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POGと新年(須田鷹雄)

  • 2012年01月13日(金) 18時00分
 年が明け、当たりまえの話だが2歳馬は3歳馬に、1歳馬は2歳馬になった。POGファンはこれから本格化する3歳戦に関心が向いているところだろうが、私は早くも「次の赤本」を意識しなくてはならない。

 1歳時にもその世代について見たり考えたりすることはあるが、年が明けるとまず、明け2歳馬をひと通り見直すことにしている。個別の馬をどうこうというのではなく、世代の構成そのものを見るのである。

 使っているソフトで2歳馬を読み込み、まずはざっくりと眺めている。ここで考えるのはさして意味のあることではない。「今年の血統登録番号は平取町の生産馬からか」とか、その程度のことである。ついでに、例えば取引価格の欄を見て「平取の馬(稲原牧場とか、二風谷ファームとか)、値段はそれほどでもないけどセリでけっこう売れたんだな、なんてことを考えたりする。

 次に、もう馬名が入っている馬がいるかどうかを見る。今年でいうと「サトノ」の馬の登録がやたらと早い。例えば、メジロ牧場産でノーザンファームがセレクトセールに上場したディープインパクト×クライウィズジョイ(ノーザン生産馬と比べてもデキは相当良かった)は、サトノノブレスという馬名になったようだ。

 続いて、色々な条件でソートをかけ、再びそれを眺めてあれやこれやと考える。まずは取引価格。世代の高額順に並べてみる。たいていはセレクトセールかセレクションセールであり、現地に行っていたり下見をしているはずなので、当時のことを思い出してみる。さきほどの母クライウィズジョイのように、気になっていた馬にはマークをつけて、赤本取材時に意識するようにしておく。

 このあたりから、内容的にも意味のあるというか、仕事の準備らしい段階になっていく。生産牧場にソートをかけて、特に社台グループの各牧場がどの種牡馬をどのくらい種付けしているか観察する。新種牡馬については配合意図も想像してみる(妄想にしかなっていない場合もあるだろうが)。こうして、世代の勢力図が頭の中に入ってくるわけである。

 さらに時間のあるときは、兄姉をおさらいする。その際に見るのは「一番走った兄姉」ではなく、実は2番目、3番目である。しかも、3番目あたりになると別に重賞級でなくてもいい。「3番目に走った兄姉が準オープン」ということになると、1、2番目はもっと走っている勘定。となると、母はかなりクオリティの高い繁殖牝馬ということになる。

 実はセリでもPOGでも、いわゆるベタ良血(ビワハイジとか)でないのに狙って当てられるというのは「小当たりの後の大当たり」だと私は考えている。だからこそ3番目あたりに注目するのだ。

 ただ、単なる子だくさん=母が高齢ということもあるので、もちろんそのあたりはチェックする。こういった作業がPC上でサクサクできるのはありがたい時代である。

 以上、今回は情報でも戦略でなく私の新年の様子を伝える身辺雑記のようになったが、最後の件は無戦略としても参考になるかもしれない。

 皆さんに幸多きPOGの新年が来ることを心よりお祈り申し上げる次第である。

▼筆者:須田鷹雄
 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「回収率向上大作戦」も担当している。

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