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新種牡馬フランケルの綺羅星のような花嫁候補たち

  • 2012年11月28日(水) 12時00分
 芝の平地競走がシーズンオフに突入したイギリスで、目下最大の注目は、来週に開催が迫ったタタソールズ・ディセンバーセール繁殖牝馬セッションにおけるマーケットの動きと、その後に続く繁殖シーズンに向けた新種牡馬たちの動向だ。

 牝馬三冠に加えてジャパンCまで制したジェンティルドンナの母ドナブリーニは、06年のタタソールズ・ディセンバーセールで購買されて日本に導入された馬だ。出身牝馬が産んだ仔による、セール直前というタイミングでのジャパンC優勝だったこともあり、欧米のメディアに露出しているディセンバーセールへ向けた広告には、日本語をあしらったデザインのものが少なからず見受けられる。

 そして、13年の繁殖シーズンにおける新種牡馬と言えば、最大の注目は、史上最強馬の呼び声も掛かる中でのスタッドインとなったフランケル(父ガリレオ)だ。

 11月9日、3シーズンを過ごしたヘンリー・セシル師の厩舎から、新たな棲家となるニューマーケット近郊のバンステッドマナースタッドに移動したフランケル。初年度の種付け料は12万5千ポンド(約1700万円)で、2月15日からスタートする13年の繁殖シーズンでは130頭に種付けを行う予定と発表されたが、交配を予定されている牝馬のラインナップは眩いばかりの絢爛豪華さである。

 すでに日本でも報じられているところでは、牝馬として史上初の凱旋門賞&キングジョージのダブル制覇を果たしたデインドリーム(父ロミタス)が、来春から繁殖入りしてフランケルとの交配を予定している。現役時代の同馬の権利の50%を有し、引退後は100%保持することになっている社台ファームの吉田照哉氏は、すでに何度かフランケルを視察されており、その馬体を「全身お尻!」と表現されている。

 世界的に見てもトップクラスの生産者に、手持ちの中でも最高クラス牝馬を付けたいと思わせるのが、フランケルなのだ。日本の競馬ファンが良く知る名牝で、フランケルとの交配を検討している馬は他にも居り、今後の正式発表を待ちたいと思う。

 日本だけでなく、フランケルの種を求める牝馬は、世界中から参集する予定だ。

 例えば、11月2日にサンタアニタで行われたG1BCフィリー&メアターフの勝ち馬ザゴラ(父グリーンチューン)。レース3日後にケンタッキーで開催されたファシグティプトン・ノヴェンバーセルに上場され、250万ドルでカタール人馬主に購買された同馬も、今後はヨーロッパに送られ来春はフランケルを交配される予定だ。

 同じアメリカからは、11月23日にチャーチルダウンズで行われたG1クラークHを制し、3歳時のプリークネスS、今年春のメトロポリタンHに続く3度目のG1制覇を果たしたシャックルフォード(牡4、父フォレストリー)の母オーツィー(父アンブライドルド)も、フランケルの配合牝馬リストに名を連ねる1頭である。

 シャックルフォードだけでなく、11月22日にチャーチルダウンズで行われたG2フォールシティHを制したアフリーティングレディ(牝5、父アフリートアレックス)、07年のG1アラバマS勝ち馬レディージョアン(父オリエンテイト、現在は日本で供用中)、重賞3勝馬バフダリア(父ロイヤルアカデミー)らを産んでいる北米屈指の名繁殖牝馬で、最優秀繁殖牝馬にも選出されているオーツィー。ケンタッキーで供用されている同馬だが、年内に渡英すべく、すでに出国検疫に入っている。

 欧州圏からは、連覇を果たしたG1愛プリティポリーSやG1香港Cなど5つのG1を制したアレグザンダーゴールドラン(父ゴールドアウェイ)が、フランケルとの交配を予定している。

 そして、フランケルのオーナーブリーダーで、世界屈指の生産組織である、カリッド・アブドューラ殿下のジャドモントファームも、言うまでもなく所有する最上級の牝馬を差し向けて、フランケルをサポートする態勢を整えている。

 例えば、G1BCフィリー&メアターフをはじめ6つのG1を制したミッデイ(父オアシスドリーム)や、G1メイトロンS、G1ビヴァリーSを含めて4重賞を制したヒートヘイズ(父グリーンデザート)といった、現役時代華々しい活躍をした牝馬たちがスタンバイしている他、前出のミッデイの母ミッドサマー(父キングマンボ)、欧米を股にかけて活躍し4つのG1を制したプロヴァイゾーや、ロイヤルアスコットのG1プリンスオヴウェールズSを含めて4重賞を制したバイワードらの母ビンチ(父ウッドマン)、G1クリテリムドサンクルー勝ち馬パッセイジオフタイムや、G1ファルマスS勝ち馬タイムピースらの母クレプシドラ(父サドラーズウェルズ)ら、母としてすでに確固たる実績を築いている牝馬たちが、フランケルとの交配を予定している。

 馬産界の次世代を担う存在として、09年の世界チャンピオン・シーザスターズを上回る期待を担っての種牡馬入りとなるフランケル。どんな子供を出すか、初年度産駒がデビューする2016年が、今から待ち遠しくてならない。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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