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太宰啓介騎手インタビュー中編

  • 2011年10月12日(水) 12時00分
3歳時からインパクトのあるレースぶり見せたフミノイマージン。5歳になった今年、ようやく本格化し、府中牝馬SからGIのエリザベス女王杯を目指します。鞍上の太宰啓介騎手の意気込みもひと際強い…はずが!?

◆人一倍あるつもり

:4月の福島牝馬Sに続いて6月のマーメイドSもこの馬で勝利して、一気に重賞2勝。太宰騎手ご自身にとって重賞は今までなかなか獲れなかったタイトルで、悔しい思いもされたと思うんですけれども?

太宰 :僕ね、2〜3着が16回あったらしいんですよ。特に覚えているのが、エイシンサンルイスという馬で、重賞を勝てそうでずっと勝てなくて(00年プロキオンS・2着、根岸S・2着、シリウスS・2着)。デビュー3年目でしたね。今考えたら、上手く乗れていなかったですけどね。

:「今だったら」って。

太宰 :って思うんですけど、それを言ったらダメですからね。

:そうですよね。でも、2〜3着が16回って、その数の分だけ悔しさがあったんですよね。

太宰 :そうですね。下の子にも、どんどん重賞を勝つ子はいましたからね。焦りもありましたし、悩みもしましたよね、やっぱり。周りからも言われましたしね。「本当に勝てないな」って。

:そんなことを。「うるさいわっ!!」って思っちゃいます。

太宰 :ふふ(笑)。

:でも、そういう時って「何か足りないものがあるのかな」って自問自答してしまいませんか?

太宰 :そうですね。最初は「何でこんなに運がないのかな」と思ったんですけど、やっぱり勝っている人に比べたら、努力も足らなかったんでしょうしね。

:最後は運が必要だって聞きますし、何か流れもあるんでしょうけど。その中でフミノイマージンに出会って、一気に勢いがついたのかなと思うんですが、改めてこの馬の「強いな」と感じたところはどこですか?

太宰 :やっぱり、溜めたら溜めた分だけすごくいい脚を使いますよね。その脚は、いいものを持っているなと思います。

:追い切りには普段から乗られているんですか?

太宰 :乗っているんですけど、今はまだ北海道にいるんですよ(取材時)。だから、前走の後はまだ乗っていませんが、順調だと聞いています。

:気性の荒さは変わらずなんですかね?

太宰 :どうでしょうね。でも、厩務員さんには大丈夫なんですよ。違う人が触ると飛びかかってくるんですよね。

:あはは(笑)。心を許す人だけなんですね。

太宰 :そう。だから、まだ許してくれていないんです(笑)。

:厩務員さんからしたらすごく可愛いでしょうね。フミノイマージンとご自分って、どんなコンビですか?

太宰 :どんなコンビだろう? やっと僕に重賞を獲らせてくれた、本当に、一生記憶に残る馬です。ずっと乗せてくださった本田(優)先生には、本当に感謝しています。

:元々騎乗されるようになったのは、何かゆかりがあったんですか?

太宰 :太宰(義人)厩舎が解散した時に、本田先生と吉田先生に引き継ぎで、太宰厩舎の馬を預かってもらったんです。その時に「手伝わせて下さい」ってお願いして、開業からずっと乗せていただいているんです。

:本田先生がお父様の厩舎を引き継いだというところがあって、仲良くされているんですか。

太宰 :まあ、本田先生はジョッキーの先輩でもありますから、仲良くというのとは違いますけど、でもすごく良くしていただいていますね。

:元ジョッキーでいらっしゃるからこその厳しさもありますか?

太宰 :レースでは指示はあまり出さなくて、失敗してガーッと怒られたということもまだないんですけど…まあ、オーラが怖いですよね。

:先輩ですし、無言のプレッシャーが。

太宰 :そうそう。それが一番怖いです。

:そうですよね。この秋は、府中牝馬Sからエリザベス女王杯に向かうということですが、まずは府中牝馬Sに向けて、今の手応えはいかがですか?

太宰 :GIIになって一気にメンバーが強くなりますけど、ここでいい勝負をすれば、本当、エリザベス女王杯が楽しみになりますね。

:この夏に金鯱賞(11/5/28、京都芝2000m、6着)でルーラーシップ、キャプテントゥーレ、アーネストリーなど一線級相手に戦ったのは大きかったのかなと思うんですけど?

太宰 :そうですね。メンバーも強かったですし、馬場も田んぼみたいな不良馬場で、その中で最後までがんばって伸びて6着ですしね。

:しかも、結構前が残っていたレースで。

太宰 :後ろから来た馬は少なかったですからね。あのレースでまた自信になりましたし、金鯱賞の後は、厳しい競馬だったのにダメージもすぐ取れたんですよね。

:それで、その後のマーメイドSで重賞2勝目ですから、やっぱり強くなったんですね。エリザベス女王杯は、オークス以来のGI出走になりますが、馬も緊張しますか? どしっとするタイプですか?

太宰 :うーん、競馬に行ったら結構どしっとしていますね。その辺は大丈夫だと思います。

:本田先生にとってエリザベス女王杯は、カワカミプリンセスでのことがありますけど(※)、その思いもやっぱりあるんでしょうか?
※06年のエリザベス女王杯。当時カワカミプリンセスはオークス、秋華賞含め5戦無敗で挑み、1位入線も降着となった。

太宰 :それはどうでしょうかね。僕には分からないですが…あるのかもしれませんよね。

:どこかに込めていらっしゃるのかもしれないですね。現時点で、太宰騎手の期待度はいかがですか?

太宰 :期待は大きいです。うん。楽しみにしていますね。

:そうなんですね。あんまりこう、「よっしゃー」というタイプではないですか? 太宰騎手ご自身?

太宰 :ああ。あんまり表に出ないと思います。出しているつもりでも出ないですね。競馬学校の時もよく、「お前、なんでそんなにやる気がないんだ」って言われていたんです。本当は、人一倍あるつもりなんですけどね(苦笑)。

:確かに冷静に見えますね。緊張はされますか?

太宰 :緊張はしますよ。でも、それもあんまり出ないですかね。普段から大人しいので、しゃべってもしゃべらなくても、たぶん変わらないのかもしれないです。飲んだらうるさいんですけどね(笑)。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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