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JRA育成馬、鋭意調教中

  • 2013年11月27日(水) 18時00分



◆JRAブリーズアップセールを目指す82頭

 今年の7月〜10月にかけて各市場にてJRAに購買された育成馬たちは全部で74頭。

 それにJRAホームブレッドの8頭を加えた計82頭が、日高と宮崎の二か所に分かれ、来年7月のJRAブリーズアップセールを目指して鋭意調教が進められている。

 このうち、浦河にある日高育成牧場に在籍するのは60頭。このほど調教風景を見学させていただく機会があり、11月下旬のある日にお邪魔してきた。時折、雪の降るようなこの時期特有の寒さの中にもかかわらず、調教は粛々とメニュー通りに進められている。

「今は、屋内の角馬場でダクを行なった後、隣にある一周800mの屋内ダートコースを使用してキャンターで右回りと左回りを各1周ずつ乗っています」と石丸睦樹・業務課長から説明を受けた。

「全体を3つの班に分割して、1班は割に調教の進んでいる牝馬、2班はそれほど進められていない馬、3班は最も進んでいる牡馬というように、グループごとにメニューを変えて乗っております。例年並みのペースですね」

日高育成牧場の調教風景

日高育成牧場の調教風景

 今年のJRA育成馬の成績は、周知の通り現時点ではなかなか素晴らしいものがある。すでに重賞は交流を含めて2つ勝っており(クリスマス・函館2歳ステークス、フクノドリーム・エーデルワイス賞=門別)、その他オープン特別勝ちもあるし、重賞入着馬もいる。

 その好調の要因について伺ったところ「まぁ、偶然ですよ」と謙遜しながらも、石丸課長は「さまざまな要因があると思いますが、たとえば調教などでは隊列を組んできちんと間合いを取って走るように躾けてきましたし、すべてにおいて順調に進められてきたことが大きいと思います」とのこと。それに付け加えるならば、整った施設と豊富な人材により、十分に手をかけられてきたがゆえの結果とも言えよう。

 今年の2歳戦における大きな特徴は、牝馬の活躍である。それも、ブリーズアップセールにおいて決して高くはない落札価格の馬たちが、デビューするや否や、値段以上の走りを見せてくれている。いち早く重賞勝ちを収めたクリスマスの場合は、ブリーズアップセールでの落札価格が税抜きでわずか350万円。下から数えた方が早い価格だったものの、
あれよあれよという間に重賞まで制してしまった。

「この馬は、春先にはまだ冬毛が伸びていて抜けておらず、確かに見栄えという点では見劣りしていたかも知れません。実は宮崎育成牧場とここ日高とではそもそも育成馬を調教して行く時期(9月〜4月)の気候の差はとても大きくて、どうしても宮崎育成牧場の馬の方がませた感じになります。あそこは年中、外の馬場で調教できますし、地面の凍結もないし、ほぼ通年青草が繁茂している土地柄ですから。それで、日高育成牧場では、その編のハンデを補うためにライトコントロールでホルモンの成長を促したりして、できるだけ宮崎の環境に近づけるように努力はしているつもりなんです」

 とは言いながら、クリスマスはライトコントロールを実施しない組だったために、やや見栄えが悪くなってしまったとのこと。

◆ブリーズアップセールの信頼性の高さ

 また、ついでながら記すと、もう1頭の重賞勝ち馬であるフクノドリームも、ライトコントロールを実施していなかったらしい。

 それでいて走る馬は走るし、走らない馬は走らない。つくづくサラブレッドのデビュー後の成績を占うのは難しいと思う。

 ライトコントロールを実施する馬としない馬の区別はどのあたりにあるのか?それについて石丸課長は「ここの育成馬たちは、ブリーズアップセールに上場するのが目的で調教しているわけですが、それとともに、調教データを作りながら、講習会などを通じて情報を開示し、民間の方々に役立てて頂く目的もあります」とのこと。

 そのために、各馬ごとに運動や給餌などあらゆるデータを数値化し、もちろん良い面も悪い面も開示する。ブリーズアップセールの信頼性の高さはこうした透明性の高さにも起因している。

ブリーズアップセールの信頼は透明性の高さから

ブリーズアップセールの信頼は透明性の高さから

「本当は、高い馬が走ってくれて、安い馬もそれなりに、というのが理想なのですが」と石丸課長。現時点では、牝馬が好成績をあげていることは嬉しいものの、牡馬の不振がやや物足りない部分でもあるようだ。

 個別にどの馬が進んでいて、どの馬が遅れているというような点は割愛するが、これとて仮に現時点での調教進度が分かったところで、あまりあてにはならない話だ。なぜならば、重賞勝ち馬2頭が必ずしもセール時に高評価を与えられた馬たちではないからである。

 ただ、今年の育成馬には、今をときめくヨハネスブルグ産駒が5頭いるのがちょっと気になる。産駒の好成績により生産地でも爆発的な人気を博すヨハネスブルグは、来春の配合申し込みが実に650頭に達する異常人気となったらしい。おそらく来春のブリーズアップセールでも、これら5頭は「目玉商品」になるのではあるまいか。しかも、皮肉なことにこれら5頭はすべて「JRAホームブレッド馬」たちである。

 ちなみにこのJRAホームブレッド馬は、今春8頭がセールに登場し、うちすでに3頭が勝ちあがっている。中でもグランシェリーは中京2歳ステークスを制する活躍で、民間の生産馬に伍して大健闘している。その意味でも、来春のセールは注目に値する。

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岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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