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種牡馬株の価格動向について

  • 2003年02月10日(月) 15時06分
 そろそろ今年の配合を考えなければならない時期になっているのだがどうにも腰が重いままだ。その理由は、最近の生産地を取り巻く厳しさが一段と顕著になってきていることにある。

 そんな私たちの思いとは無関係に年が明けてからは、定期的に各エージェント会社より、FAXで「ノミネーション情報」が届く。5〜6社が、それぞれ一覧表にした情報を送ってくるのだ。何のことはないFAXなるものは、考えてみると紙は受信者の負担で、何という資源の無駄遣いか、と思ってしまうものの、どこも売り込みに必死なのである。

 現在の「人気どころ」は、アフリート、タイキシャトル、ディアブロ、サクラバクシンオー、ダンスインザダークといった各馬。いずれも(2/5現在)満口になっている。言うまでもなく、種牡馬の人気度は、産駒の競走成績と完全に直結しているため、ちょっと成績が上がると、人気もまた急上昇してしまう。反対に、いくら種付け料が高くても、産駒成績が期待外れだったりすると、価格は暴落し、人気はがた落ちとなる。

 この満口になっている種牡馬の中で健闘していると思うのは、ディアブロという種牡馬だ。個人的にはあまり好きな体型の馬ではないし、背中の長いステイヤー体型なのに自身は典型的なスプリンターだったという個性的な種牡馬だが、とりわけ地方競馬での好成績が人気を集めている理由なのだろう。価格も手頃(受胎確認後30万円)である。

 サンデーサイレンス亡き後は、ブライアンズタイムが現在最高価格の種付け料(1100万円)となり、以下新種牡馬ウォーエンブレム、フレンチデピュティ(前金800万円)などがそれに続く。

 だが、相対的に昨年よりも価格は安くなっている。今年種付けをして来年に誕生した産駒は、その翌年にだいたい販売される。つまり2年後のことだ。その間、大袈裟に言うと日本の競馬が果たしてどうなっているのか、現段階では予測が難しい。とりわけ、中程度以下の価格帯にある生産馬の行き先として一定数の需要が見込まれた地方競馬の動向が何とも厳しくなってきた。そんなことから、主として低価格の種牡馬は、今後、繁殖牝馬を確保することが難しくなって行くはずである。

 一方の高価格種牡馬とて、決して安閑としてはいられない。高価格イコール高人気の図式に変りはないものの、今後は、その種付け料の高さゆえに、「配合したくとも融資を受けられない生産者」が増えるものと予想されるからである。

 そして、今年からは、もう種付けそのものを見合わせる繁殖牝馬もかなり出て来るのではないか、という予測がある。自主的に「生産調整」を実施するのである。生産頭数が減少すれば、馬産地の景気が回復したのは遠い過去の時代の話で、今回は、とてもそんな単純な構図ではなく、どうにも経営が成り立たなくなっている生産牧場の苦しさが背景にある。

 ある調査によれば、サラブレッド1頭の生産原価に占める種付け料の割合は約40%という。だが、実感として、それ以上に感じている生産者は少なくない。現に昨年の市場取引結果を見ても、種付け料を引いたら果していくら残ったのかと同情せざるを得ないような馬が少なからずいたものだ。いずれにせよ、生産地が曲がり角に来ていることだけは間違いない。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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