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「一大事とは今日只今の心なり」をダービーで実践した名牝ウオッカ

  • 2014年10月30日(木) 12時00分


「一大事とは今日只今の心なり」を実践した事で菊を制したトーホウジャッカル

 出来るかどうか分からなくとも、出来ると思って努力してみろと励まされたことがあった。江戸初期の高僧はこれを「一大事とは今日只今の心なり」という言葉で述べている。なにごとも、志を持たなければ成熟する筈はない。志を持つ、まず目標を設定することなのだが、それだけではなく、実現させる努力、つまり行動を起こさなければならない。もちろん、努力する方向を誤ったのでは、せっかくの意欲が空回りに終わってしまうから気をつけねばならないのだが、全ては「一大事とは今日只今の心なり」から始まる。

 菊花賞を勝ったトーホウジャッカルは、今後の糧になる筈と格上挑戦した神戸新聞杯で3着に入り、権利を得たことで本番にのぞんでいた。この夏、気難しい一面を見せなくなり、ようやく素質開花を感じさせていたが、菊花賞出走には追加登録をする必要があった。2歳夏に体調を崩して競走馬になれるかさえ危ぶまれ、クラシック登録を見送られていたのだ。条件級の身でトライアルに挑戦したこと、200万円の追加登録料を払って本番に臨んだこと、この2つの決意こそ「一大事とは今日只今の心なり」を実践した行為と言えた。底知れぬポテンシャルを持っているのだからやってみようという意欲が、現実の成果につながったのだから、「どこまで成長してくれるか楽しみ」と語った酒井騎手の気持ちが理解できる。追加登録制度は1992年度のクラシックから実施されていて、菊花賞ではヒシミラクル以来で2頭目、五大クラシック全体では6頭目になる。トーホウジャッカルの菊花賞レコード勝ちには、陣営の並々ならぬ決意があったことを記憶していきたい。

 秋の天皇賞史上に残る名勝負のひとつに、4歳牝馬ウオッカがわずか2cmの差で同世代牝馬のダイワスカーレットを下した2008年の激戦が思い出される。

2cm差の大激戦! ウオッカvsダイワスカーレット

 このウオッカもまた、「一大事とは今日只今の心なり」をダービーで実践した名牝だった。牝馬のダービー制覇、これはインパクトがあったが、今週はなにがあるだろう。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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