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3強対決の夜

  • 2003年07月13日(日) 18時00分
 7月8日「ジャパンダートダービー」。ひとまず“名勝負”といっていいレースになったと思う。個人的にはレース前、妙なドギドキと緊張感があった。わが南関東2冠馬ナイキアディライトに◎がつけられなかったこと。しかしもちろん応援する気持ちは相当に強いこと。ゴールの瞬間、正直なところホッとした。ビッグウルフ、ユートピアが見事な叩き合いを演じ、しかもアディライトがレースを引っ張り、2頭と互角の競馬している。いわく統一グレードのエッセンスが濃厚に詰まった一戦。観衆2万5千、悪天候にせよ物足りないが、こんなレースが続けばたぶんファンも競馬場に戻ってくる。

ジャパンダートダービー(サラ3歳 定量 統一G1 2000m重)

(1)ビッグウルフ    (56・武豊)  2分04秒9
(2)ユートピア     (56・安藤勝) ハナ
(3)ナイキアディライト (56・石崎隆) 1.1/2
(4)ブイロッキー    (56・松永幹) 7
(5)ナイキゲルマン   (56・的場文) 8
……………………………………………………
(7)トワノカチドキ   (56・蛯名)
(9)アヅマデフィート  (56・桑島)
(13)アルファフォーレス (56・横山典)

単410円 馬複290円 馬単810円
3連複290円  3連単1980円

 スタート直後、一瞬滑るようなシーンがあったユートピアだが、元より安藤勝に徹底先行の意思はなく、ナイキアディライトがごく当然のように先手をとった。流れるように1〜2コーナー、そして向正面。千通過61秒9、東京ダービー時よりおよそ2秒も速いラップで軽快に飛ばしていく。プラス3キロ、パドックからゆったり落ち着き、状態そのものも格段によかったのだろう。ユートピアは指定席の2番手、ビッグウルフはその3〜4馬身ほど後ろ、イン5番手を進む。途中トワノカチドキがわずかに動いた程度で、全体には淡々としてしかし緩みのない平均ペース。4コーナーから直線、早々と勝負圏が絞られる。人気3頭が1馬身間隔で内、中、外と並び、後続は大きく離れた。完全な力勝負、切れ勝負。あと100m、ユートピアがアディライトを何とかねじ伏せゴールに向かうが、武豊ビッグウルフが最後の一完歩で捕えきった。2000m2分04秒9。降雨で軽くならず、むしろ粘りつくような大井の馬場。時計的にも胸が張れる。

 ビッグウルフ対ユートピア。いわゆる絶対能力はやはりユートピアで、例えばマイル戦なら10度対戦しておそらく9度勝つだろう。ただ2000mとなると状況はほぼ互角。コース適性、展開が勝負を分ける、そんな感じか。勝ちに行ったユートピア、これを目標に乗ったビッグウルフ。今日は後者に勝利の女神が味方した。「イメージ通りの競馬ができた。それでも簡単には交わせない。ゴールまで必死でした」と武豊騎手。「状態うんぬんではないと思うが、今日はゲート入りを渋ったりして何かリズムが悪かった」と、これは安藤勝己騎手。ともに今後は秋をめざしてひと息入れる。ビッグウルフは盛岡「ダービーグランプリ」を明言した。対してユートピアは芝への選択肢もありそうで、しばらく白紙。あるいは統一Gでの対決は、この一戦が最初で最後かもしれない。この2頭はどうやら戦前のイメージ以上にタイプが違う。

 ナイキアディライトの健闘。石崎隆騎手は「現時点でパワーが違うということ。精いっぱいの競馬だった」といいつつ、しごく満足そうな表情にみえた。しかりと思う。南関東2冠馬ながら、JRAタイトルホルダーに較べいかにも数字の裏付けが甘かった。陣営も鞍上も手探りで送り出し、しかしそのチャレンジ精神が、結果3着にせよ“好勝負”という収穫を得ている。妙な話だが、臆病な陣営ならここを回避し、“ダート無敗神話”にこだわる手もあったろう。互角に戦える感触をつかんだこと。何よりその自信が先につながる。使い詰めできて踏ん張りがきいた、その“基礎体力”が証明された事実も大きい。敗れたにせよ、この一戦に限れば一昨年ブリザードとほぼ互角の評価ができる。

 格言めいたもの、というより自省をこめて今回2つほど思い当たった。1つは、馬は見た目の“馬格”ではなく、レースでの能力を素直に評価すべきこと。ビッグウルフは当日微増してようやく440キロ、それでも自分の体を動かすエネルギーがあればいいわけだから、小柄であること自体は問題ない。馬を走らせるもの−むろん断言はできないが、やはりそれは人間(主に騎乗者)の意を汲む利発さが最も大きいと推測する。もう1つ、これは予想者サイドの話だが、馬の能力とか価値とは、時計より、実際のレースにおいて何に勝ったか、どういう競馬をしたかを重くみるべきということ。ナイキアディライトは、この日、東京ダービーの2分08秒9を一挙に5秒1まで詰めている。いずれにせよ、人も馬もこれでダートチャンピオンロード、進む道がはっきりした。あとは秋へ向け、どうパワーアップしてくるか。大きな期待を持って見守りたい。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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