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日本&世界のパドック事情

  • 2012年04月21日(土) 12時00分
 今週はG1シリーズの“谷間”。べつに毎週のG1レースに合わせて当コラムのテーマを考えているわけではないのですが、何を書こうか、ちょっと悩んでしまいました。

 で、ふと思いついたのが、パドック。競馬場にはなくてはならないもので、しかも、コースやスタンドと同様、1つとして同じものがありません。これはネタになりそうだと思ったわけです。

 パドック(Paddock)のもともとの意味は、「馬小屋の近くにある小さな放牧地」だそうです。日本の競馬場では「次のレースに出走する馬が馬装を整えた後、本馬場に出て行く前に(“顔見せ”のために)周回するところ」がパドック。アメリカでもそういう場所をパドックと呼んでいます。イギリスではパレードリング(Parede Ring)、オーストラリア、ニュージーランド ではマウンティングヤード(Mounting Yard)。ところ変われば呼び方も変わります。

 ほとんどの競馬場のパドックはスタンドをはさんでコースとは反対の側にありますが、オーストラリア、ニュージーランドのマウンティングヤードはスタンドとコースの間に設けられているのがふつうです。

 ということからすると、ドバイのメイダン競馬場はオーストラリア風の造りになっているんですね。数年前までの門別競馬場がこのタイプでした。似て非なるところが笠松。ご存知のように、ホームストレートの内馬場側にパドックがあります。これまで国内、海外あわせて187か所の競馬場を見てきましたが、そんなところにパドックがあるのは笠松だけ。世界でも珍しい競馬場だと思います。

 競馬ファンのすべてが、パドックで馬を見なければ馬券が買えない、というわけではありません。とはいえ、なるべく大勢の方々が馬を見られるような構造になっていたほうがベターでしょう。笠松はその点から見ても優れています。パドックの様子もレースも、スタンドにいれば見られちゃうんですからね。

 そのほかの競馬場ではどうでしょう。今週から開催が始まる東京と京都は、パドックが見やすい競馬場だと思うんですけど。あとは小倉。モノレールの駅から競馬場に入ると、すぐそこにパドックがあります。これも世界的に珍しいスタイル。そして、スタンドからもパドックがとても見やすい造りになっています。福島や、新しくできた中京も同じような構造ですが、小倉のほうがユッタリ感があっていいですね。

 札幌競馬場が、今夏の開催後、スタンドの改修に入ります。もう設計図はできているはずで、今さら注文をつけても間に合わないでしょうが、なるべく多くのファンがパドックの馬の様子を見られる構造にしてほしいものです。スタンドを全面的に建て替えるのなら、いっそのことオーストラリアやニュージーランドのような造りにしちゃってもいいんじゃないでしょうか?

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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