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江田照男騎手(4)『荒れるコースと、荒れにくいコース』

  • 2012年11月26日(月) 12時00分
江田照男騎手インタビュー最終回の今回は、「穴男」の核心に迫ります。どんなコース、どんな条件なら、江田騎手の“買い”レースなのか。「穴男」が最も力を発揮する条件を、江田騎手自らが伝授! 馬券ファン必見の情報です。(11/19公開Part3の続き)

おじゃ馬します!

江田騎手は異色のジョッキー!?

赤見 :江田騎手って、ジョッキーの中で異色な感じがするのですが!

江田 :え、なんで?

赤見 :「穴男」ですし(笑)。

江田 :あぁ(笑)。

赤見 :それに、男性の熱烈ファンが多いですよね。

江田 :やっぱり、馬券が絡んでくるからね。だから、そういうふうなお客さんからは、俺が人気馬で負けても、文句を言われることはあんまりないんですよ。(リーディングの)上の方の人って、人気馬に乗って勝つのが当たり前というか、ある意味それが使命みたいな感じでしょ。だから、それで勝たないとヤジられますからね。でも俺はそんなに人気馬に乗らないし、それで負けてもそこまで文句は言われない。もちろん、人気馬で勝って文句を言われることはないですしね(笑)。

赤見 :はい(笑)。それに人気薄だと、「もってきてくれてありがとう!」になりますもんね。

江田 :そうだよね。そういう穴党的な人からすると、「何かやってくれるんじゃないかな」という気持ちで、付け足しで俺の馬券を買ってくれるんだと思うんだけどさ。押さえに買っておいて、それで本当に馬券にからめば、配当が大きくなるからってね。でも、そういうふうなところでも、少しでも馬券の売り上げに貢献しないとね。

赤見 :そこも意識されているんですね。

江田 :うん。まあ、「買っておけばよかったよ」とか「買わないと来るんだよ」っていうのは、よく言われることなので(笑)。まあ、それでその後に何か言われるっていうわけじゃないんだけどさ。でも、お客さんがそういうレッテルを張って見ているのであれば、それは自分の中で折り合っていくしかないのでね。

赤見 :江田騎手が一番大切にされている、ジョッキーとしてのポリシーは何ですか? これだけ穴馬で目立つと、「何かやってやろう!」という気持ちが他の人より強いのかなって、勝手に思っちゃうんですけど?

江田 :いや。そんなことはないと思いますよ。

赤見 :軽く否定されました(笑)。

江田 :あはは(笑)。だって、みんなそういう気持ちで乗ってると思いますからね。まあ、それがうまくいくかいかないか、だろうけど。

赤見 :そこは、何が違うんですかね? うまくいくのと、いかないのとでは?

江田 :いや、わからないです。でもね、そんなの、うまくいかない事が大半だって。

赤見 :そうですか。でも、これだけ大きなレースを穴馬で勝たれているし。だって、大きなレースほど、そこまで結果が荒れないじゃないですか。そういう中で波乱を巻き起こしている江田騎手は、何を持ってるんですか?

おじゃ馬します!

「どうしてか、俺も聞きたいよ」

江田 :何を持ってるのかね〜。わからない。どうしてって、それ、俺も聞きたいよ! だって、もし自分が馬券を買える立場だとしても、多分当たってないと思うわ。間違いなく自分では買わないと思います。ネコパンチの日経賞とかも、絶対買いません(笑)。

赤見 :えぇ! じゃあ、この“3大”レースは?

江田 :“3大”レースは、間違いなく買いません(笑)。だから自分でもわからない。そのくらい、馬の力に任せてるんですよね。そうやって乗っての結果が、たまたまうまくいったということであって。だって、お客さんからするとさ、馬券ってそれまでの成績から検討するじゃないですか。俺が馬券を買える立場だとして、そうやって見たらさ、多分買えないって。そういう感じだと思いますよ、本当に。

赤見 :なるほど〜。

江田 :そういうこと。もちろんレースはね、騎乗するチャンスをもらえたということは、18頭立てだったら18分の1の確率で勝てるわけじゃないですか。だから、「どうやったら勝てるのかな」「どうやったらいい着順に来れるのかな」という気持ちでは乗りますけね。ただやっぱりね、そんなにうまくいくもんじゃないのが競馬であって。本当に、なかなかうまくいかないですよ。

赤見 :じゃあ、穴党の方のために、江田騎手の一番得意な舞台を教えていただいてもいいですか。「これだったら人気薄でも押さえておこうかな」みたいな。“3大”レースは、全部中山のレースですね?

江田 :あぁ、そうだね。中山コースと東京コースの違いというのは、東京ってもちろん直線が長いので、どうしても本当に力のある馬が勝つような状況になるじゃないですか。それは、馬場が良馬場だとか、普通の状態だったらですよ。そうだったら、直線向いて瞬発力のある馬が勝つ形になるので、たまたま展開がハマってっていうのは、東京の場合は数が少ないんですね。やっぱり東京は、絶対的な能力がある程度必要です。

赤見 :はい。

江田 :中山の場合は直線が短いし、長い距離だとコーナーも多いので、例えば人気馬がそのコーナーごとに不利を受けたとか、スローペースになってどうにも動けなくなっちゃったという場合に、人気薄で勝つ率が、ちょっとだけ高くなりますよね。だから中山というのは、そういうのが勝つ要素なんです。

赤見 :そういう理由で言うと、中山で、ちょっと距離があるレースが、より狙いどころですかね? たしかに、江田騎手の重賞勝利28勝中、18勝が1800m以上。やっぱり、ちょっと距離があってコーナーがあって、という方がいいんですね。

江田 :うん。コーナーがあった方が、いろいろな意味で穴が出る可能性が高いですよね。

赤見 :なるほど。これから狙っていきたいと思います! 最後に今後の目標を教えてください。

江田 :1年でも長く乗ること。はい、とにかくそれだけです。だってほら、もう40歳を過ぎてくるとさ。

赤見 :でも、腰の痛みがひどかったところから、それを克服されて、そこからこれだけ長く騎手を続けてこられたというのが…。もちろん、その時はすごく大変だったでしょうけど、そこを乗り越えられたというのが。

江田 :うん、それは大きいですよ。だからやっぱり、体は鍛えないと駄目です。長く騎手を続けるために、体のケアは大事ですね。(了)

◆江田照男
1972年2月8日生まれ、福島県出身。同期は村山明(現調教師)など。90年に美浦・田子冬樹厩舎からデビュー。同年の新潟記念を、14番人気のサファリオリーブで制し重賞初勝利。重賞騎乗2戦目での勝利は当時の最速記録。また、同年は関東新人騎手賞を受賞。翌91年にはプレクラスニーで天皇賞・秋を制覇。1位入線のメジロマックイーンの降着があったが、デビュー2年目でのGI勝利という快挙を達成した。その後、00年のスプリンターズSを16番人気のダイタクヤマトで逃げ切るなど、大舞台で多くの波乱を演出。「穴男」の異名でファンに親しまれている。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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