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秋山真一郎騎手(2)『ベッラレイアの話はしない!?』

  • 2012年10月15日(月) 12時00分
先日の毎日王冠で強豪・古馬相手に完勝してみせたカレンブラックヒル。この勢いに乗り、天皇賞・秋で2つ目のGIタイトルなるか。今週は、春に制した1つ目のGI・NHKマイルCを振り返ります。秋山騎手にとっては55回目のGI挑戦。1番人気で迎えた負けられない戦いに、どんな思いで臨んだのでしょうか。そしてGI勝利で訪れた意外な変化とは。(10/8公開Part1の続き)


おじゃ馬します!

「GIを獲る」という気合いは?

:1番人気に推されたNHKマイルC、カレンブラックヒルの能力を信頼されて不安な面はなかったということですが、ご自身としてGIを獲るというところで、気合はどうでしたか?

秋山 :そうですね、気合は入りましたし、「勝てへんかったら…」というのもやっぱり考えました。

:強い馬に乗ってチャンスだからこそ獲らなきゃ、という思いもありますよね。レースに対しては、緊張はあまりされなかったですか?

秋山 :いや、緊張はしましたよ。騎手を何年やっていても緊張はしますね。それもレースの格が上がれば上がるほど、やっぱりその緊張は大きくなります。

:そういう時って、どうやってほぐすんですか?

秋山 :いやもう、何をしたって緊張しますから。だから緊張したままです。

:そのままですか。でも、皆さん緊張はされますよね?

秋山 :そうでしょうね。僕が緊張するから、緊張しないというのが分からないんです。僕は絶対に緊張するから、「緊張するものや」と思っていますし、緊張しないようにしようとも思わないです。レースは緊張するもの、その中で自分の仕事ができるようにならないと駄目ですよね。競馬って、1回だけですからね。

:本当に一瞬、何分かで結果が決まってしまいますもんね。でも、NHKマイルCのレースぶりからは、そんなに緊張されていたとは分からなかったです。好スタートを決めてハナを取って、直線を向いてからはどんどんリードを広げての勝利で。

秋山 :いや〜、もう必死でしたし、直線では思いっきりムチ叩いていましたからね。

:ご自身で後からレースをご覧になって、「慌てていた」というコメントをされていますが、それはそういうところですか?

秋山 :はい。あの時は、乗っている方も訳が分からなくなっていたんでしょうね。「早くゴールが来てくれっ!!」って思いましたよ。

おじゃ馬します!

ついにGIジョッキーに

おじゃ馬します!

喜び合う秋山騎手と平田調教師

:そうですよね、東京のあの長い直線ですもんね。やっぱり勝利へ、その一歩一歩に力が入っていきましたか?

秋山 :入りましたね。だから勝利を確信した時は、とにかくホッとしました。

:人気にも応えられたし、これでGIジョッキーにというところもありますもんね。それと平田(修)厩舎としても初のGI勝利でしたが、やっぱり平田厩舎でGIを獲れたということに意味がありましたか?

秋山 :そうですね。本当に開業の時からずっと、随分と乗せてもらっていますからね。先生もホッとされたと思います。勝った時は先生と「よかったね」って言い合いました。平田厩舎の馬で勝てて、本当に良かったです。

:先生をはじめ、スタッフさんも皆さん喜ばれたでしょうね。これまでたくさん言われていると思いますが、やっぱりレース前とかにベッラレイアのオークスを思い出されましたか? あの時と同じ東京でのGIで、同じ1番人気でのレースでしたし。

秋山 :ん〜、僕も先生もそうなんですが、あのオークスの話はそんなにしないんですよね。ベッラレイアの話が出てきたのは、NHKマイルCが終わってからくらいです。

:そうだったんですか。周りは盛り上がっていましたけど、秋山騎手と先生はまたちょっと違ったんですね。

秋山 :そうですね。やっぱり前の話ですし、馬も違いますからね。でも、よくよく考えれば、あの時に悔しい思いをしたからというのはあったと思いますし、思い返せばそこからいろいろつながっているのかなと思いますよね。あの時の経験が生きたというのはあります。

:そのことをレース前にあまり意識されなかったのは、かえって良かったのかもしれないですね。もっともっと考えていたら、もっと重くなっちゃったかもしれない。

秋山 :そうかもしれないですね。無駄な負担重量がどんどんどんどん増えていったかもしれないですね(笑)。

:そうですね(笑)。GIを勝たれた後は取材もたくさんあったと思いますが、今になって落ち着いたという感じですか?

秋山 :そうですね。落ち着きましたし、気が楽になりました。

:それは、ご自身GI55回目の騎乗での勝利というところもありますか? 正直、長かったなと?

おじゃ馬します!

16年目での悲願達成

秋山 :騎手生活16年目で55回ですから、回数自体はそんなに重ねていないと思うんですけど、でも、長かったですよね。勝てるまでに16年ですもんね。

:16年。NHKマイルCの勝利インタビューで、「これからはGIジョッキーの名に恥じないように」とおっしゃっていましたが、あれから5か月経って、何か変化はありましたか? 競馬に対して変わったとか?

秋山 :余裕が出てきましたね、ようやく。何と言うんですかね、レースのその先の余裕というか。落ち着けるようになりました。

:じゃあ、大きい舞台でも前ほど緊張しないとか?

秋山 :そうですね。まあ、あれ以来ビッグレースにはまだそんなに乗っていないんですけど、でも、1回GIを勝ったことによって、前とは違った形で挑めると思います。それでまた違うものが見えてきたらいいですよね。あと、今までGIを勝つ夢を結構見ていたんですけど、それが最近なくなりました。

:そうなんですか!? それだけプレッシャーというか、やっぱり自分の勝ちたいという思いから?

秋山 :たぶん、何かそういうのがあったんでしょうね。それがようやく最近見なくなって、よかったです。結構長い間見ていましたからね。僕は普段夢自体あまり見ないんですけど、それだけはよく見ていたんですよね。

:あんまり夢を見ないんですか?

秋山 :見ないですね。見ても、走っていてどこかから落ちるとか、高いところから落ちるとか、そういうのばっかり。

:それは、、、目覚め悪いですね(笑)。

秋山 :悪いです(笑)。「楽しかったな」「良かったな」という夢は、あまりないですね。

:じゃあ、ある意味それが良い夢だったんですね。GIのプレッシャーから解放された反面、良い夢を見なくなっちゃったのもあるんですね(笑)。(Part3へ続く)

◆次回予告
来週末の天皇賞・秋に挑むカレンブラックヒル。無敗、3歳での制覇なるか、期待が高まります。初めての2000m戦へ適性は。NHKマイルCは逃げての勝利、前走毎日王冠は番手での競馬、ベストポジションをどう考えているのか。主戦ジョッキーとしての思いに迫ります。公開は10/22(月)12時、お見逃しなく。

◆秋山真一郎
1979年2月9日生まれ、滋賀県出身。父は秋山忠一元騎手。1997年に栗東・野村彰彦厩舎からデビュー(現在はフリー)。同期は武幸四郎、勝浦正樹ら。98年にカネトシガバナーで神戸新聞杯を制し重賞初勝利。以降、15年連続重賞勝利更新中。フェアプレー賞(関西)受賞5回。12年2月、JRA通算700勝を達成。同年のNHKマイルCをカレンブラックヒルで制し、初GI制覇を果たした。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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