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阪神JF、ノーザンF5連覇なるか?

  • 2011年12月09日(金) 18時00分
 今週行われるGI阪神JFだが、ある記録が更新され続けていることをご存じだろうか?

 それはノーザンファーム生産馬による4連覇。07年はトールポピー、08年はブエナビスタ、09年はアパパネ、10年はレーヴディソールと、このレースだけでなく、次の年の牝馬クラシック戦線を沸かすスターホースが続々誕生している出世レースでもあるが、今年の阪神JFでもノーザンファームが生産した2頭の重賞ウイナーが注目を集めている。

 GIII小倉2歳Sを優勝したエピセアローム、そしてGIIIファンタジーSを制したアイムユアーズ。この2頭に共通しているのは、ノーザンファーム生産馬ということだけでなく、育成先も同じということ。

 実は重賞馬2頭を育成したノーザンファーム早来牧場の日下厩舎は、08年の勝ち馬ブエナビスタ、そして10年の勝ち馬レーヴディソールを育てた、いわば「阪神JF優勝馬製造厩舎」でもあり、07年の阪神JFの2着馬レーヴダムールも育成と、とにかくこのレースとの相性がいい。

 以前、日下厩舎長から、「育成馬には、まず阪神JFの優勝を目標としています」との言葉を聞いたことがある。これは自分たちが、馬に対して施してきた成果が結果として如実に現れるのが、2歳戦であることだけでなく、近年の結果にも表れているように、阪神JFの勝ち馬が、3歳を迎えても優れた成績を残していることも関係している。

 早熟とも置き換えられる2歳戦の活躍馬だが、見方を変えれば、競走馬としての絶対能力の高さで勝利したとも言える。阪神JFと同条件の桜花賞だけでなく、その後のオークスでの距離延長を易々とこなしたり、秋華賞では更なる成長力を遂げたレースを見せるのも、2歳時に示した能力が更に進化したとすれば納得の行くところでもある。

 この重賞馬2頭について日下厩舎長は、「エピセアロームは1200Mの重賞を勝っていますが、元々1600Mでも戦ってきたように距離は問題無いはず。むしろアイムユアーズは、マイルから更に距離が伸びても対応できる乗りやすさもあるので、阪神JFや桜花賞だけでなく、オークスでも楽しませてくれそうです」と将来を嘱望する。

 しかし、同じ日下厩舎の育成馬で、この重賞馬2頭を遙かに凌ぐスケールを持っているのが、ブエナビスタの半妹として、デビュー前から注目を集めたジョワドヴィーヴル。11月12日に京都競馬場で行われたメイクデビューでは、単勝1.3倍という1番人気に見事答える快勝。日下厩舎長曰く、「乗り味の柔らかさはブエナビスタより上で、まだ幼さが残っていることからも、これから更に成長してくるはずです」と日本競馬界屈指の良血馬に期待を寄せる。まだ1勝馬ということで、阪神JFには抽選をパスしなければ出走が叶わないが、もし、18頭のゲートに入れたのなら、半姉ブエナビスタと同じように、初重賞をGI制覇で飾ってしまうのかもしれない。

 来週に行われるGI朝日杯FSの注目馬は、GII京王杯2歳Sの勝ち馬となったレオアクティブをあげたい。こちらは浦河・BTCで育成を営む内田ステーブルの育成馬であり、デビュー前には内田代表からも、「今年の育成馬でも、2歳の早い時期から活躍が見込めそうなのはこの馬」との評価が聞かれていた。完成度の高さは、順調かつ、たゆまぬ育成調教が行われてきたことの証であり、また、これまでの6走で5度に渡ってメンバー中最速の上がりを使っていることからも、瞬発力は2歳牡馬屈指と言える。

 朝日杯FSが行われる中山1600Mの舞台は、芙蓉Sで7着に破れてはいるが、前走、手綱を取った横山典弘騎手からは、「小回りコースでも大丈夫」との言葉も聞かれており、未勝利戦を勝ったときと同じように、最後の直線で突き抜けてくれるはずだ。現時点ではスピードを生かせる条件が合っていると感じられるだけに、朝日杯FSだけでなく、来年のGI・NHKマイルカップの本命馬として今から名前をあげておきたい。

▼筆者:村本浩平
 1972年北海道生まれ。大学在籍時代に「Number ノンフィクション新人賞」を受賞。現在はフリーライターとして活躍。特に馬産地ネタでは欠かせない存在。

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