角居勝彦調教師/秋華賞 Part3 『この馬で、まだ見たことのない壁を超えたい』
Part1で触れた「春は順調ではなかった」という角居の言葉は、新馬戦からオークスまでのローテーションにあった。逆に言えば、馬の成長に合わせて調教メニューを組んできたからこそ、今のデニムアンドルビーがあるともいえ、相手が生き物だけに、そこに正解はない。
「春はギリギリの体でGIまでいってしまったので、夏の休養で体が膨らんできてくれたらいいなと思っていたんですが、僕の理想通り、30キロ近く太って帰ってきてくれて。それでいて、柔らかさが残っていましたから、しっかりトレーニングされてきたんだなと。おかげで入厩してからもしっかりご飯を食べながら、調教を積むことができました。理想的な夏休みだったと思います」
オークス出走時点で432キロ。それでいて、デニムアンドルビーという馬は、線の細さを感じさせない。筆者がその印象を角居に告げると、
「そうなんですよね。胸が深いというか、いかにも心肺機能が優れていそうな体付きです。追い切りのあとでも、へこたれたり、呼吸が乱れたりしたことがない子なんですよ。心臓と肺がいい馬っていうのは、レース後も心臓の拍数をすぐに安定した数字に戻せる能力を持っているんだと思います。歴代のGI馬を振り返ると、レース直後の写真撮影でも、苦しがらずにピタリと立ち止まりますからね。それに、エンジンさえ良ければ、むしろ小さい体のほうが速く走れますからね。それでいてデニムは、競馬で接触したりしても、意外と怯まない性格。競走馬として、それも大事な能力のひとつですよね」
ローズSというタフな競馬のあとでも、ダメージを感じさせなかったというデニムアンドルビー。その秘密は、優れた心肺機能にあったのかもしれない。
さて、いよいよ目前に迫った秋華賞。舞台は京都の内回りだ。幾多の有力馬たちが、“差し届かず”の苦汁をなめた舞台。道中最後方の位置取りは、今度は厳しいかもしれない。