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「2番人気が悔しかった」キズナ快勝の大阪杯リポート

  • 2014年04月08日(火) 18時00分
キズナ

パドックを回るキズナ



◆武豊騎手「自信あったのに、2番人気っていうのが悔しかったですね。」

キズナ・エピファネイア・メイショウマンボという4歳3強の激突で、大きな注目を集めた今年の大阪杯。GI並みの盛り上がりを見せたこのレースをリポートします!

阪神競馬場の周りを囲むように植えてある桜は満開に咲き誇り、たくさんのファンを出迎えた。この日は朝から小雨が降ったり、日中もどんよりと厚い雲が空を覆っていた。11レースが近づくと、パドックの周りは黒山の人だかり。春とは思えない凍える寒さの中、今か今かと主役たちの登場を待ちわびていた。

1枠1番フラガラッハが、慎重に左右を見ながらパドックに登場する。順番に姿を現した主役たちは、どの馬も落ち着いて見えた。周回中、キズナが尻っぱねしながら後ろに飛び蹴りする。静まり返ったパドックに、「おぉ」という感嘆の声が響いた。パドックでのこの光景は、父ディープインパクトを思い起こさせる。武豊騎手が跨った後も、キズナは後ろ脚を跳ね上げて飛び蹴りを繰り出し、武騎手がお尻を触ってなだめても、ポンポンと勢いよく尻っぱねを繰り返した。

1番人気に支持されたエピファネイアは、終始堂々と大外を歩いていた。一歩脚を出すごとに、短く整えられたタテガミがサラサラと揺れて、リズミカルに歩いて行く。その後ろからは、少し離れてメイショウマンボが続いた。唯一の牝馬ながら、リラックスした表情でマイペースを守り続けていた。

この日はGIIでは珍しい生ファンファーレ。演奏に合わせて手拍子が始まり、GI並みの大歓声が場内を包み込んだ。

レースはカレンミロティックが逃げ、2番手トウカイパラダイス、3番手ビートブラックの3頭が後ろを離す展開。3コーナーでエピファネイアが動いて行くも、まだ前を走る馬たちとは差が開いている。直線に入ってトウカイパラダイスが先頭、脚色はまだ衰えていない。捉えられないのではないか−場内からは大きなどよめきが起こった。次の瞬間、最後方から伸びて来たキズナがまとめて交わしていく。どの馬も並ぶ間もなく、一頭だけ脚色が違う。突き抜けたキズナの後に、渋太く粘ったトウカイパラダイスが駆け抜け、クビ差でエピファネイアがゴールした。レース前の大歓声から一転、場内はしばらくの間静まり返っていた。

武豊騎手

「今年初めてのレースで、いい競馬が出来ました。どの馬をマークするとかは考えず、自分のレースをしました。たまたま前にエピファネイアがいたので、いい並びだなと思って。前半は無駄なエネルギーを使わずに、考え過ぎずシンプルに乗りました。ゴーサインを出した時も反応が良かったですし、さすがダービー馬という脚を使ってくれましたね。

最終追い切りが本当に良かったし、前と比べてガラッと変わったわけじゃないですけど、変わってなくて安心したというか。自信あったのに、2番人気っていうのが悔しかったですね。

今日は休み明けということもあってか、パドックでけっこう尻っぱねしてましたね。ディープもずっとやってたから、特に心配するようなことじゃないんですけど、見た目がね…。ダービー馬らしくきちんとして欲しいなと思って、お尻をポンポンと触って馴らそうとしたんですけど、跳ねてましたね(笑)。まぁでも、この馬はレースの直前になると集中していくんですよ。

この後は天皇賞ということなんで、久しぶりに少数精鋭の天皇賞になったらいいなと。距離?それはもうね、この馬はそういうレベルじゃないですよ。2400mのダービー勝ってニエル賞勝って、凱旋門賞4着で。距離を気にするのは他の馬でしょう」

武豊騎手とキズナ

武豊騎手「距離?それはもうね、この馬はそういうレベルじゃないですよ」



佐々木晶三調教師

「こんな馬、見たことないですよ。こういう馬をやってると緊張しないですね。レースになると1ファンになりますよ。今、日本で一番強いと自分では思ってるんでね、ジャスタウェイもいるしここらでやられてたら、コテンコテンにやられてしまうでしょう。

宝塚は盛り上がりそうですねぇ。ジャスタウェイもいてジェンティルドンナもいて。この後は天皇賞の予定なので、あとは距離持たすようにしないと。折り合いは付くと思うし、豊くんが上手く手の内に入れてくれてますからね。

ダービーの時に負かしているのに、今日は2番人気で…。悔しかったな…。次は1番人気になるように応援して下さい。宝塚も1番人気になるように。そしてその後は夢のGIが待ってるから。でも気を引き締めてね、父も勝っているし、それを信じて頑張ります」

2着は6番人気のトウカイパラダイスが粘り込んだ。

柴山雄一騎手

「いいペースで走れたし、折り合いも付きました。強い馬が後ろにいるから、瞬発力勝負では敵わないので、早め早めに動いて、セーフティリードを取ろうと思っていました。凌いだかなと思ったけど…、キズナは強かったですね。

この馬は今年7歳ですけど、状態も良かったし、本当によく頑張ってくれましたね」

柴山雄一騎手とトウカイパラダイス

柴山雄一騎手「凌いだかなと思ったけど…、キズナは強かったですね」



3着は、1番人気に支持されたエピファネイアだった。

福永祐一騎手

「後ろにキズナがいるのはわかってたんですけど、前と離れてたんでね、あの場面では自分が動いて行くしかないと。ちょうどいいタイミングで動けたかなと思ったんですけど、結局はトウカイパラダイスも交わせなかった…。キズナにはアッサリ交わされたし、4コーナーを回ってからもう一つグッと来るかなと思ったんですけど、それがなかった。今回は休み明けですし、この馬は追い切りをやるごとに変わって行くので。

ここまで、スローペース、スローペースで来て今日のハイペースでしたけど、上手く対応してくれたし、馬自身落ち着いていました。キズナは強かったですけど、これで終わりじゃないので」

福永祐一騎手とエピファネイア

福永祐一騎手「キズナは強かったですけど、これで終わりじゃないので」



唯一の牝馬メイショウマンボは、見せ場なく7着に終わった。

武幸四郎騎手

「乗ってからかなり入れ込んでましたけど、特別今日だけうるさいわけじゃないので。レースは、何にもなかった…。スムーズだったけど、3コーナーで動いて来た時に抵抗出来なかったです。

メンバーは確かに強かったですけど、それよりも何よりも、全然走ってないんです。ショックはショックですけど、大事なのはこれ使ってからなので」

メイショウマンボ

武幸四郎騎手「メンバーは確かに強かったですけど、それよりも何よりも、全然走ってないんです」



飯田祐史調教師

「途中から折り合ってましたけど、何て言うか…桜花賞と同じような負け方でした。体調は悪くなかったと思うんですけど。次は馬の様子を見て決めます」

4歳3強の激突と注目を集めた今年の大阪杯。終わってみれば、キズナの驚異的な強さが際立ったレースだった。(取材、写真:赤見千尋)

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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