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【特別企画】ショウナン国本哲秀氏(1)『必ずしも億の馬が走るわけではない』

  • 2020年07月13日(月) 15時00分
「セレクトセール2020」にて、1歳馬セール史上最高額の5億1000万円でシーヴの2019(牡)を落札した“ショウナン”の冠名でおなじみの国本哲秀オーナー。馬主哲学や幼駒の見方を語ったロングインタビューを再掲載致します。本記事は2014年の公開記事となります。予めご了承ください。


ショウナン企画

▲馬主歴28年、“ショウナン”国本哲秀オーナー

今年のニュージーランドTではアチーヴとワダチがワンツーを決め、青葉賞では10番人気ラグーンが大金星。近年、国本哲秀率いる“ショウナン軍団”の勢いが目覚ましい。いち競馬ファンから馬主資格を取得して28年。“初勝利までに6年半”という不遇の時代を経て、いかにして成功のきっかけをつかんだのか。馬選びのポイントからセリの信念、格差が広がり続ける生産界への提言まで、国本哲秀の競馬哲学に迫る。(取材・文:不破由妃子)

──1986年に中央競馬の馬主資格を取得されて、今年で28年目を迎えられました。そもそも、競馬にご興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?

国本 35年くらい前かなぁ、タニノハローモアとかタケシバオーが活躍しているころ、競馬好きな友達に誘われたのがきっかけでね。しばらくは一緒に競馬場に行ってたんだけど、そのうちに一人でも行くようになって。馬券を買うお金もロクに持ってなかった時代、僕の競馬人生はみなさんと同じで、普通に馬券を買ういち競馬ファンとして始まったんですよ。

──そうなんですね。いつか馬主の資格を取ろうとは思っていらっしゃったんですか?

国本 そういう夢はありましたね。当時、ラジオたんぱのアナウンサーだった長岡一也さんとお付き合いをさせてもらっていたんだけど、彼がある日、「国本さん、馬主にならないか?」って言うんですよ。当時も確かに会社を経営してはいましたけど、経済的にも余裕がなかったから、「馬主なんてとんでもないよ」って答えたんです。そうしたら彼が、「資格を与えるか与えないかは競馬会が決めることだから、まずは申請してみれば?」って。

──馬券ファンとしてスタートしてから、10年と経たずに夢を叶えられたんですね。

国本 そういうことになりますね。でも、なにしろ普通の競馬ファンでしたからね。馬の見方自体、全然わからなかった。そのくせ、ダービーですぐに勝てるんじゃないかと思っていましたよ(笑)。

──でも実際は、初出走(テーシーロング)から初勝利(ショウナングレイス)まで、ずいぶんご苦労されたんですよね。

国本 ショウナングレイスで初勝利を挙げるまでに6年半もかかりましたよ。当時、馬選びはすべて調教師に任せていて、グレイスをセリで買ったときに大久保洋吉先生が、「国本さん、この馬は競走半分、繁殖半分だよ」と。当時はその意味すらわからなかったんだけど、周りからは「ひょっとしたらこの馬、走るかもしれないよ」と言われてね。ちなみに、最初に大久保先生を紹介してくれたのも長岡さんなんですよ。

──そうだったんですね。3歳春の未出走戦でデビューしたグレイスですが、その初戦と次走のわらび賞(3歳500万下)を連勝したんですよね。(※馬齢は現表記を用いています)

国本 そうです。当時4歳の春にレース中に鞍ズレを起こして、ちょっとケガをしてしまってね。それで繁殖に上がったんだけど、何頭目かに何もわからないまま種付けしたのがサクラバクシンオー。それで生まれたのがショウナンカンプですよ。

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▲高松宮記念優勝時のショウナンカンプ


──記念すべき初勝利の馬から初めてのGI馬が生まれるなんて、それだけでドラマですよね。

国本 本当にねぇ。まさかあんなに走るとは思わなかったから、最初はダートを使っていて、準オープンまでいったんですよ。でも、あるときに「芝を使ってよ」とお願いして、山城Sを使うことになって。藤田くんに乗ってもらったんだけど、跨った瞬間、彼が「オーナー、この馬ちょっと違うよ」って言ったんですよ。

──初めての芝にも関わらず、すんなり逃げて2馬身半差の楽勝。なんといっても、2着があのビリーヴでしたからね。

国本 強かったね。上がってきたときに藤田くんが僕に、「オーナー、お願いがあるんですけど」と。「この馬で高松宮記念に行きたい」と言うんですよ。普通、GIに向かうとなったら、GIII、GIIと段階を踏んでいくものですが、カンプは次走のオーシャンS(1着・オープン特別当時)から高松宮記念にいって、いきなり勝ってしまったんですからね。

──しかも3馬身半差の圧勝でしたものね。でも、当時はまだ、オーナー自ら馬を選ぶことはされていなかった時期であったと。

国本 そうですね。まぁ北海道に行ったりして、どうやって馬を見たらいいのか、勉強はしていましたけどね。

──馬の見方について、どなたかにご教授を受けられたのですか?

国本 いや、独学ですね。なぜなら、“いい馬”というのは、誰が見ても“いい馬”なんですよ。調教師が10人いたら、10人がいい馬だと口を揃えるでしょう。そこからはもう、好みの問題だからね。たとえばセレクトセールで億の値が付いた馬が絶対に走るかといったら、決してそんなことはない。それはなぜ? って思ったんですよ。

──確かにそうですね。デビューすらできない馬もいますから。

国本 そうでしょう? だから僕は、北海道に年に10回くらい、海外のセールにも年に2回くらい足を運んで、じっくりと馬を見るようになったんです。馬の見方については、我ながらかなり勉強したと思います。

──その結果、どういったところを重視されるようになったのですか?

国本 僕はまず、馬を歩かせてみます。そのときに、腰からグッと入る歩き方、わかりやすくいうとモデルさんのような歩き方をする馬がいるんだけど、大抵の人はそういう馬を嫌うんですよね。専門用語では、「緩い」とか「甘い」とか表現されるんだけど、僕は「緩い」と「甘い」は大違いだと思っていて、それが「緩い」のならいずれパンとしてくる可能性があるでしょう?

 だから、自分で「緩い」と判断すれば、僕はそういう馬を好んで買うんです。なんていうのかなぁ、いわゆる忍び足っていうやつですよ。歩いたときに蹄が返るでしょう? そのときに、蹄の裏の蹄線から見えるくらい、ズッズッと柔らかく歩く馬がいいんですよ。(第2回につづく、文中敬称略)

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