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預託可能頭数変更の話(須田鷹雄)

  • 2012年03月09日(金) 18時00分
 まだ時期的に2歳馬の取材をするタイミングではないのだが、POGとは別の用事で北海道に行き、何か所かの牧場にお邪魔してきた。

 なにしろ取材ではないので個別の馬についての取材はしていないが、世間話の中にも興味深い話は出てくる。例えば社台ファームで聞いたところ、今年の冬は例年よりだいぶ雪が多かったが、その代わり冬の雨というものがなく、雪をどけたらダートコースは即使える状態だったとのこと。豪雪だから調教が遅れるというのではなく、むしろ逆ということになる。それが即ドラフト戦略に関係するというわけではないが、こういった背景を知っておくとPOGもより一層楽しめるというものである。

 他の牧場も含めてそんな世間話をいろいろしているうちに、ふと重要なテーマとして意識しておかねばならないなと思ったのが、厩舎ごとの在籍頭数に関する制限枠だ。

 これまでは馬房の3倍まで籍をつけられたが、2.7倍の経過措置を経て来年には2.5倍になる。20馬房に対し10頭の差だから、これは大きい。特にPOG戦線で注目されるような厩舎の中には影響を大きく受けるところが多くある。

 もともと馬房×3と入厩からレースまでの日数短縮は、「在籍枠」の需給バランスを大きく変える役割を果たしていた。昔は馬主側にも金があったから中央競馬の馬房は需要過多で、それゆえ調教師側の力が強く、馬喰行為や入厩に際して金を取るというようなことまで行われていたわけだ。

 それが劇的に解消された一方で一部厩舎の寡占が起き、その反動として美浦の厩舎潰れまくりというような事態が起きた。それゆえもう一度供給側を絞ろうというのが今回の措置だが、これはこれで危険な面もある。

 というのも、×3が×2.5になるというのは要するに「いい厩舎から馬を追い出す」という行為だからだ。馬主側には空いている厩舎に入ることで入厩待ちが解消されるというメリットがあるが、それが重要ならばこれまででも空いている厩舎に入れていたはずである。厩舎のブランドに酔って他のことを忘れられていた面があるとしたら、今回の措置はそこに水をかけ、馬主の所有意欲を減退させないとも限らない。

 クラブ法人にも影響があるだろう。募集時に予定預託先は重要な付加価値。出資モチベーションに影響する可能性は十分ある。

 それよりなによりまず注目なのは、いままでも満員だったような厩舎がこの事態にどう対処するかだ。今年の2歳馬はフルに影響を受けるわけではないが、かといってまったく影響がないわけではない。

 まず当面影響が表れてくるとしたら、産地馬対検査の受検状況。間もなく締切だが、いままでのように「とりあえず受検」を通るだけさせればいいという風にはならなくなるかもしれない。POG的には「昔のように仕上がり早めの馬を予測する手がかりに戻るのか!?」というのが関心事だが、その先には競馬全体の行く末もかかってくる。まずは今年、そして来年のサンチバは、そういった点でも興味深い。

須田鷹雄+取材班が赤本紹介馬の近況や有力馬の最新情報、取材こぼれ話などを披露します!

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