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現役最強馬フランケルのラストランに注目

  • 2012年10月17日(水) 12時00分
 ブリティッシュ・チャンピオンズ・デイの開催が、今週土曜日(20日)に迫っている。

 メインレースのG1チャンピオンS(芝10F)が現役最強馬フランケル(牡4、父ガリレオ)にとってのラストランとなるという、それだけでも大きな話題に包まれているのが、今年のチャンピオンズ・デイだ。当初は予定になかったエリザベス女王の御臨席が急遽決まるなど、かつてないほど期待と注目を集めた中での開催となる5つの重賞競走を、レースナンバー順に展望していきたい。

 まず、現地1時45分発走のG2ロングディスタンスC(芝16F)。

 大手ブックメーカーのラドブロークスが5.5倍のオッズで1番人気に推しているのが、ゴドルフィンのオピニオンポール(牡6、父ホーリング)だ。昨年のこのレースではフェイムアンドグローリーの2着だった同馬。今春はドバイでG3ドバイゴールドC(芝3200m)に優勝。その後欧州に戻り、サンダウンのG3ヘンリー2世S(芝16F78y)を制した後、前半戦の大目標だったG1アスコットGC(芝20F)では同僚のカラーヴィジョン(セン4、父レインボウクエスト)の2着に敗れたが、その後はここ1本に的を絞ってじっくりと調整されている。

 最大の敵は、格から言うと前年に続く連覇を狙うフェイムアンドグローリー(牡6、父モンジュー)になろうが、圧倒的1番人気を裏切り7着に敗れたアスコットGCに続いて、前走のG1愛セントレジャー(芝14F)でも6着に敗退。近走の成績不振からどこまで立ち直っているかが、カギとなる。

 6月のアスコットGCを制したのち、3連敗中のカラーヴィジョンもまた、どこまで本来の出来に戻っているかがポイントになりそうだ。

 続いて、現地2時20分発走のG2スプリント(芝6F)。

 ラドブロークスの1番人気は、オッズ3.25倍でソサエティロック(牡5、父ロックオブジブラルタル)だ。9月8日にヘイドックで行われたG1スプリントC(芝6F)に優勝。昨年6月のG1ゴールデンジュビリーS(芝6F)以来となるG1制覇を果たした馬だ。

 相手は、昨年のこのレースの2着馬ウィズキッド(牝4、父ウィッパー)になろうか。10月7日にロンシャンで行われたG1アベイユ賞(芝1000m)を勝って、待望のG1制覇を達成。そこから中1週で挑んで来る。

 大勢逆転の可能性があるとすれば、ここまで6戦4勝、2着2回という成績で来ているスレイドパワー(牡3、父ダッチアート)か。まだ準重賞勝ちまでの実績しかないか、底を見せていない楽しみがある若手スプリンターだ。

 続いて、現地2時55分発走のG2フィリーズ&メアズ(芝12F)。

 中心となるのは、ラドブロークスも3.25倍のオッズを掲げて1番人気に推しているグレートヘヴンズ(牝3、父ガリレオ)だろう。デビュー2戦目から4連勝でG1愛オークスに快勝。前走のG1凱旋門賞(芝2400m)では6着と敗れたが、相手関係や、2か月半の休み明けだったことを考えれば良く頑張っており、牝馬同士のここなら再び主役に返り咲くことが期待される。

 同じ3歳世代のワズ(牝3、父ガリレオ)は、G1英オークス(芝12F)制覇以降3連敗を喫しているが、シャレータに2馬身差の3着だった前走のG1ヨークシャーオークス(芝12F)の内容は、決して悪いものではなかった。

 昨年に続く連覇を目指すのが、ダンシングレイン(牝4、父デインヒルダンサー)だ。
昨秋のG1エリザベス女王杯(芝2200m)後に故障を発症し、ここが11か月振りの実戦となるが、いわゆる「鉄砲」の利く馬だけに、侮れない存在だ。

 続いて、現地3時30分発走のG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)。

 ラドブロークスがオッズ1.57倍の大本命に推しているのがエクセレブレーション(牡4、父エクシードアンドエクセル)だ。8月12日にドーヴィルで行われたG1ジャックルマロワ賞(芝1600m)で自身2度目のG1制覇を達成。 昨年の8月以降、フランケル以外には負けたことのない馬だけに、この組み合わせならば圧倒的人気を背負うのも納得だ。

 一発逆転があるとすれば、3月にメイダンでG1ドバイデューティーフリー(芝1800m)を制した時のレースを再現した時のシティスケイプ(牡6、父セルカーク)か。

 7月にドーヴィルのG1ロスチャイルド賞(芝1600m)を制して自身2度目のG1制覇を果たして以降も、G1ジャックルマロワ賞3着、前走G1サンチャリオットS(芝8F)2着と堅実な走りを見せているのが、社台ファーム吉田照哉氏所有のイルーシヴケイトだ。

 このレースではもう1頭、女王陛下の所有馬カールトンハウス(牡4、父ストリートクライ)の走りにも注目したい。英国チャンピンズデーにおける女王所有馬のG1制覇が実現すれば、さまざまな行事が重なったダイヤモンドジュビリー・イヤーを、最高の形で締めくくることになる。

 そして、全世界の競馬ファンが固唾を飲んでその瞬間を見守る中、現地4時5分に発走の時を迎えるのがG1チャンピオンS(芝10F)だ。

 ラドブロークスが1.14倍のオッズを掲げているフランケル(牡4、父ガリレオ)を御紹介するのに、もはや多くの言葉は不要だろう。史上最強と言われるこの馬の最後のパフォーマンスを、しっかりとこの目に焼きつけたいと思う。そしてかなうものなら、1986年の凱旋門賞でダンシングブレーヴがマークした141を超えるオフィシャル・レーティングを獲得し、名実ともに歴代最強の称号を得てほしいものである。

 故障で4か月半にわたって戦列を離れていたにも関わらず、10月6日にロンシャンで行われたG2ドラール賞(芝1950m)を9馬身差で制したのが、ワールド・サラブレッド・ランキングでレイティング130を得て第2位に付けているシリュスドゼーグル(セン6、父イーヴントップ)だ。

 凱旋門賞を熱発で回避した、ワルード・サラブレッド・ランキング第4位(レイティング126)のナサニエル(牡4、父ガリレオ)も、元気な姿を見せてくれることになっている。

 競馬ファンなら絶対に見逃すことの出来ない1日に、皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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