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勢力分布が明確化してきた英オークス、英ダービー戦線

  • 2014年05月21日(水) 12時00分


◆秋の凱旋門賞を巡るレースにも登場しそうな英ダービー1番人気オーストラリア

 6月6日(金曜日)に行なわれるG1英オークス(芝12F10y)、7日(土曜日)に行なわれるG1英ダービー(芝12F10y)へ向けた前哨戦がほぼ終了し、それぞれの勢力分布が明確化している。

 オークスへ向けた前売りで、ブックメーカー各社が2.5〜2.875倍のオッズで1番人気に推しているのが、J・ゴスデンの管理するタグルーダ(牝3、父シーザスターズ)だ。

 シェイク・ハムダンのシャドウェルによる自家生産馬で、昨年9月にニューマーケットのメイドン(芝8F)でデビュー勝ち。シーズンオフをはさんで5月4日にニューマーケットで行われたLR英プリティポリーS(芝10F)を6馬身差で快勝している。

 母エジーマがLRサヴァベッグS(芝14F)勝ち馬で、近親にG1ゴールドC(芝20F)勝ち馬のエンゼリやエスティメイト、G1ロワイヤルオーク賞(芝3100m)勝ち馬エバディーラらがいるスタミナ豊富なファミリー出身であることから、LR英プリティポリーS後に一気にアンティポスト戦線の最上位に躍り出ることになったものだ。

 各社7〜8倍のオッズで2番人気に推しているのが、愛国のD・ウェルドが管理するターファシャ(牝3、父テオフィロ)である。

 G2ドンカスターC(芝18F)やG2グッドウッドC(芝16F)を制したサドラーズロック、G1愛ダービー(芝12F)2着・G1英ダービー3着のガリレオロックらの半妹にあたる同馬。2歳9月にデビュー2戦目のメイドン(芝7F)で初勝利を挙げた後、G3パークS(芝7F)が3着。シーズンオフを挟んで、今季初戦となった5月14日にナースで行われたG3ブルーウィンドS(芝10F)に出走し、ここを3.1/4馬身差で制して重賞初制覇を果している。

 このターファシャを所有するのは、タグルーダと同じハムダン殿下だ。馬主サイドとしては、2頭を使い分けるという選択肢もあったようだが、ウェルド師が「この馬もぜひオークスへ」と進言。馬主もこれを受け入れ、オークスに向かうことになった。そんなエピソードが新聞紙上で報じられて以降、ターファシャの人気が上昇し、今や単独2番人気まで買い進められている。

 各社8〜9倍のオッズで3番人気に推しているのが、ゴドルフィンのイーティマル(牝3、父シャマーダル)である。

 2歳時の戦績、6戦2勝。未勝利馬の身分で挑んだニューマーケットのG3スウィートソレラS(芝7F)で初勝利を挙げると、続くドンカスターのG2メイヒルS(芝8F)も連勝。続くニューマーケットのG1フィリーズマイル(芝8F)は3着だった。今季序盤はドバイで走り、準重賞UAE1000ギニー(AW1600m)を3.1/4馬身差で、続くG3UAEオークス(AW1900m)を10馬身差で連勝。欧州における初戦となった前走G1英1000ギニー(芝8F)は、勝ち馬ミスフランスから3/4馬身差の3着だった。

 叔母にG1仏オークス(芝2100m)勝ち馬ウェストウィンド、祖母の妹にG1英オークス(芝12F10y)・G1愛ダービー(芝12F)を制したバランチーンがいるファミリーの出身で、もともとオークス向きと見られていた馬である。

 この3頭までがオッズ10倍以下で、ほぼ三つ巴というのが現在の様相となっている。

 ダービーへ向けた前売りで、大本命となっているのがオーストラリア(牡3、父ガリレオ)だ。

 世界4か国で7つのG1を制したウイジャボードの4番仔となる同馬。タタソールズ・オクトーバーセールにて52万5000ドル(当時のレートで約6890万円)でクールモアグループに購入され、A・オブライエン厩舎に入厩。2歳7月にカラのメイドン(芝7F)でデビュー2戦目にして初勝利を挙げると、続くレパーズタウンのG3BCジュヴェナイルターフトライアル(芝8F)を6馬身差で快勝。シーズンオフを挟み、今季初戦となったG1英2000ギニー(芝8F)はナイトオヴサンダーから3/4馬身差の3着だった。

 オーストラリア自身、ダービー馬とオークス馬の配合によって生まれており、もともとダービー向きと見られていた馬だが、ここ2週間ほどの間に行なわれたダービーの前哨戦で、「これは」と思わせる新興勢力の台頭が見られず、現段階で同馬のダービー前売りオッズは1.67倍〜1.83倍。2番人気以下はいずれも10倍以上という、極端な1本被りとなっている。

 そんな情勢ゆえ、2番人気馬は社によって異なっている。

 コーラルがオッズ11倍で、パディーパワーがオッズ12倍で2番人気に推しているのが、ウェスタンヒム(牡3、父ハイチャパラル)だ。

 叔母にG1フィリーズマイル(芝8F)2着馬ファンタジアがいて、3代母がG1チーヴァリーパークS(芝6F)勝ち馬ブルーダスターという血統背景を持つ同馬。タタソールズ・オクトーバーのブック2にて5万ギニー(約656万円)という廉価で購入され、J・ゴスデン厩舎に入厩。2歳12月にケンプトンのメイドン(AW8F)でデビュー勝ちを飾ると、今季初戦となったニューバリーの条件戦(芝10F6y)も連勝。続いて4月25日にサンダウンで行われたG3クラシックトライアルS(芝10F7y)に駒を進めた同馬は、ここを1.3/4馬身差で制して3連勝。重賞初制覇を果している。

 ウィリアムヒルがオッズ13倍で2番人気に推しているのが、オーストラリアと同厩のジェフリーチョーサー(牡3、父モンジュー)だ。

 半兄にG1デューハーストS(芝7F)、G1仏2000ギニー(芝1600m)、G1仏ダービー(芝2100m)、G1セントジェームスパレスS(芝8F)と4つのG1を制しているシャマーダル、叔父にG1ドバイワールドC(d2000m)やG1スティーヴンフォスターS(d9F)を制したストリートクライがいる同馬。

 2歳7月にレパーズタウンのメイドン(芝8F)でデビュー勝ち。続くカラのG2ベレスフォードS(芝8F)も連勝して重賞初制覇。シーズンオフを挟み、今季初戦となった5月11日にレパーズタウンで行われたG3愛ダービートライアルS(芝10F)が3着と、3戦目にして初黒星を喫している。

 ラドブロークスは、そのジェフリーチョーサーに、ファッシネイティングロックとキングストンヒルを加えた3頭を、オッズ13倍で横並びの2番人気としている。

 愛国のD・ウェルドが管理するファッシネイティングロック(牡3、父ファストネットロック)。ニュータウンアナースタッドによる自家生産馬で、母の全兄にドイツの準重賞(芝1900m)勝ち馬ユーロファルコンがいる。

 2歳時の戦績、1戦0勝。今季初戦となったレパーズタウンのメイドン(芝10F)で初勝利を挙げると、続くナーヴァンのG3バリーサックスS(芝10F)も連勝して重賞初制覇。1番人気に推された、5月11日にレパーズタウンで行われたG3愛ダービートライアルS(芝10F)では、エバノーラン(牡3、父オアシスドリーム)の2着で入線。ゴール前で勝ち馬に進路を妨害されたとして、繰り上がり優勝となり、記録上は今季ここまで負け知らずの3連勝となった。

 一方、G3フロール賞(芝2100m)勝ち馬オウダシューズの5番仔にあたるのがキングストンヒル(牡3、父マスタークラフツマン)だ。

 タタソールズ・オクトーバーセールのブック2にて7万ギニー(約919万円)で購買され、英国ニューマーケットのR・ヴァリアン厩舎に入厩。2歳9月にニューバリーのメイドン(芝7F)でデビュー勝ち。続くニューマーケットのG3オータムS(芝8F)を連勝して重賞初制覇。続いて駒を進めたドンカスターのG1レイシングポストトロフィー(芝8F)も制し、3連勝を飾るとともにG1初制覇を果した。

 今季初戦となったG1英2000ギニーは8着に敗れたが、もともとダービー向きと見られていた馬で、エプソムでの巻き返しが期待されている。

 オーストラリアがどんな競馬を見せるかによって、秋の凱旋門賞を巡る戦線にも動きが出るだけに、日本の競馬ファンの皆様にもぜひご注目いただきたい一戦と言えそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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