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安田隆行調教師インタビュー後編

  • 2011年09月29日(木) 12時00分
インタビュー最終日は、カレンチャン、ダッシャーゴーゴーと共にGIの舞台を目指すトウカイミステリーへの思い、スプリンターズSの先に見据えるもの、そして安田隆行調教師の熱い信念に迫ります。

◆来年のドバイは2頭で

:スプリンターズSではカレンチャン、ダッシャーゴーゴーどちらも人気になるでしょうし、今回は本当にライバルですね。

安田 :そうですね。カレンチャンの方が競馬の仕方はうまいですね。ダッシャーゴーゴーは壁を作ったり、展開面で注文がつくので。でも、パワーではやっぱりね。爆発力を出したら男馬だけに、ダッシャーゴーゴーは力を持っていますね。

:パワフルなんですね。ちょっと燃えやすいところもありますか?

安田 :ありますね。まあ、それはどっちにも言えますけどね。カレンチャンもエンジンに火が付くと燃えますけど、ダッシャーゴーゴーの場合はエンジンに火が付くと、ボコンっと爆発しちゃいますから。線香花火と打ち上げ花火です(笑)。

:分かりやすいです(笑)。そういう癖も、川田(将雅)騎手は手の内に入れているんですもんね。

安田 :ええ。十分に分かっていますね。

:その強力な2頭と一緒にGIを目指すのが、トウカイミステリー。前々走の北九州記念(11/8/14、小倉芝1200m)で初めて重賞を勝利して、その次のセントウルS (11/9/11、阪神芝1200m)は11着という結果になりましたが。

安田 :前走は自分なりに競馬をして、4コーナーで弾かれて、ああいう結果になったんですけれども。その前の北九州記念は、レース展開の助けとか、そういうようなのも味方して、本当に鮮やかに勝ってくれたんですけれどもね。

:北九州記念は外から鮮やかに差し切りましたもんね。

安田 :ええ。この馬、暑い夏の時期が状態良いんですよ。寒くなってくると、悪くはならないですけど夏場ほど意気盛んじゃなくて。夏の暑い時期に活性化するなと思っています。

:夏が好きなんですね。

安田 :好きですね。大好きです。

:先生からご覧になって、この馬の良さはどういうところですか?

安田 :そうですね、割と乗りやすい馬だと思うんですよ。ある程度行かせれば行きますし、後方待機でも効くし、オールマイティーというところがこの馬のセールスポイントだと思いますね。ただ、カレンチャンやダッシャーゴーゴーと比べるとちょっと。一抹の不安もあるかなという感じですが、何とかGIの晴れ舞台で走らせてやりたい気持ちは持っています。

:GIのスプリンターズSに3頭出し。限られた枠の中ですから、すごいですよね。

安田 :やっぱり嬉しいですし、何たって勝つチャンスが3つありますからね。カレンチャンにしろダッシャーゴーゴーにしろ、日本馬の中では人気すると思うんですよ。だからレースは本当にドキドキしますけど、がんばって欲しいなと思います。

:ちなみにダッシャーゴーゴーは去年、スプリンターズSの後は香港を視野にというお話がありましたが、今年はいかがですか?

安田 :もし招待が来たら行きたいですね。

:先生の中で、海外のレースというのはひとつの目標に?

安田 :今年、トランセンドでドバイに行ったのが初めてで(ドバイワールドC、11/3/26、UAEダ2000m、2着)。最初は「海外遠征は大変だ」っていう思いもあったんです。しかも、向こうに行って、オッズを見たら1番人気ないでしょう。それがまあ、一瞬、勝つかと思いましてね。

:本当に、トランセンドが勝ったかと思いました。

安田 :ねえ。直線でバーッと差し返して来た時は「よっしゃー」と思いました。まあ、良い思い出です。オーナーも「来年また来るぞ」って。また、ドバイの馬場というのは、ダッシャーゴーゴーにもすごく合っているんですよ。

:ダッシャーゴーゴーにもですか。

安田 :ええ。だから、ダッシャーゴーゴーは香港も行きたいけど、ドバイにも行きたいなと。

:じゃあ来年のドバイは2頭かもしれない。

安田 :ええ、行きたいですね。角居(勝彦)さんは海外によく行っていらっしゃいますもんね。そういうの、真似できることはしたいですね。海外遠征の主流派になって、もう「海外、海外」って言いますよ(笑)。

:「今年も行くよ」って(笑)。こうやって楽しみな馬の名前がたくさん挙がってくるというのは、安田厩舎が好調の証ですよね。今年、重賞14戦7勝(9月23日現在)。しかも、出走機会中4連勝ということもありました。

安田 :ちょっと出来すぎです。オーナーに対してやらせていただいていて、その結果だと思いますし、やっぱりスタッフのがんばりも大きいです。スタッフにはすごく恵まれていますね。

:スタッフさんの中にも「よしっ、やるぞ」という雰囲気がすごくありますか?

安田 :ありますね。これだけ良い勝ち星が続いて、仕事に対して本当にやる気になって、すごく良い方向に向いていると思います。

:平場1つ勝つことも大切だと思うんですけど、中でも重賞、GIが持つ意味は大きいですか?

安田 :やっぱりGIって、胸がグーッと熱くなりますね。未勝利戦でもすごく嬉しいんですけど、やっぱりGIになったら胸がすごく熱くなりますね。

:これまでトランセンドでGIを2勝されて。

安田 :トランセンドで勝った時はもう、泣いちゃいました。すっごく嬉しかったですね。そして「次また獲りたい」「よし、今年も獲るぞ」という意欲は、絶対良いと思うんですね。何事にもチャレンジするというのは、馬にとっても自分にとっても励みになります。あらゆる記録に挑戦するというのは、すごく良いことですね。

:競馬の世界に長く身を置かれている先生にとって、曲げたくない信念というものはありますか?

安田 :曲げたくない信念ですか? 馬本位に考えることですね。何て言ったらいいのかな。そうですね、馬あっての自分だということは、十分わきまえています。

:はい。

安田 :ただ、それをどういう言葉で表現したらいいのか…ちょっと分からないんですけれども。自分自身は馬に本当に感謝しています。安田厩舎の馬達が僕の親でもあり、僕を養ってくれているなと思いますね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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