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府中2400の鬼(ジャングルポケット)

  • 2014年04月28日(月) 12時00分
名馬



◆左回りに極端に偏った競走成績

 馬に右利き、左利きはあるのか。その昔、JRA競走馬研究所に問い合わせたことがあった。トニービン産駒のGI勝ちが、左回りの東京(府中)コースに偏っていたからである。しかし、答えは否だった。

「馬の場合、右回りと左回りの得手不得手は、脚質や馬場の適性、コースの向き不向きからきています。霊長類はそもそもが左利きで、人間の先祖もはるか昔は左利きでした。ところが、進化の過程で人間だけが右利きへと特化した。つまり動物で右利き、左利きがあるは人間だけなんです」

 日本の競馬場は基本的に楕円形コースとなっている。トニービン産駒は全体にコーナーワークが不器用で、加速が鈍くなるため小回りコースが苦手だった。同じ左回りでも、中京、新潟コースのトニービン産駒の実績は、それほど飛び抜けているわけではない。

 一方、東京コースは広々としており、直線も長く、不器用な馬にとっては競馬がしやすい。脚質的にトニービン産駒は、東京コースが最も実力を発揮しやすかったということなのだろう。トニービンの9世代目として生まれたジャングルポケットが、その象徴的な名馬だった。

 2000年9月、札幌競馬場のデビュー戦、続く重賞の札幌3歳S(現2歳S)を連勝。3戦目に出走したのが、クラシックの登竜門として知られるラジオたんぱ杯3歳S(現ラジオNIKKEI杯2歳S)である。

 ここで2着に敗れるが、勝ったアグネスタキオンは翌年の皐月賞馬。3着のクロフネも芝、ダートで大活躍をし、ジャングルポケットもまた3歳最高峰の日本ダービーを勝っている。史上最もハイレベルなラジオNIKKEI杯2歳Sとして、今も語り草となっているレースで、少なくともここまでは右回りが苦手という印象はなかった。

 しかし年が明けて3歳となり、4戦目、東京コースの共同通信杯でそれまでとはまるで違うレースぶりを見せる。完勝だったのである。そして迎えたクラシック第1弾の皐月賞。ジャングルポケットはアグネスタキオンに次ぐ2番人気に支持された。

 ところが、ゲートが開いた途端、つまずいて大きく出遅れてしまう。中山コースは小回りで直線も短い。不器用なトニービン産駒にとって、致命的な出遅れだった。それでも最後、猛烈な脚で追い込んだが、いかんせん中山コースは最後の直線が短い。届かず3着に終わった。

 その後、皐月賞を勝ったアグネスタキオンが屈腱炎で戦線を離脱。続く東京コースの日本ダービーは、ジャングルポケットが押し出されるかたちで1番人気となった。東京コース巧者ぶりは共同通信杯で実証していたが、確かにジャングルポケットのレースぶりはまたも一変。水を得た魚とはこのことで直線に向くと力強く伸び、2着馬を1馬身半突き放して戴冠のゴールを駆け抜けた。

 しかし、これを境に舞台が他コースに変わると、ジャングルポケットのレースぶりは冴えなくなる。秋を迎えて札幌記念、次いでクラシック第3弾で京都コースの菊花賞に出走したが、ともに1番人気でそれぞれ3着、4着と期待を裏切ってしまった。

 次いで東京コースに戻って出走したのが、古馬(4歳以上の馬)と世界の強豪が集まるジャパンCである。過去に日本産の3歳馬がジャパンCを勝ったことがなく、その点が不安視されていた。だが、ジャングルポケットは春のダービーと同じく別馬のように変身。前2走のだらしないレースぶりが嘘のような快走を見せ、前年の覇者で、歴史的な名ステイヤーのテイエムオペラオーを差し切って勝利した。

 ところが、その後、引退までの4戦は東京コース以外で走って未勝利。結局、勝ったGIは東京コース(左回り)の日本ダービー、ジャパンCのみという偏った競走成績に終わった。後年、ジャングルポケットは種牡馬となっても大成功し、数々の一流馬を送り出したが、産駒たちも“左利き”が多かった。これぞ血統。やっぱり血は争えない。(吉沢譲治)

◆レース詳細
2001年11月25日
第21回 ジャパンC(GI) 東京/芝左 2400m/天候:晴/芝:良

1着 ジャングルポケット 牡3 55 ペリエ
2着 テイエムオペラオー 牡5 57 和田竜二
3着 ナリタトップロード 牡5 57 渡辺薫彦

◆競走馬のプロフィール
ジャングルポケット(牡3)
父:トニービン
母:ダンスチャーマー
騎 手:ペリエ
調教師:渡辺栄(栗東)
馬 主:齊藤四方司
生産牧場:ノーザンファーム

■2001年 ジャパンC

2001年 ジャパンC 映像

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