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「いつも馬の気持ちに向き合って乗るようにしている」横山典弘騎手にインタビュー[第2回]

  • 2014年07月08日(火) 18時00分
競馬の職人




 先週末は花の12期生が大活躍。やっぱり嬉しいですね。高橋亮調教師の初勝利と初重賞「CBC賞」勝利、ともに「トーホウアマポーラ」と福永騎手のコンビでつかんでくれました。

 手ごたえを感じ取ったユーイチが「トーホウアマポーラ」と二人三脚でサマースプリントからスプリント王を目指し「G1へ行こうぜ」と亮(調教師)と手を取り合ったそうです。その瞬間を見たかったな。

 その後またまたドラマがあったんです。12レースは「サトノデプロマット」で和田騎手が勝ち、高橋亮調教師の初重賞勝利に花を添えていました。今年10勝目が初重賞勝利そして和田が11勝目に貢献。日刊スポーツ紙では懐かしい12期生の卒業写真があり、若き頃の純ちゃんや僕が映っているのを発見。これからもどんどんこんな光景を見たいですよ。いろんなドラマがあるから競馬は面白い。

 そしてもうひとつの大きなドラマ。強かった!強いゴールドを見せてくれた宝塚記念。ゴールドシップの連覇達成は圧巻でした。

 人馬一体とよく言いますが、人馬一体の大切さが証明されたレースだったと思います。人が馬を信頼し、馬が人を信頼し、調教師が騎手を信頼し・・・・とすべての人たちが信頼することでつながっているなと感じました。

 レース後のお忙しい中、横山典弘騎手にお聞きしました。

常石 典さんおめでとうございます。

横山 あーありがとう!俺じゃなくてゴールドシップがよく頑張ってくれました。俺はさ「よろしくお願いします」と言っていただけ。馬が強かった。とっても賢い馬だから馬の強さに負けたらだめだからな。その強さに負けないように強さを理解して、その強さになめられないように自分をしっかりもって乗ってきたことが良かったかな。

常石 輪乗りのときもずっとシップと会話していましたよね。前に今浪厩務員にゴールドシップのことを聞いた時、あの馬が負ける姿を想像したことがない、と言っていました。それだけ信頼しているってことなんですよね。とってもやんちゃで手がかかるけど、かわいいといってました。今日も尻っぱねしてましたね。

競馬の職人

ゴールドシップと今浪厩務員



横山 そうだね。人が馬を信頼し、馬が人を信頼するとみんなつながってくるよな。

常石 お忙しいところありがとうございました。

その後、お祝いやインタビュー攻めに会う典さんでした。

***

実はフェブラリーSの時、東京競馬場で典さんに取材をさせていただき、いろいろお聞きしていたのでそのときの秘話を報告します。

常石 いつから馬に乗り始めたんですか?

横山 競馬学校へ入ってから乗ったんだよ。

常石 お父さんやお兄さん・叔父さんなど身内に競馬関係者がいっぱいおられるでしょう。だから幼いころから乗馬されてるのかなと思ってました。

横山 なんで今日は、東京なんだよ(笑)。

常石 典さんに取材お願いしたくて・・・・(笑)失礼しました。昨日、僕の持つ障害のシンポジウムがあってそこにゲストでしゃべらせていただきました。

横山 それじゃー俺はたまたまか・・・?(笑)

常石 いえいえそんな事はないです。(あせり気味)

 是非ゆっくりお話を聞きたいと思っていたのでチャンスをいただいてありがとうございます。

横山 とくに話すことないないんだけどな。(笑)

常石 いつも、大胆な騎乗をされるでしょう。

横山 そうかな。馬にあわせているだけだよ。馬の動きの邪魔をしないだけ。

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トーセンセカイオーに騎乗している横山典弘騎手



常石 この前の京都記念での「デスペラード」は、後ろから行くことが多い馬なのに逃げましたよね。あの時は、厩務員さんも「おっ、逃げた」とちょっとびっくりしていました。

横山 あの時だけ、馬が前に行きたがったので、馬の動きの邪魔をしなかっただけ。それが、逃げにつながったということ。馬の邪魔をしない。それだけなんだよ。

 馬が走るんだからその背中に乗る俺らが邪魔をしたらだめだよな。人と同じで、いいことをした時は、思いっきり褒める。逆に悪いことをした時は、鞭をいれて叱る、そういったけじめをつけることが大事だと思う。

常石 そうですね。それがわかっていても実践するのは、難しいです。何もやってないのに馬を褒めてしまうと、馬になめられてしまったり周りの評価が悪くなって乗せてもらえなかったことありました。

横山 そこらは上手くやらないと。関係者が納得いくような乗り方をしないといけないよ。

常石 典さんが調教した後は、馬が疲れていることがあるって聞いたことあるんですが、それについてどうですか?

横山 普通に乗っているけどな。調教もレースも同じスタイルで乗る。ひとつ違うのは、調教はゲートがないこと、相手がいないことかな。

常石 目いっぱい追って疲れてるけどすぐに回復しレースではしっかり走る。いっぱいいっぱいの乗り方は思っていても中々できないです。

横山 いつも真剣勝負だし、馬の持つ癖や能力を早くみつけること。まずは、跨った瞬間に感じることってあるだろ。

常石 背中で感じるといいますよね。今、僕は乗馬に挑戦しているんですがなかなか上手く座れなくて困っています。どうすればいいですか?

横山 (笑みを浮かべながら)・・・言うことないね。自分で感じるまで探ること。乗馬は良いから頑張って!(笑)

常石 息子の和生騎手から相談とか、お二人で競馬談義とかされますか?

横山 それはあまりないね。好きで自分で選んでやっているんだから頑張って欲しい。楽しみにしている。親子対決もやりたいよな。

常石 名馬にも沢山乗ってこられ重賞も数え切れないくらいに勝っていますが、どんな馬が好きですか?

横山 カンパニーで勝った時、「人間の想像を超えた馬」と出会った、と思ったね。幹夫(松永調教師)の開業の時アグネススピリッツで初勝利をプレゼントしたけど、そういう馬はやはり印象に残ってるかな。同期だから嬉しいよな。

常石 僕の同期、高橋亮調教師もユーイチで初勝利しましたけど、僕も嬉しかったです。

横山 人がてこずるような馬に乗るのが楽しい。意思疎通していけると満足感が出るからな。あとは、この仕事は危険と隣り合わせだから毎回無事に終わって欲しいと思うな。

常石 いつもファンの声援にも応えてくれていますがメッセージをお願いします。

横山 人だけではなく馬という偉大な生き物と一緒に命をかけて戦っているスポーツを見て楽しんで欲しい。みんなそれぞれの分野で努力している。俺はいつも馬の気持ちに正直に向き合って乗るようにしている。馬の活躍を見てください。

常石 長い時間ありがとうございました。

***

典さんのこだわりを持ってそつなく全身全霊で馬を追うスタイルは抜群に上手いです。目いっぱい追われている馬でもすぐに回復しレースでも活躍している。典さん流儀は、真似できないスタイルです。ずっと追いかけて行きたいと思います。つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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