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話題性にも事欠かないケンタッキーダービー有力候補、カリフォルニアクローム

  • 2014年04月09日(水) 12時00分


◆2歳秋までのカリフォルニアクロームは、その辺にゴロゴロいる「その他大勢」の1頭に過ぎない馬だった

 4月5日(土曜日)に西海岸サンタアニタで行われたG1サンタアニタダービー(d9F)は、カリフォルニアクローム(牡3、父ラッキープルピット)が1番人気に応えて快勝。次走に予定される、5月3日にチャーチルダウンズで行われるG1ケンタッキーダービー(d10F)で、1番人気の座に就くことが確実となった。

 大一番まで1か月を切ってようやく出現した、今年の北米3歳クラシック戦線の「核」となりうる存在が、カリフォルニアクロームである。

 G1BCジュヴェナイル勝ち馬ニューイヤーズデイが、右後肢骨折のため2歳一杯での引退を表明。

 5.3/4馬身差で制したG1キャッシュコールフューチュリティ(AW8.5F)を含む3戦3勝の成績で2歳チャンピオンに選出されたシェアドビリーフが、年明け早々に蹄を傷め、今季の始動戦が延び延びになるうちに、3月に入ると春全休を宣言。

 G1BCジュヴェナイル2着馬ハヴァナもまた、蹄を傷めてダービー戦線から脱落。

 2歳秋にG2レムゼンSを勝ち、ケンタッキーダービー・フューチャーウェイジャーのプール1とプール2で個別の馬では1番人気になったオナーコードも、今季初戦となった3月12日の一般戦で2着に敗れた後、故障発生で戦線離脱。

 1月25日のG2ホーリーブルSを快勝し、フューチャーウェイジャーのプール3で個別の馬では1番人気となったカイロプリンスも、続くG1フロリダダービーで期待を裏切り4着に敗退。

 主役候補として名前の挙がった馬が、揃いも揃って頼りにならずに片っ端から期待を裏切り、「史上空前の混戦か」との声まで出始めていたのが、今年のケンタッキーダービー戦線であった。

 そこにようやく、救世主のごとく出現したカリフォルニアクロームとは、スティーヴとキャロラインのコバーン夫妻と、ペリーとデニスのマーティン夫妻という、2組のカップルによる自家生産馬で、その名が示すようにカリフォルニア産まれである。

 デビューは昨年4月26日にハリウッドパークで行われたカリフォルニア産馬限定メイドン(AW4.5F)と、仕上がりの早さを見せた同馬。ここは2着に敗れたものの、次走5月17日に同じくハリウッドパークで行われたカリフォルニア産馬限定メイドン(AW4.5F)に出走すると、1番人気に応えて快勝し、初勝利を挙げている。

 続いて、6月15日にハリウッドパークで行われた、出走条件のない特別(AW5.5F)に駒を進めると、ここでは勝ち馬から7馬身以上離れた5着に敗退。次走は再びカリフォルニア産馬限定の特別(AW5.5F)に出走し、ここはきっちりと勝って2勝目を挙げ、カリフォルニア産馬の中では上位の力量を持つ馬であることを実証した。

 だが、強気にG1デルマーフューチュリティ(AW7F)にぶつけた次走は、再び6着に敗退。続く、サンタアニタのカリフォルニア産馬限定特別(d8F)では、初めてのダートに戸惑ったか、弱敵相手だったにも関わらず6着に敗退した。

 ここまでの戦績、6戦2勝。勝ったのはいずれもカリフォルニア産馬限定戦で、出走条件のない競走では入着することすら出来ず、つまりは2歳秋までのカリフォルニアクロームは、その辺にゴロゴロいる「その他大勢」の1頭に過ぎない馬であった。

 何が原因なのかは定かではないが、馬がまさに一変したのは、そこから後のことだ。

 12月22日にハリウッドパークで行われたカリフォルニア産馬限定特別(AW7F)を6.1/4馬身差で完勝すると、1月25日にサンタアニタで行われたカリフォルニア産馬限定特別(d8.5F)も5.1/2馬身差で連勝。次走のG2サンフェリペS(d8.5F)は、2歳時のカリフォルニアクロームが2度挑んでいずれも全く歯が立たなかった「出走条件のないレース」だったが、ここも2着馬に7.1/4馬身差をつける圧勝。77回の歴史を誇るレース史上で2番目の好時計となる1分40秒59をマークし、重賞初制覇を果したのだ。

 こうして迎えた5日のG1サンタアニタダービー(d9F)も、前走G2レベルSを制してここへ臨んでいたホッパーチュニティに5.1/4馬身差をつける完勝。つまりは、昨年12月以降は4連勝で、2着馬に付けた平均着差6馬身以上という、手の付けられない快進撃を見せているのがカリフォルニアクロームなのだ。ケンタッキーダービーの主役の座を、堂々と務めてしかるべき実績を築いたと言って間違いなさそうである。

 このカリフォルニアクローム、話題性にも事欠かない馬だ。

 まず、カリフォルニア産馬がケンタッキーダービーを勝てば、1962年のディサイデッドリー以来、52年振りの快挙となる。

 また、カリフォルニアクロームが現在本拠地としているのは、ロスアラミトス競馬場だ。昨年までクオーターホース専用の競馬場として使用されていたのがロスアラミトスで、ハリウッドパークの閉鎖にともない、サラブレッドの調教と競馬も行なわれるようになった馬場である。すなわち、ロスアラミトスを拠点とする馬によるケンタッキーダービー制覇が実現すれば、これは史上初の快挙となる。

 そして、カリフォルニアクロームを管理するアート・シャーマン調教師は、御年77歳。なんと遡ること59年前、あのスワップスの攻め馬手としてチャーチルダウンズに出向き、見事にケンタッキーダービーを制したのが、当時18歳だったアート・シャーマンであった。その後、騎手になり、調教師となったシャーマンだが、管理馬をケンタッキーダービーに出走させるのは、これが初めてだ。すなわち、シャーマン調教師が出走馬の関係者としてチャーチルダウンズに出向くのは、スワップス以来実に59年振りのことになるのである。

 老ホースマンの遥けき夢がかなうかどうか。ファンとして絶対に目を離せないのが、ケンタッキーダービーにおけるカリフォルニアクロームと言えそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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