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ジャスタウェイ・大和屋暁オーナー(2)『嘘みたいなサクセスストーリー』

  • 2014年03月10日(月) 12時00分
おじゃ馬します!
超人気アニメ『銀魂』の脚本を手掛ける大和屋オーナー。とは言え、具体的にはどんなお仕事なのでしょうか? 馬主になれるくらいに稼げるものなのでしょうか? 知られざる業界話と、大和屋オーナーの強運人生に迫ります。(3/3公開Part1の続き、聞き手:赤見千尋)


◆前代未聞!アニメ業界から馬主へ

赤見 大和屋さんの職業名としては「シナリオライター」「脚本家」という。世の中にこういうお仕事があるっていうのも、なかなか知られていないですよね。

大和屋 そうですね。「シナリオライター」と言うと、何となくカッコイイ感じがするでしょう(笑)?

赤見 はい(笑)。具体的に言うと、どういうお仕事内容なんですか?

大和屋 そうなんですよ。説明するのが難しいんですね。脚本というのは、お話を文字で書くんですね。設計図みたいな感じなんですが。

赤見 アニメなら、30分の枠の設計図。

大和屋 そうです。話ごとに、枠の中でどこで切ったりどこで足したりという構成を考えるんですが、そこをシナリオライターに発注が来るんですね。それで、発注されたところの範囲で、お話を30分でまとめて、ちゃんと起承転結を付けて、面白くするという仕事です。分からないですよね? そう、分かりづらいんですよ。

赤見 『銀魂』で言うと、原作のマンガ『銀魂』があって、それを基にしてアニメの脚本を作成される?

大和屋 そうです。アニメーションにする時の設計図を、文字で作るんですよね。その文字の設計図を見た演出という人達が、絵コンテにするんです。絵コンテにして会議をして、作画監督という人がいるんですけど、その作画さんが原画を描きます。その後に、その原画をアニメーターという人達が何枚も描くわけです。それで動画にするんですよ。

赤見 文字にしてから絵コンテにするんですね。

大和屋 そうそう。その絵をさらに直したりするので、また行ったり来たりというのがあって。それは作画監督の仕事なんですけどね。

赤見 マンガからアニメにするのって、大変なんですね。

大和屋 そうですね。いろんな人が関わっていますからね。その後も、原画ができたら今度は色を付けて、撮影をして、アフレコをして効果音をつけてという。俺が請け負っているのは、いろんな過程がある中の1つです。まぁ、その中ではわりと上流なので、ちょっとお金が儲かる仕事になっています(笑)。こういうの、言ってしまっていいのか分からないですけど…。

赤見 大和屋さんのお名前は、スタッフロールでも先に出て来ますもんね。

大和屋 一応、大事にしてもらっている仕事です。本当は、絵が大事だと思うんですけどね。

赤見 でも、内容が面白いからこそだと思います。私、マンガの原作をやらせてもらっているんですけど、マンガからアニメってどうやって作っていくんだろうと思っていたので、すごく興味のあるお話です。アニメーターさんたちのご苦労がよく分かりました。ものを作っていくって、すごいですね。

大和屋 そうですね。今はちょっと、内容にクレームが入ったりするじゃないですか。それで中身を変えたり、取り止めにしたりというのも多いですよね。それって良い面もあるけど、悪い面もあったりして。やっぱり、面白いものを作りたいですよね。

おじゃ馬します!

赤見 大和屋さんのようなお仕事に就くには、どういう道があるんですか?

大和屋 コネなんですよ。コネと運です。コネがあっても潰れる人はたくさんいますし、芽が出ない人もいくらでもいるんですけどね。

赤見 同じ職業の方で馬主さんっていらっしゃるんですか?

大和屋 いや、さすがにいないでしょう。アニメ関係で言うと、前代未聞だと思います。そもそもやろうとしないでしょうし、普通はそこまで儲からないですから。だから運ですね。運がいい。それは思いますね。

◆初の口取り体験はドバイで

赤見 お仕事で強運を発揮して、競馬の世界でも運の強さを見せていらっしゃいますが、そもそもは一口でハーツクライを持っていたから、ジャスタウェイを含めて所有馬はみんなハーツクライ産駒という。ハーツクライはどうやって選んだんですか?

大和屋 時間がなかったんですよ。忙しくて。社台って実績制度なんですよね。だから最初の年は買えそうな馬を選んだんですけど、それが全然ダメで。それで2年目は「どうせ行くならサンデーサイレンスだろう」って、それで選んだのがハーツクライです。

赤見 馬体が良いとかではなくて、血統で選ばれて?

大和屋 そうですね。他にもサンデーの仔はいたんですけど、(肌馬の)アイリッシュダンスが好きだったというのもありまして。まぁ、あまり考えずに選びました。本当に時間がなくて、たしか締め切りも過ぎていたと思うんです。「マズイ、期限過ぎてる」って、速達で送ったような気がします。

赤見 それでハーツクライというのがすごい。新馬戦は見に行かれました?

大和屋 いや、テレビで。一口の頃は、あまり競馬場に行くという気がしなかったんです。人が多いところは…って。でも、大阪杯は見に行ったのかな。「お好み焼きでも食べに行こうか」みたいなノリで(笑)。

赤見 ちょっとした関西旅行で(笑)。

大和屋 それが2着に負けたでしょう。その後は全然行ってないですね。ドバイシーマクラシックまで行ってないんじゃないですか。

赤見 えっ、ということは、ドバイは行かれたんですか?

大和屋 はい。ドバイは行きました。海外旅行に行きたかったんですよね(笑)。そこで初めて口取りにも入ったんですよ。あれは良い思い出です。

おじゃ馬します!

▲ドバイシーマクラシックを劇的勝利(撮影:高橋正和)


赤見 それはまたすごいですね。相当興奮されたんじゃないですか? GIに格上げされてから、日本馬として初の優勝で。

大和屋 いやぁ、興奮しましたね。しかも、その前の有馬記念も勝っていましたからね。有馬記念もテレビで見ながら興奮しましたよ。だって、まさかディープインパクトが負けると思わないじゃないですか。

赤見 無敗のディープがまさかの2着っていう、衝撃の一戦でした。

おじゃ馬します!

▲ディープインパクトを破った有馬記念(撮影:下野雄規)


大和屋 そうそう。世の中に数少ない、大喜びの人ですよ。ディープがいたらGIを勝つチャンスはない、って思っていましたもん。そのためには何としても、ディープの出ない天皇賞・秋とジャパンCでなんとかしなければと思っていたんですけど、6着、2着で。そうしたら直接対決で勝っちゃって、そのままドバイシーマクラシックも逃げ切っちゃって。

赤見 そして、今年のドバイにそのハーツクライの子供で参戦するという。恐ろしいくらいの強運ですね。昔から強運だったんですか?

大和屋 そうですね、はい。そこはなんかもう自信があります。って、「そうですね」って言うしかないじゃないですか(笑)。天皇賞を勝つまで来たら、どう考えても強運でしょう。でも、他のことは強運じゃないんですよ。

赤見 そうなんですか?

大和屋 勧められて株を買ったことがあるんですけど、その会社が上場廃止になったり不祥事を起こしたり。そういうことがあるので、変なことにお金を使わないようにしています。

赤見 なるほど。運は馬で使う?

大和屋 そうですね。自分の場合、絶対に他のことで儲けようとしてはだめです。楽して儲けようなんて、だめですね。まぁ、仕事でここまで来られたというのもすごい強運なんですけど、基本的にはやっぱり馬ですね。運は馬で使う! (Part3へ続く)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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