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サウンドガガが逃げ切り重賞初制覇/スパーキングレディーカップ・川崎

  • 2014年07月03日(木) 18時00分


「経験の差」が出る形となった結末

 関東オークスを圧勝して断然人気の支持を受けたエスメラルディーナが7着に沈み、重賞初挑戦の2頭がゴール前叩き合ってという決着は、ひとことで経験の差だろう。

 エスメラルディーナは、雨で水の浮く特異な馬場状態だったとはいえ、関東オークスで川崎コースは経験済み。それでいて今回は適距離と思われる距離短縮ならさらに力を発揮するだろうと人気になった。僕の予想でも、実はサウンドガガとどっちを本命にするか迷ったのだが(負け惜しみです、はい)、最終的には距離短縮という条件的によくなることで最終的にエスメラルディーナを上にとった。

 相手は中央のほか3頭が拮抗。単勝では、カチューシャ、サウンドガガ、アクティビューティという順だったが、地方競馬の場合は単複の票数があまり多くないことから、単勝オッズは必ずしも人気を反映していないということもあり、馬連、馬単、3連勝式のオッズで見ると、エスメラルディーナ中心は間違いないが、カチューシャとアクティビューティが2、3番人気で拮抗、少し離れてサウンドガガが4番人気という順だった。サウンドガガの4番人気は、これまでに勝ったのがダート1200mに限られるという距離不安に加え、地方、左回り、ナイターなど未経験の条件が多数あり、そうしたことも含めてのものと思われる。

 一見、前走より条件がよくなったと思われたエスメラルディーナだが、いざレースが始まってみると、突きつけられたのは、スプリンターの上にスタートダッシュもいいサウンドガガによるハイペースという厳しい条件だった。

 関東オークスは、この回顧でも触れたように、ほとんどのレースでスローになる川崎2100mの中でも超スロー。それゆえ、距離が長いと思われたエスメラルディーナも対応できての圧勝となった。対して今回は、「普通にスタートを切れば抜けて速いだろうなと思っていたので、中途半端なポジションよりは先手を取りきったほうが折り合いもつくかなと思って迷いはなかったです」という武豊騎手のサウンドガガが逃げたペースは、勢いのついた2Fめに10秒6があり、1000mの通過が60秒7というもの。過去10年のスパーキングレディーCで、1000m通過が60秒台というのは何度かあるが、やはり速い部類に入る。この流れは、今回が古馬と初対戦というエスメラルディーナにはいかにも厳しいものだった。

 牝馬のダートグレードのマイル戦としてはやや速い流れとなったが、対して普段はもっと厳しいペースを経験しているサウンドガガにとっては逆に楽なペースだった。1200m戦でペースが速いのは当然だが、たとえば8着に負けている昨年4月の1400m戦、高瀬川Sでは、800m通過が46秒8、1000m通過が58秒8というペースを好位で追走していた。このペースで末をなくしてしまっても、1000mが61秒近いペースのマイル戦なら最後まで粘れても不思議はない。

 一般に、同じダートでも中央より地方のほうが流れが緩く、それゆえ中央ではもたない距離でも、地方が舞台ならもってしまうというパターンはよくある。それがまさに、関東オークスでのエスメラルディーナであり、今回のサウンドガガだったと考えられる。

 アクティビューティが差のある5着に沈んだのは、普段は4〜5番手を追走しているこの馬が、今回はエスメラルディーナと同じような位置から速めのペースを追いかけたため。前走マリーンCでは、逃げたサマリーズの2番手を追走してワイルドフラッパーに7馬身差の2着だったが、このときは1000m通過が62秒2とゆったりした流れだった。そもそも今回は3カ月の休み明けでプラス15キロという太め残りという理由もあったかもしれない。

 ゴール前クビ差まで追い詰めたのがカチューシャだが、こちらはまさにマイルが適距離で、中央のほか3頭を前に見る4番手を追走。この路線で2着が多いアクティビューティが普段しているレースを今回したのがこの馬だった。このレースの予想でも書いたとおり、牝馬限定のダートグレードなら、中央の準オープン勝ち負けのレベルで十分に通用する。

 地方馬では7番人気のマイネエレーナが3着、6番人気のカイカヨソウが4着に入った。地方競馬視点では好走ともいえるが、2着のカチューシャから3着のマイネエレーナは7馬身の差がついた。これはやはりエスメラルディーナとアクティビューティがハイペースを追いかけてバテたのに助けられての、漁夫の利的な着順といってよさそう。たとえばカイカヨソウの今回の走破タイム1分41秒3は、川崎のマイル戦で地方限定重賞のスパーキングサマーCや川崎マイラーズの勝ちタイムと比較しても劣るもの。4月のマリーンCでの3着、今回の4着は、着順だけを見れば好走ともいえるが、活躍していた3歳時の調子にはまだ戻っていないと見たほうがよさそうだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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