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【トレセンお仕事ガイド】専門紙記者の1日に完全密着〜厩舎取材の舞台裏(2)

  • 2014年04月21日(月) 12時00分
■13:00 お昼休憩をはさんで、コメント作成

赤見 次はどんなお仕事をされるんですか?

安里 午前中に取材してきた厩舎のコメントを作成します。14時過ぎにまたトレセンへ出発しますので、それまでの間に、全部は無理でもなるべく多く完了させておいて、最終的な締め切りの木曜15時までに終わるようにします。

おじゃ馬します!

■14:15 トレセン到着、午後の厩舎回りスタート

安里 午後は4厩舎の取材をします。今度は午前中の調教スタンドでの取材とは違って、それぞれの厩舎に指定の時間に行って、囲み取材になります。

■14:30 高野友和厩舎の取材

おじゃ馬します!

赤見 午前中に比べて、トラックマンさんの数が少なくなりますね。

安里 日刊紙と専門紙で動きが違うんですよね。日刊紙は入稿の締め切りがありますから、午後に取材をしていると間に合わないんです。

赤見 取材対象も違ってきますよね?

安里 日刊紙は、全頭じゃなくて重賞や特別に出る馬の取材が中心になりますね。頭数が少ない分、逆に深い話を聞かないといけないですから。ジョッキー、調教師、助手さんや厩務員さんにも聞いてと、いろいろやることがあると思います。

赤見 その分専門紙は、未勝利戦や条件戦の馬まで網羅しないといけない。14厩舎を担当されていて、各厩舎が50頭と考えると、700頭くらいの馬を把握…すごいです。

■15:00 千田輝彦厩舎に「想定表」をお届け

赤見 早速、出来たての想定表がいかされますね。

安里 それぞれの厩舎に、馴染みの記者が届けているんです。

■15:30 吉村圭司厩舎の取材

安里 次は池江泰寿厩舎に行きます。今週の日経賞にオーシャンブルーらが出走しますね。

おじゃ馬します!

■16:15 池江泰寿厩舎の取材

おじゃ馬します!

赤見 安里さんは、池江泰郎厩舎も担当されていたそうですね。

安里 そうですね。その縁で、池江泰寿厩舎も担当になりました。池江泰郎先生には、とてもお世話になりました。本当にいっぱいのことを教えてもらいましたね。ステイゴールドやディープインパクトも取材させてもらいました。全てを見たわけではありませんが、先生のやり方を見ていて、“GIを勝つ仕上げ”があるんだなというのを知りました。

―そして、いよいよ本日最後の取材先、藤岡健一厩舎へ。

■16:40 藤岡健一厩舎の取材

―本日の全取材が完了! 再び会社へ戻ります。

■17:20 帰社、コメント作成

安里 お疲れ様でした。1日雨でしたから疲れたでしょう。ここからは、お昼のつづきと、午後取材のコメントを新聞用に作成していきます。赤見さんも、取材された分を打ち込んでみてください!

赤見 えっ、いいんですか!?

おじゃ馬します!

▲作成したコメントは編集部に送られ、新聞に掲載されます


―コメントは14文字×3行で、重賞やGIは11文字×6行で作成します。

安里 スパスパ打てていて、思い切りがいいですね。センスがありますよ。

赤見 ありがとうございます。でも、これだけ取材でお話を聞けると、書きたいことがたくさんあって、要約するのが難しいですね。聞いたことをいかに短く、いい情報にまとめられるか。

安里 そうです。我が社の場合、平場は3行と決まっているので、いかに中身の濃い話にまとめられるか、ですね。

赤見 これを何頭分入力するんですか?

安里 だいたい取材で聞いてくるのが、平均で80頭くらい。3場開催になると、100頭を超えますね。

おじゃ馬します!

▲完成した紙面、厩舎情報はこうして作られていた!


赤見 いいコメントは書きやすいですが、必ずしもそういう馬ばかりではないですもんね。マイナスな要因のある馬は書き方が難しい…。でも、伝えたいですもんね。たとえば、厩舎の自信度が高くても、安里さんの評価として他の出走馬と比べると厳しいかなという場合は、どうしているんですか?

安里 そういう場合は、たしかに難しいですね。厩舎のコメントはその通りの内容で書かないといけないですからね。だから、紙面上で打つ予想印で「○」とか「△」に評価を落として対応するしかないですね。その意味を分かっていただけたら(笑)。人によっては常に強気なコメント、控えめなコメントをする人がいますし、まずは、取材対象者のタイプを見極めることも大事です。

■19:40 本日の業務終了

赤見 今日は1日ありがとうございました。水曜が一番お忙しいと思うのですが、他の曜日はどんなことをされているのですか?

安里 基本的には月曜火曜が休みなんですが、僕の場合は火曜から金曜までトレセンに行って取材をしています。特に木曜は、想定表が出て変更するだろう馬をもう一度取材します。あと、新聞で載せる予想もします。予想も土曜の予想を木曜の19:30までに、日曜の予想を金曜の13:00までに出します。土曜日曜は競馬場での仕事ですね、レース後に検量前で騎手や調教師の取材をします。

赤見 何レースくらい予想するんですか?

安里 僕は関西の本場とGIですね。

赤見 密着取材させていただいて、新聞に載っている情報がどうやって作られているのかが分かりました。一番感じたのは、厩舎とトラックマンさんとの信頼関係です。関わる人がたくさんいて、立場もそれぞれで、その中でいい関係を築いていける、コミュニケーション能力の高さですよね。だって、こうして見知らぬ私が1日くっついて、厩舎にまで入らせてもらって、それを受け入れていただいたのは、安里さんが築いてきた信頼関係があるからだと思いました。

安里 いえいえ。みんな気さくでいい人ばかりですから。ただ、最初の頃は怒られてばっかりでしたよ。馬との距離感がわからなくて、馬の前を横切ったら激怒されたりとか。まあ、どんな仕事でも新人の頃は絶対に怒られますからね。そこで頑張れるかどうか。そういう経験もしてきて、今となっては取材しやすい環境になっています。

赤見 キャリアが長くなれば、顔見知りの厩務員さんや助手さんが調教師さんになったりして、さらに信頼関係も築きやすいですよね。積み上げてきたキャリアは、厩舎班の財産ですね。

安里 まさにそうなんです。想定班は各自が時間をかけて、厩舎関係者と信頼関係を築いています。厩舎関係者の協力、サポートがなければ絶対に成り立ちません。だから感謝しています。

赤見 最後に、厩舎班のトラックマンとしてどんなポリシーを持たれていますか?

安里 まず第一に、競馬ファンを代表して取材をしなければいけない立場ですし、僕自身、ファンを代表するミーハーな気持ちで思いっきり楽しむこと…ですね(笑)。ある意味、想定班は個人商店の集まりだと思っているんです。各々がそれぞれのスタンスで仕事をしています。なので、僕にしかできない取材、僕にしか聞けない話を聞きたいなと思っています。

おじゃ馬します!

▲赤見「今日は1日お世話になりました!」


おじゃ馬します!

▲完成した『馬サブロー』、トラックマンの取材の賜物です


(次週は美浦編、調教班のトラックマンに密着します!)


■トラックマンたちがこっそり教える現場マル秘情報
『馬サブロー取材班のつぶやき』水曜版
『馬サブロー取材班のつぶやき』木曜版
『馬サブロー取材班のつぶやき』金曜版

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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