スマートフォン版へ

フランケルなど新種牡馬の種付け料は!?

  • 2013年02月13日(水) 12時00分
 日本の北海道では今週から来週にかけて、各所で種牡馬の展示会が開催される。お披露目の中心になるのは今年新たにスタッドインした新種牡馬たちで、生産者や馬主のみなさんの熱い視線を浴びることになる。

 北半球の各生産国でも、種付けシーズンを迎えて大きな注目を集めているのは、フレッシュマンサイヤーたちだ。

 欧州で今年、と言うよりは、全世界の競馬関係者がかつてないほど高い関心を寄せているのが、英国のバンステッドマナースタッドで種牡馬入りしたフランケル(父ガリレオ)だ。初年度の種付け料125,000ポンド(約1890万円)は、同期のフレッシュマンサイヤーの中では頭抜けて高い金額だが、一方で、その競走能力が公式ハンディキャッパーたちからも「歴代最強」と認定されたことを考えると、むしろ安いとの見方も関係者の間にはある。

 昨年11月28日付けのこのコラムでも一部を御紹介したが、デインドリーム、ウオッカらを含む初年度の交配牝馬リストは、まさに壮観のひと言だ。その一方で現在の欧州では、高い競走能力を発揮した牝馬や、名門ファミリーを背景とした牝馬の相当数が、血統構成上のごく近いところにガリレオ、サドラーズウェルズ、デインヒルを持っており、フランケルが交配出来るトップクラスの牝馬は意外に数が限られている、との指摘もなされている。

 いずれにしても、初仔が誕生する来春、初年度産駒がデビューする2016年夏は、フランケルブームが再燃することは間違いなさそうである。

 13年に欧州で供用される新種牡馬で、フランケルの次ぎに高い種付け料が設定されたのがナサニエル(父ガリレオ)だ。3歳時にG1キングジョージ(芝12F)、4歳時にG1エクリプスS(芝10F7y)を制した同馬は、今季から英国のニューセルスパークスタッドで供用されるが、初年度の種付け料は2万ポンド(約303万円)に設定された。

 昨年デビューしたニューアプローチの初年度産駒が大変良い動きを見せたことで、父の父としての評価も高まったのがガリレオだ。なおかつ、昨年のG1愛オークス(芝12F)勝ち馬グレイトヘヴンズをはじめ、兄弟に重賞勝ち馬が5頭いるという、極めて活気ある牝系を背景に持っていることも、ナサニエルの魅力の1つである。

 これに続くのが、愛国のクールモアスタッドで種牡馬入りしたエクセレブレーション(父エクシードアンドエクセル)だ。3歳時にG1ムーラン賞(芝1600m)、4歳時にG1ジャックルマロワ賞(芝1600m)とG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)を制したトップマイラーの、初年度の種付け料は22,500ユーロ(約286万円)に設定された。勝利を収めた3つのG1以外に、3つのG1を含めて4つの重賞で「フランケルの2着」がある同馬。

 生まれた年が違っていたら、この馬が「歴史的名マイラー」と讃えられていた可能性も充分にあったわけで、その高い競走能力は誰の目にも魅力的である。さらにその血統構成から、配合できる牝馬の選択肢が広いことも、エクセレブイレーションの種牡馬としての成功を後押ししそうである。

 種付け料から見た欧州新種牡馬の4番手は、今年の春が北半球における初供用となるシーポイ(父イルーシヴクオリティ)だ。豪州産馬シーポイの、祖国における競走成績は12戦10勝。豪州における2歳チャンピオン決定戦のG1ゴールデンスリッパーS(芝1200m)、3歳春の時点で古馬を撃破して制したG1マニカトS(芝1200m)など、4つのG1を含む7つの重賞を制した同馬は、種付け料1万5千ポンド(約227万円)が設定され、英国のダルハムホールスタッドで供用される。

 ドバイのG1ゴールデンシャヒーン(AW1200m)やニューマーケットのG1ジュライC(芝6F)では本領を発揮出来なかったが、仕上がりが早く抜群のスピードを持っていた馬だけに、欧州でも人気を呼びそうである。

 北米供用の新種牡馬で種付け料が最も高いのは、レーンズエンドファームにて3万5千ドル(約332万円)で供用されるユニオンラッグス(父ディキシーユニオン)だ。2歳時の成績4戦3勝。G1シャンパンS(d8F)を5.1/4馬身差で楽勝して臨んだG1BCジュヴェナイル(d8.5F)で、1番人気に応えられず2着に敗れたのが2歳時唯一の敗戦となったが、終始外を廻らされる競馬での頭差2着だから、内容的には無敗で2歳シーズンを乗り切ったも同然だった。期待されたG1ケンタッキーダービー(d10F)では完敗を喫したものの、G1ベルモントS(d12F)を勝って帳尻を合わせたあたりは、底力がないと出来ない芸当と見てよかろう。

 血統構成にはディキシーランドバンド、ニジンスキー、ハイハットなどが散りばめられており、配合次第では芝で活躍する馬も出るかもしれない。

 ウィンスターファームで種牡馬入りし、種付け料3万ドル(約284万円)が設定されたのがボディマイスター(父エンパイアメーカー)だ。G1ケンタッキーダービー、G1プリークネスS(d9.5F)といずれもアイルハヴアナザーの軍門に下り2着に敗れた馬だが、ケンタッキーダービーに関して言えば、半マイル通過45秒39、6F通過1分9秒80というハイラップを刻んで逃げたのがボディマイスターで、そのレース内容は「12年のケンタッキーダービーは勝ち馬が2頭いた」と称されたほど水準の高いものだった。

 父が、日本流出後に産駒が大ブレークしたエンパイアメーカーという点でも、生産地で重用されることになりそうである。

 ボディマイスターと同じ3万ドル(約284万円)の種付け料が設定されて、ゲインズウェイファームでスタッドインしたのがトゥーオナーアンドサーヴ(父バーナーディーニ)だ。3歳春の三冠を全休している上に、チャンピオン決定戦のG1BCクラシック(d10F)では2年連続で着外に敗れているため、生産者へのアピールという点でインパクトに欠けるきらいはあるが、3歳時にG1シガーマイル(d8F)、4歳時にG1ウッドウォードS(d9F)を制しているのを含め、3シーズンで6つの重賞を制している、正真正銘の強豪だ。人気種牡馬バーナーディーニの後継と言う点でも、人気を集めそうな馬である。

 フレッシュマンサイヤーたちの出世争いは、生産界の次なるトレンドを占う指標ともなるだけに、まずは彼らの、初年度における交配牝馬の数と質に注目したいと思う。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング