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『現場の騎手の立場から、主催者に望むこと』大井競馬(4)

  • 2013年08月26日(月) 12時00分
「主催者としての大井競馬」をお届けしてきた今月の「おじゃ馬します!」。最終回の今回は、現場から見た主催者の姿に迫ります。東京都騎手会騎手会長、及び全日本騎手連盟会長を務めている吉井竜一騎手に、騎手の立場から本音を語っていただきました。またラストには、塚田修副管理者から重大発表が!(8/19公開Part3の続き、今週のゲスト:吉井竜一騎手・塚田修副管理者、聞き手:赤見千尋さん)

赤見 :吉井騎手は、大井の騎手会長をされて長いですよね。具体的にどんなことをされているんですか?

おじゃ馬します!

騎手会長を務める吉井竜一騎手

吉井 :29歳でなったので、7年ぐらいですかね。騎手会の中心になるので、何かあったらまず僕の方に話が来ます。それをみんなに伝えて意見を聞いたり、自分で判断したり。

騎手が仕事をしていく上で良い環境を作る、それが一番ですね。いかに馬に乗ることに集中できるような環境にしていけるか、そういうことを常に考えています。例えば一定の生活ができるだけの収入を得られないと、そっちが心配で、騎手本来の仕事に専念できないところがあると思います。そのスタートラインを作って、そこからは競争の世界、という考えですね。

赤見 :しかも、全日本騎手連盟の会長もされているんですもんね。主催者に「こういう改善をしてほしい」と言ったときに、結構動いてくれますか?

吉井 :僕たちから提案するものには、すぐに出来ることと、時間をかけるべきものがあります。それは十分に理解して提案しています。僕たちもできるだけ意見を挙げるようにしていますが、「一緒に検討していきましょう」という回答はいつももらっています。いろいろと話しやすい状況にありますね。

赤見 :大井は、ナイターや3連単の馬券など、今までの日本の競馬になかったものを積極的に採り入れていますよね。

吉井 :そうですね。主催者は本当に努力しているなと感じています。例えば、ナイターに欠かせないイルミネーションやイベントなど、騎乗していて騎手が危険ではないか、などはよく話をします。実際に一緒に現場を見て確認したり、そういうことは騎手会や調教師会も一緒になってやっていますね。

赤見 :開催執務委員長の斉藤さんが(第1回、2回のゲスト)、「みんなで一丸となってやっている」とおっしゃっていましたが、まさにそういうところですね。そういう、騎手と主催者の間に入っての調整は、結構大変じゃないですか?

吉井 :僕を見ていると、みんな「会長はやりたくない」って言っています(苦笑)。何か話が来たときは、僕がみんなを説得して、みんなが前向きな気持ちで協力できるように心掛けるのですが、そこが最初は難しいところでした。先輩もたくさんいましたし、騎手って個性的な人も多いですから。

赤見 :そうですよね。そこをまとめていくというのが。

吉井 :そうなんですよね。最初は、結構バタバタしていましたよ。開催日は騎手の仕事に集中したいのですが、開催の日ほどいろいろな話が挙がってきて。

でも、今は若手が意識を持って、協力しながら動いてくれるようになりました。若い子たちが自分たちで動くと、良い勉強にもなりますのでね。

赤見 :期間限定騎乗とか、競馬場が廃止になったときに何人受け入れるかとか、あの辺の調整も結構大変なんじゃないですか。いろいろな考えの方がいると思いますし。

吉井 :そういうことは、期間限定で来ている他地区の騎手とも話をするんですけどね。今は、地方競馬の騎手が少なくなってきて、那須の競馬学校も1年に1回しか生徒を採らないですし、騎手自体が大切な存在になってきているというのを感じているんですね。

それに、実績のある騎手は、地方競馬の財産であると思います。騎手としても、またその後に調教師になっても活躍されるだろうし、そういう先のことも考えて、例えば廃止になったときに何名受け入れられるかというのも、しっかり話し合っていかないといけないですね。

おじゃ馬します!

地方競馬全体のことを考えられて

赤見 :地方競馬全体のことを考えられているんですね。何でそういう考え方ができるようになられたんですか? 大きなことを考えていらっしゃるじゃないですか。

吉井 :副会長になった時は、やらされているという感じでしたよ。でも、いろいろなところへ連れて行ってもらって、だんだんと知識を得て。実際に自分が会長になったら、責任もありますし、「どういうふうにしていく」というビジョンをしっかり持っていないといけないと思っています。

赤見 :責任感が強いんですね。

吉井 :こういう立場に立って、そうなったのかもしれないですけどね。今は僕が中心ですが、自分だけで判断できないときは、僕より人生経験の多い人たちの話を聞くようにしていますし、「自分たちの仕事場をより良いものに」という気持ちで、みんなに協力してもらっています。そろそろ跡を継いでくれる人を育てていく時期かな、と思っているんですけどね。

赤見 :これまで主催者と一緒にやってきて、今の主催者に対して不満はないですか?

吉井 :ん〜、不満がないと言えばうそになりますけどね。例えばレースの組み方にしても、レースとレースの間隔であったり曜日であったり、「もっとこうしたら売れるんじゃないか」というのはあります。

そういう意見を正式に主催者に挙げるときには、調教師会にも賛同してもらって、一緒に提出するようにしていますし、そういう現場の声をよく聞いてくれるというのは、僕らからすると主催者はすごく協力的だと思いますね。

赤見 :お互いに協力し合いながらが、一番いいですね。

おじゃ馬します!

お客様をたくさん呼んでほしい

吉井 :そうしていかないと、生き残っていけないですしね。主催者には競馬場にお客様をたくさん呼んでほしいですね。

一番は競馬場のお客様のために、ということを一緒にやっていきたいです。お客様がいっぱい入っている前でレースに乗れると、気持ちも良いですからね。

赤見 :全然違いますよね。

吉井 :ええ。緊張感もより持てると言いますかね。そして何より、主催者にお願いしたいことは、騎手の安全な騎乗です。南関を含めてケガをするジョッキーが増えています。他地区ですと、馬場や地盤が固かったり馬が使い詰めだったり、より厳しい状況です。それを踏まえて、騎手がそして馬が、安全に競馬ができるように努めてほしいですね。(了)

■大井競馬のNO.1、塚田修副管理者特別インタビュー

赤見 :塚田さんは、大井競馬の実務上のトップにいらっしゃる方ですよね(※管理者は品川区長)。今回の取材のまとめとして、「大井競馬の未来」について伺いたいと思います。

おじゃ馬します!

塚田修副管理者

塚田 :大井の未来ということで言うと、2つ考えていることがあります。まず、大井の未来を考えるには、今のお客様はすごく大事だけれども、新しいお客様をどうつかむかということは、未来を考える上ですごく重要なことです。

競馬はしっかり実施するけれども、今は競馬だけではお客様を呼べない状況になっています。そこでイルミネーションやイベントをレベルアップして、「TOKYO TWINKLE」と言っていますが、新しい質の高いトゥインクルレースを作り上げて、新しいお客様に来ていただけるようにしないと、未来の競馬はないんだろうなと思っています。

もう1つは施設面で、2号3号スタンドは昭和30年代の建物で、これを建て替えるということです。来年の6月ごろから工事を始めて、最初に照明塔を建てて、9月ごろから2号スタンドを壊し、今と同じ約5,000平方メートル規模の新スタンドを建てます。次に3号スタンドを壊すんですが、ここにはスタンドを作らないつもりでいます。

赤見 :えっ!?

塚田 :大井は1日の来場者が最高で35000人、一番少ない時で3500人くらいです。アベレージで7000人弱とすると、そんなに大きなスタンドを作っても、というのがあります。

そこで、その空間をオープンスペースにしたいと思っています。そのスペースを生かして、その時々で工夫できればと思っています。大きなテントを張ったり、キッチンカーを並べたり、パラソルを置いたり。芝生にするという話もあるんです。そういう、スタンドではできないことを広い場所を上手く使ってお客様に楽しんでいただく、という観戦スペースは、ひとつの特徴になると思っています。

赤見 :なるほど! いろんな楽しみ方ができそうですね。

おじゃ馬します!

2号3号スタンド

塚田 :ええ。新しいスタンドについては、平成27年の秋ごろに完成する予定です。その時には、最新のスタンドにしたいというのがあります。キャッシュレス投票や、映像を上手く活用した新しい情報提供などを考えています。

平成28年の秋ごろには、オープンスペースも含めて全ての工事が完了する予定です。で、その平成28年が何かというと、「トゥインクル30周年」なんです。

赤見 :おぉ〜!

塚田 :トゥインクル25周年の時が「TOKYO TWINKLE」で、「新しい、質の高いトゥインクルをやりましょう」と「競馬だけではない総合的なアミューズメントを作りましょう」ということだったんです。そして30周年には、施設も含めた「より高いTOKYO TWINKLEを目指そう」という方向なんです。

赤見 :L-WINGが出来て10年ですよね。その時も衝撃的でしたが、また新しいものが大井から生み出されるんですね!

塚田 :競馬を経験されたことのないお客様でも、実際に来て見ていただけたら面白さは伝わるという自信はあります。だから1回でもいいから来ていただきたい。そのためには我々のお客様に対するホスピタリティというか、お客様を大事にする心を基本にして、しっかりと運営された都会の夜の競馬に、さらにお客様に魅力のあるサービス、イベント、エンターテイメントなどの付加価値をつけていきたいと思っています。これは、大井の誰に聞いても、みんな同じことを言うと思います。

赤見 :本当に「大井の精神」って、みなさん徹底していますね。

塚田 :大井の一番の特徴って、新しいことをするというのもあるんですが、競馬場に関係するみんなが「ALL大井」でお客様を大切にする、そして新しいことに取り組むというのが、特徴だと思います。

赤見 :また大井競馬場って、都心にあって、ワクワクできるところですよね。

おじゃ馬します!

今年のイメージガール香里奈さん

塚田 :首都圏のこんな良いところにあって、本当に有利なんだと思います。だけど、その分競争相手も多いんですよ。我々は「夜の楽しみのひとつ」ということなんですけど、やっぱり都会にはいっぱいあります。

赤見 :たしかに。戦っている相手が例えばお台場とか、そういうものになってくるわけですよね。

塚田 :そうです。その中で埋没しないように、チョイスしていただけるように、ということなんですよね。結構、そういう意味ではプレッシャーです(苦笑)。

スタンドの建て替えの他に、もうひとつ考えていることがあります。今、電話投票のSPAT4のシステムをバージョンアップしようとしているんです。

赤見 :…そうすると?

塚田 :これは、まだ何とは言えないんですけど、今までにないものができます!

赤見 :なんですか!? 気になります!

塚田 :そうですよね(笑)。今はまだお知らせできないんですが、楽しみにしてください!

赤見 :さすが「大井の精神」、決して立ち止まらないですね。発表されるその時を楽しみにしています!

◆次回予告
9月のゲストは中井裕二騎手(JRA・栗東)。デビュー2年目、着実に成績を伸ばしている若手期待株です。“憧れ”武豊騎手への溢れんばかりの思いや、“ダブル裕二”こと同期・菱田裕二騎手への意外な本音、そして岩田康誠騎手や川田将雅騎手からの騎乗アドバイスなど赤裸々に語ります。公開は9/2(月)12時、ご期待ください!

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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