中国におけるサラブレッドの繁殖・育成をテーマとした国際シンポジウムに参加するため、9月4日から7日までの日程で北京を訪問したが、久々に楽しい旅をしたなという気分に浸っている。
中国には馬に関連した統括団体が2つあって、そのうちの1つである中国馬業協会がシンポジウムを主催。もう1つの中国馬術スポーツ協会、更には香港ジョッキークラブ、そして日本のJRAが協賛、日本の北海牧場が出資経営する北京龍頭牧場が後援をする形で実現した今回の催しは、競馬とサラブレッド生産が世界各国でいかに重要な産業となっているかについて、現地関係者間の理解を深め、中国における生産と競馬の1日も早い発展と成功を促すことが目的であった。
シンポジウムの内容も興味深かったが、中国の本土を訪れるのは初めてだったこともあり、訪れた牧場や馬術クラブ、馬の博物館等で見聞したものの多くに新鮮な驚きを覚えた。
何と言っても最大の驚きは、北京で「普通に」競馬が行われていたことであった。
建前の上では、現在の中国政府は競馬を禁じており、従って馬券発売を伴った開催は行われていないことになっている。1991年から8年に渡って競馬を行った広州で大規模な贈収賄事件が発生して以来、「競馬は御法度」というのが国の方針となったのだ。
だが、これはあくまでも建前。公にはやっていないことになっていながら、実は北京には2年前にオープンした競馬場があり、ごく限られた階層であるクラブメンバーだけを対象として、密やかに競馬は行われている……と言うのが、北京訪問前の筆者の認識であった。
ところが実態はと言えば、密やかどころか、一般ピープルも参加する競馬が白昼堂々開催されていたのである。
中国馬術スポーツ協会の方の話によれば、中国全土にある競馬場の数は7こから10こ。この「7から10」という幅のある回答はどういうことかというと、中国という国は広過ぎて、統括組織としても正確には把握していないというのだから、おおらかな国である。
そのうち3つが北京にあり、その中の1つが現在閉鎖中。残る2つのうちの1つ「華駿」というところにある競馬場では、毎週土曜日に開催があるのだ。
残念ながらシンポジウムの日程と重なってしまったため、私自身は出向くことが出来なかったが、日本からの同行者で競馬開催に行った人の話によると、「実にまともな運営を行っていた」とのこと。「まともな」とは、場内にはトータリゼータシステムがあり、騎手はきちんと検量して騎乗し、裁決委員がいてレースの監視が行われており……という意味で、実に整然たる競馬が行われていたというのだ。そして場内では、家族連れとおぼしき人たちが楽しげに観戦していたそうである。
更に驚くべきは、この華駿の競馬は、毎週かならず地元の放送局で生中継されているのだ。テレビ中継まで行われていては、とてもじゃないが「密やか」開催とは言えないのである。
北京の競馬に御興味のある方は、ウェブサイトのbeijingjockeyclub.comでかなりの情報を得ることが出来る。
また、10月1日から5日まで南部の武漢で、今年で5回目の開催を迎えるチャイナCが行われるが、これも一見に値する催しのようなので、御興味のある方は足を運ばれたら如何であろうか。