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トレイルブレイザーのライバルは!?北米芝路線の動向と勢力分布

  • 2012年08月01日(水) 12時00分
 11月3日にサンタアニタで行われるG1ブリーダーズCターフ(芝12F)に、トレイルブレイザー(牡5、父ゼンノロブロイ)が参戦の名乗りを挙げた。鼻出血を複数回発症している同馬にとって、鼻出血防止効果があるとされるラシックスを用いての競馬が認可されている北米西海岸への遠征は、正鵠を得た戦略だと思う。

 そこで今回のこのコラムは、今季の北米におけるこの路線の動向と勢力分布を御紹介したい。

 北米では昨年、芝を主な主戦場としながら、エクリプス賞古馬牡馬部門を受賞したアクラメーション(牡6、父アンユージュアルヒート)が今季も現役に留まった。今季も持ち前の先行力は健在で、初戦となった6月9日にハリウッドパークで行われたG1チャーリーウィッティングハムH(芝10F)、続いて7月21日にデルマーのG1エディーリードH(芝9F)を、いずれも逃げ切りで連勝。昨年5月から継続している重賞の連勝を”7”に伸ばし、芝部門では抜きん出た存在となっている。

 距離区分で言えばこの馬の本質は9F〜10Fにあり、この路線ならオールウェザーでも強く、昨年夏にはデルマーのG1パシフィッククラシック(AW10F)も制している。しかし一方で、連勝の起点となったG2ジムマーレイHは芝12F戦で、しかもこのレースは前年に続く連覇であった。従って、BCターフの距離もこなしており、ブリーダーズCには芝10Fというカテゴリーは無いことから、おそらくはこの馬にとって引退戦となるはずのこの秋のブリーダーズCでは、ターフに挑んで来る公算が強いと言われている。

 西海岸の芝10F以上の路線で、既に足かけ3年シーズンにわたってトップ戦線で頑張っているのがバーボンベイ(せん6、父スライゴベイ)だ。4歳春に、G2サンルイオビスポH(芝12F)、G2サンルイレイS(芝12F)、G2サンフアンカピストラーノH(芝14F)と続くサンタアニタ芝シリーズ完全制覇を成し遂げた同馬は、6歳となった今年の春も、G2サンルイレイSとG2サンフアンカピストラーノHに優勝。若い頃は先行していた馬だが、年齢を重ねるごとにズブさが出たてきたか、最近は追い込む競馬を身に付け、今季の2戦はいずれもゴール目前で先行馬を捉えるという、スリリングな競馬で勝利をモノにしている。秋の目標は当然、ホームコースを舞台としたBCターフになるはずだ。

 西海岸におけるこの路線のナンバー3は、イギリスからの移籍馬スリムチェイディ(せん4、父ヴァルロワイヤル)になろうか。今年2月に、移籍後3戦目となったG2サンマルコスS(芝10F)で重賞初制覇。その後、サンルイレイでバーボンベイの頭差2着、チャーリーウィッティングハムHでアクラメーションの1馬身差2着に健闘している。

 そのスリムシェイディが、西海岸では果たせぬG1制覇を狙って、わざわざケンタッキーまで遠征したのが、5月にチャーチルダウンズで行われたG1ターフクラシック(芝9F)だった。ところが、スリムシェイディはここでも2着。勝ったのはリトルマイク(せん5、父スパニッシュステップス)だったが、この馬は8Fが主戦場で、ブリーダーズCに出てくるとしてマイル狙いになると見られている。

 一方、東海岸のこの路線に目を向けると、新興勢力の台頭が目につく。

 まず、7月7日にニュージャージー州のモンマスパークで行われたG1ユナイテッドネイションH(芝11F)を制した、ターボコンプレッサー(牡4、父ヘイローズイメージ)。今年1月までダートを走り、重賞入着経験もあった馬だが、この春から芝路線に転向。芝初戦となった条件戦(芝8.5F)を5.1/2馬身差で制すると、いきなり挑んだ次走のG1ターフクラシックこそ8着と大敗したものの、続くコロニアルターフC(芝9.5F)で芝2勝目を挙げ、勢いに乗って臨んだユナイテッドネイションHで、重賞初制覇をG1で飾る離れ業を演じた。自分で競馬を作れる先行力があるのがセールスポイントだが、BCターフに出てきた場合は、アクラメーションとの兼ね合いが問題になりそうだ。

 更に、7月14日にニューヨーク州のベルモントパークで行われたG1マンノウォーS(芝11F)を制した、ポイントオヴエントリー(牡4、父ダイナフォーマー)。G1アッシュランドSなどG1・2勝馬パインアイランドの半弟という良血馬で、3歳秋から芝路線に特化。今年4月にキーンランドで行われたG2エルクホーンS(芝12F)で重賞初制覇を果たし、ひと息入れて臨んだG1マンノウォーSも制して初めてとなるG1を手中にした馬である。逃げる必要はないものの、この馬も先行タイプで、早めに勝負に出る競馬をする馬だ。

 アメリカのこの路線はこの後、8月18日にニューヨーク州のサラトガでG1スウォードダンサーH(芝12F)、同じ日にイリノイ州のアーリントンパークでG1アーリントンミリオン(芝10F)が組まれている。BCターフに向けた地元の精鋭が多く出走するこの2レースは、日本のファンにとっても見逃せない戦いとなりそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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