スマートフォン版へ

京都牝馬Sで始動!レディアルバローザと笹田和秀調教師

  • 2013年01月15日(火) 18時00分
 2013年初のツネカツメッセージです。今年は年男なので、できるだけ多く現場の生の声をお届けしたいと思っています。よろしくお願いします。

 さて今週は、中山牝馬Sの3連覇を最大目標にローテーションを組んで、まずは京都牝馬Sから始動するレディアルバローザ・牝6歳を送り出す、笹田厩舎に注目です。

笹田和秀調教師

笹田和秀調教師

レディアルバローザ

レディアルバローザ

常石 :中山牝馬Sを2連覇した時のアルバローザは、逃げで強い脚を見せてくれましたね。

笹田 :スタートがよかったら前に行こうと話していたが、あとは鞍上の判断に任せていましたよ。馬場のいいところを選んで上手く走ったな。

常石 :ホエールキャプチャが外から並びかけてきた時はちょっとハラハラしましたが?

笹田 :馬もユーイチも動じることなく自分のペースでよく踏ん張ったと思う。ユーイチの好判断な勝負勘にアルバローザがよく応えたよな。名コンビだね。今度の京都牝馬Sもユーイチの手綱です。

常石 :ユーイチって牝馬に強い印象があるんですが。

笹田 :優しいので扱いが上手いのかな?

常石 :羨ましいですね(笑)。ここを目標に秋はゆっくり休ませ、京都牝馬Sから始動ですが、動きはどうですか?

笹田 :年末から年明けもいい動きをしている。今は500キロくらいあるが、中山牝馬Sには480キロでベストに持っていく予定。前走ターコイズSからの2走目で、ゆっくり休ませたので、気持ちも馬体もリラックスした感じで落ち着いてきましたね。

福田調教助手:1週前追い切りは息入れもよく、馬体も柔らかいのでスムーズな動きでした。ONとOFFのスイッチがはっきりしている。素直で落ち着いてきたので、扱いやすくなってきた。だんだん暖かくなってくると筋肉がほぐれ調子がいいので、楽しみも大きくなってきますよ。同世代のアパパネもカレンチャンも引退で、アルバローザには意地を見せて欲しいです。万全の思いをこめて仕上げますので、応援してくださいね。

常石 :ハイ応援します。この馬は、(最初の中山牝馬Sは)東日本大震災の影響で競馬場が(阪神に)変更になって勝ち、2勝目はちょうど震災のあった1年後の日に連覇したでしょう。なんだか強い運を感じますね。3連覇を達成し、東北の皆さんにも強運のパワーを送ってほしいですね。

福田調教助手:ありがとうございます。頑張ります。

名伯楽・伊藤雄二元調教師

名伯楽・伊藤雄二元調教師

常石 :笹田先生は伊藤雄二先生の後を引き継ぐ思いで調教師を目指されたとお聞きしましたが?

笹田 :うちの嫁は伊藤先生のお嬢さんだし、初の女性調教助手だったんですよ(照笑)。だから引き継ぎたいと思いましたね。

常石 :そうだったんですか。雄二先生や奥様からのアドバイスはありますか?

笹田 :特に何も言いませんね。じっと見てくれています。これがちょっと恐いんですがね(苦笑)。

伊藤雄二厩舎には、良い馬がいっぱいいたからね。ダービーを勝ったウイニングチケット、ファインモーション、それにエアグルーヴやな。

エアグルーヴは3歳から、4、5、6歳までよく走った。掲示板をはずしたのは秋華賞のたった1回だけやった。トニービンの仔特有の気の悪さで厩務員を困らせていましたが、成長してくると落ち着き、鞍上の思いのまま自由に動ける抜群のセンスもあり、末脚も鋭さがあった。すべてを持った馬でしたね。加速する瞬間の違い、手足の力の入り方がすごかった。この馬たちの背中を思い出すと、今でもぞくぞくするくらいよく走ってくれたね。

この時代は良い馬がいっぱいいたね。ライバルのビワハイジもすごかったよ。オークスや天皇賞など距離も1200mから2500mの長距離も走っているからタフだね。だから調教師は良い仕事だと思うんですよ。馬の持っている能力や可能性を引き出す楽しみがあるんですよね。

でも、伊藤先生の1100勝は前代未聞ですよ。これからの時代では達成できない記録です。豊君の3500勝もすごい記録だと思う。

常石 :気の遠くなりそうな記録ですね。エアグルーヴといえば豊さん。ウイニングチケットといえば柴田政人騎手を思い出します。

実はここへ来る前に雄二先生にお会いして、笹田先生にメッセージありますか? とお聞きしたんですよ。「んー、笹田流で一年一年積み上げてきているので、何も言うことない。応援しています。僕はもう隠居ですね。」とおっしゃっていました。大先輩に見守ってもらうのは心強いですね。

笹田 :その思いに応えるために調教師を目指し、すごい勉強しました。大学受験の時あれぐらい勉強してたら東大でもいけたんちゃうかな? もともと乗馬もしてなかったので苦しかったですね。

常石 :この世界に入るきっかけはなんだったんですか?

笹田 :父が福山競馬場の馬主だったんですがあ、まり興味もなく、高校時代はサッカーをしていました。これでも高校選抜に選ばれたんですよ。父と一緒に競馬場にはよくいってましたね。大学の時、親戚で厩務員さんと結婚した人から、大卒でこの世界に入ってくる人が多くなっていると聞いて興味がわきましたね。やっぱり馬が好きだったんですね。それに馬に乗りたかったんです。まずは調教助手の資格を取って、2008年に調教師免許をとって、一年勉強して2009年に開業しました。

常石 :厩舎の仕事などで笹田流があるんですよね。

笹田 :みんなの作業がスムーズに行くように分担しています。調教が終わると助手は仕事がなくなるので、全馬の飼い葉を作る。厩務員任せにするとどのくらいやったかわからない。馬によって種類が違うが、健康状態や食べた量も把握できる。厩務員は馬の世話に集中でき、スムーズに厩舎作業が合理的おこなえる。経験は古いが、やることは新しいよ(笑)。

牝馬の管理が多いですが、健康に過ごす。辛い苦しい思いを極力しないこと。競馬に使うローテーションも無理させない。調教助手は助手としての仕事をマスターし、100%誰でもが乗れる馬を作る。僕が伊藤厩舎で調教していたときはペースメーカをやっていました。追い切りに乗る騎手が時計を作ることができ、ペースをつかむようになるんですね。

昔、河内先生は騎手時代、5秒刻みにラップを踏んでいたのですごいなと思った。僕もやらねばとまねをしましたね。豊かも競馬でペースをつかむことができるようになったのも、河内先生にいろいろ学んだと思うよ。

常石 :だから豊さんは体内時計がほとんど狂いがないんですね。

こだわりの調教用鞍

こだわりの調教用鞍

スタッフへの配慮、あったい手袋

スタッフへの配慮、あったい手袋

笹田 :イヤー、それ以上に河内先生はどんぴしゃでしょうね。いいことはどんどん取り入れていますよ。

調教用の鞍にもこだわっています。僕が調教師になったときに作ったんですが、岡部元騎手がアメリカからもって帰ってきた鞍なんだけど、前が短い「あふり」っていうんです。膝があたらない。通称笹田型。これって特許取らないといけないな。騎手が追い切りに乗るときもこの鞍を使っています。これはうちだけですよ。騎手が競馬のときは、この鞍を使っていますね。軽いし楽なんですよ。こだわりがすごいんだよ。

常石 :最後にもうひとつこだわりを教えてください。

笹田 :自然に逆らわず、気持ち良くプレッシャーがない良い環境を作る。作業がしやすいように、冬にはあったい手袋を用意すると良い調教や仕事がしやすいでしょう。こうして自由に使えることが、すべてのものを大事にすることにつながるんですよ。取材してもらったから、常石にもあげるわ。

常石 :わあー、ありがとうございます。大事に使います。

笹田 :ミスしても怒らない。ミスした本人が一番よくわかってるので見守る。調教師の顔色ばっかり伺ってるようでは、良い馬が作れないと思う。人が気持ち良く仕事ができると、馬も素直な馬が育ってくれると思う。

常石 :笹田流がいっぱいありましたね。ぼくも取材の仕事に笹田流を取り入れていきたいと思います。ありがとうございました。

 常石勝義ことつねかつでした。[取材:常石勝義/栗東]

◆次回予告
次回は赤見さんが、1月21日(月)に高知競馬場で行われる「全日本新人王争覇戦競走」をリポート。出場ジョッキーの独占インタビューもありの、内容盛りだくさん! 公開は1/22(火)18時、お見逃しなく!

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング