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ジャスタウェイのドバイDF勝利に思う

  • 2014年04月04日(金) 12時00分


◆ハーツクライ産駒の本質は晩成タイプか

 正直、ジャスタウェイのドバイデューティフリー勝ちには驚いた。ラストの300mは独走状態。2着馬を6馬身強も突き放す圧勝である。これが昨年の夏まで、GIIIのエプソムC、関屋記念すら勝ちあぐんでいた馬だろうか。

 2歳7月のデビュー戦を勝ち、続く新潟2歳S2着。3歳2月のアーリントンCで初重賞勝ちを飾ったが、NHKマイルC6着、日本ダービー11着。古馬になってからもGIII、GIIで2、3着を繰り返し、このあたりが限界の印象があった。

 ところが、昨秋、天皇賞をいきなり勝利。続く中山記念も58キロを背負って楽勝。さらにドバイデューティフリーも圧勝で3連勝。確変から、いきなり覚醒モードに突入した感じだ。

 思えば父のハーツクライも、本格化したのは古馬になってからだった。産駒は全体に仕上がりは早いが、本質は晩成タイプとみて性急な使い方は避けるべきなのかもしれない。このジャスタウェイの大変身は、今後のハーツクライ産駒を育てていくうえで、大きな道しるべを指し示すことになった。

 一方、日経賞でもウインバリアシオンがおよそ3年ぶりの勝利を飾った。思えば2011年の青葉賞を勝利し、ハーツクライ産駒の重賞勝ち第1号となったのがこの馬だ。その後、日本ダービー2着、菊花賞2着など大レースで善戦しながら勝ち切れず、そうこうするうちに屈腱炎を発症し、1年半近くも棒に振ってしまった。

 しかし昨秋、復帰するや2戦目の有馬記念を2着に好走。次いで先週の日経賞を勝って完全復活を遂げた。種牡馬の初期の産駒は、その特徴が未知なために仕上げ方、使い方の判断を誤り、資質の芽を摘んでしまうことがよくある。

 残念なことにウインバリアシオンは、ハーツクライの初年度産駒だった。もし4、5年目の産駒であったならば、もっと大きく、まるで違った出世していたように思う。それでもハーツクライ産駒の重賞勝ち馬は、3年間で11頭に急増。ジャスタウェイは産駒初のGI勝ち馬となり、覚醒モードに突入した。

 この血の勢いを、ウインバリアシオンも次の天皇賞・春に結びつけたい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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