと空いたところへ入って。その時に、サンカルロの進路を邪魔してしまったんですけれどもね。

:はい。


安田 :でもあの馬は、そうやって脚を溜めれば、瞬発力ってすごいものを持っていると思うんですよ。去年のセントウルS(10/9/12、阪神芝1200m)を勝ったでしょう。それと、今年のオーシャンS(11/3/5、中山芝1200m、1着)、CBC賞(11/6/12、阪神芝1200m、1着)、この3つはよく似ているんですよ。

:と言いますと?

安田 :4コーナーまでずっと壁を作って、回り切ってから出して、それから伸びて来ているんですよ。で、直線半ばで先頭に立って押し切っていると。壁を作るというのは、あの馬にとっての1つの勝ちにつながるポジションなんですね。だから、今度のスプリンターズSでも「できるだけ壁を作って、辛抱できるところまでしてくれ」と、ジョッキーに指示します。

:改めて、今年こそ期待ですね。

安田 :ええ。前走のセントウルSを使ってさらに良くなると思いますよ。ただね、あのロケットマンという世界最強のスプリンターが来るのでね。まあ強いでしょうけど、胸を借りたいなという気持ちです。

:何か名前も強そうですね、ロケットマンって(笑)。

安田 :ね(笑)。ロケットのターボを抜いておきますか(笑)。まあ、今回はロケットマンがいますけど、自分の競馬に徹することは変わりないです。自分との戦いです。自分の競馬をすれば、結果は付いてくると思うんですね。

:そのためにも、壁ですね。去年と比較して、今年の体調というのはいかがですか?

安田 :いいですね! 去年はまだ3歳でしたから、やっぱり若さというのもありましたし。今年は馬も年齢を重ねて、馬自身がしっかりしています。だいぶパワーアップしていますね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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