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角田晃一調教師/朝日杯FS 後編『豊さんの記録とベルカントの名前が歴史に刻まれれば最高ですね』

  • 2013年12月12日(木) 12時00分


◆この子についてくる馬はいないのでは…

 ファンタジーSは、まさにテン良し、中良し、終い良し。実に危なげのない逃げ切り勝ちだった。角田にとっても、これがうれしい重賞初制覇。普通なら、いざ、阪神ジュベナイルFへ──となるところだが、そもそも角田が調教師への転身を決意したきっかけが「自分が考えた調教メニューをこなして、こういうレースに使いたい、こういう距離を使いたい、それでどんどん馬のレベルを上げていきたいと考え出したこと」。大事な選択を前に、角田の思考は柔軟だった。

■ファンタジーSレース映像

ファンタジーSレース映像 映像

「ファンタジーSを勝った直後は、ジュベナイルに、と思っていたんです。でも、次の週にいろいろ考えまして。もし自分が乗るとしたら…ってシミュレーションしたとき、あの馬の個性をより生かすことができるのは、阪神ではなく中山なんじゃないかって。直線も阪神より1ハロン近く短いですからね。それで、もしかしたら…と思って、豊さんに『朝日杯は空いてますか?』って聞いたら『空いてる』とのお返事だったので。むしろ『そっちのほうがいいと思う』ということでしたし、オーナーも快く承諾してくださって」

ファンタジーS

 そうサラリと言ってのけた角田だが、牡牝混合だった阪神3歳Sが阪神3歳牝馬Sとして施行されるようになった91年以降、朝日杯に挑戦した牝馬は、07年の関東馬、フォーチュンワード(6着)ただ1頭(05年に関東馬のスロクハイネスが登録したが、直前に出走取消)。牡馬相手に加え、長距離輸送を伴うだけに、容易に選択できるローテではない。

「小倉に2回輸送していますが、体も減りませんし、何よりどっしりしているんですよね。気性というよりも、坂路で追い切ったときに、ブレずに真っ直ぐ走ってくれるんです。栗東の坂路はすごく負荷がかかりますし、パワーとスピードがないとなかなかそうはいかないものですが、この馬は安定感があるし、負けじと耐えてくれる。それでいて、ご飯もモリモリ食べてくれるので、いうことないんです。だから僕は、牝馬だと思っていません(笑)。男馬のつもりでやってます」

「不安だった」という1400mから、今度はさらに1ハロン延長。この200mの壁は、元ジョッキーとして重々わかっているはず。血統背景も、父はサクラバクシンオー。母セレブラールも、1200mで3勝を挙げた短距離馬だ。「本当なら、1200mなんでしょうけど…」と前置きした上で、中山1600mに向けての勝算を語ってくれた。

「不安がないといえば嘘になりますが、この子の場合は、持ってくれると思うんですよね。というのも、この子のペースは

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GIの注目馬にスポットを当て、主戦騎手や管理調教師を独占取材するnetkeibaのスペシャルインタビュー。GIに向けた意気込みや中間の調整過程、レース後に直撃し、戦いの舞台裏にあった知られざる真実を語っていただきます。

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