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ベテラン大活躍の裏で

  • 2014年05月23日(金) 18時00分


◆騎手の世代交代がうまく進んでいない地方競馬

 昨年、地方競馬の全国騎手リーディングで頂点に立ったのは54歳の川原正一騎手(今年3月で55歳になった)だったが、3位に田中学騎手、4位に木村健騎手と、トップ4のうち3人を兵庫所属騎手が占めた。そして今年の全国リーディングでは、なんとその兵庫の3名が順番を入れ替えてトップ3を独占している。

 5月22日現在の成績(地方競馬のみ、以下同)で、田中学騎手110勝、木村健騎手108勝、川原正一騎手97勝。4位は高知の赤岡修次騎手で83勝だから、1、2位の争いは熾烈だが、兵庫トップ3の牙城がゆらぐことはしばらくなさそうだ。

 地方競馬は競馬場ごとに開催日数が異なるため、単純に勝利数のみで評価するわけにはいかないものの、それにしても同じ地区の3名が全国リーディングのトップ3を独占していることは単純にスゴイと思うし、その3名が、田中40歳、木村38歳、川原55歳と、いずれもベテランであることは、さらにスゴイことだと思う。

 がしかし、このことに対して違う見方もあることにハッとさせられた。

 違う見方をしていたのは、前々回のこのコラムで紹介した、兵庫県騎手会の広報事業部代表の三野孝徳さんだ。ベテランに勝ち星が集中しているということは、裏を返せば若手騎手が勝っていないということ。若者もっとガンバレと。直接話を聞いたわけではないが、ネット上でそんなことを書かれていた。

 たしかに長期的な見方をすれば、次の世代が育っていないというのは、不安なことではある。なるほどそういう視点で見てみると、最近地方競馬では全国的に目立った若手騎手が出てきていない。

 リーディングの20位(ばんえいを除く)に入っている20代の騎手を見ると、最上位が永森大智騎手(27・高知)で11位。以下、15位に山崎誠士騎手(29・川崎)、20位に柿原翔騎手(29・名古屋)とわずか3名。逆に50代の騎手も、川原騎手、的場騎手、それに17位の戸部尚実騎手(50・名古屋)と3名がランクインしている。

 ちなみに中央のリーディング(5月18日現在、中央のみの成績)を見てみると、2位・川田将雅騎手(28)、4位・浜中俊騎手(25)、11位・菱田裕二騎手(21)、13位・三浦皇成騎手(24)、18位・松山弘平騎手(24)と、トップ20の中に20代が5名、しかも地方のトップ20にはひとりもいない20代前半が3名もいる。

 そして20位までの平均年齢は、中央が35.2歳なのに対し、地方(ばんえいは除く)は38.5歳。中央の競馬学校が3年なのに対し、地方競馬の騎手学校(地方競馬教養センター)が2年であることを考えると、地方の騎手は中央の騎手よりさらに若いうちから活躍してもいいはずだ。

 こうした数字で見ると、地方競馬では騎手の世代交代がうまく進んでいないことが、近い将来問題になってくる可能性も考えられる。

 たしかに的場文男騎手の活躍や、兵庫のベテラン3名が全国リーディングの上位を占めていることは賞賛されるべきことではあるのだが、競馬の将来を考えれば、それと同じだけ「若い騎手もっとガンバレ」ということを訴えなければいけないのではないかと、あらためて考えさせられた。

 若手騎手自身が努力するのはもちろんだが、調教師や馬主など厩舎関係者全体で取り組んでいくべき課題でもある。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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