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大野拓弥騎手(2)『国内スプリント王スノードラゴン、いざ香港へ!』

  • 2014年11月10日(月) 12時00分
おじゃ馬します!

▲香港スプリントに挑戦するスノードラゴン、大野騎手の手応えは?!


12月14日に行われる香港国際競走。スプリンターズSを制し、今まさに充実期を迎えたスノードラゴンは、もっとも難関と言われる香港スプリントに挑戦します。このレースを日本馬で初めて制したのがロードカナロア。カナロア以来の快挙となるか、注目される戦いです。今週は香港に向けての意気込み、そして、GIを勝つまでに10年、重賞を勝つまでに7年かかったという大野騎手のこれまでを振り返ります。(Part1のつづき、取材:赤見千尋)

香港スプリントのレース特徴は合うと思います


赤見 国内スプリント王に輝いたスノードラゴンですが、今後さらにすごい目標があるということで!

大野 はい。香港スプリントを目指していこう、ということになっています。

赤見 それもまたすごいことですよね。行く予定だと聞いたのはいつ頃ですか? スプリンターズSの後?

大野 いや、実はレースの前に「香港を使うから」ということは言われていたんです。ただ、そうは言っても、もしもスプリンターズSの結果がひどかったら、僕はもう乗れないかなっていう思いもありましたので。今回勝てて、僕も行かせてもらえることになりました。

赤見 香港で騎乗というのは、どんな気持ちですか?

大野 すごく楽しみです。僕はまだ海外で乗ったことがないので。その中でも国際GIに乗せていただけるというのは、すごくうれしいです。当日は香港マイルとかヴァーズとかいろいろなGIがありますが、特にスプリントが強いイメージがあります。ただ、時計はほどよくかかっていますので、そういう意味ではスノードラゴンに向くと思います。どこまでやれるのか、楽しみですね。わくわくしています。

赤見 スノードラゴンは今も厩舎に?

大野 はい。厩舎で調整しています。スプリンターズSの後も、会いに行ってます。

赤見 何か会話はしました?

大野 えっと、そうですね……、「勝たせてくれてありがとう」って(照笑)。

赤見 なんで照れてるんですか(笑)。それに対して反応は?

大野 いや、あの、穏やかな反応を(笑)。馬房でも本当に穏やかな仔で、結構人懐っこいんです。手を出したら舐めてくれるような。落ち着きのあるタイプなので、初めての海外も大丈夫だと思うんですけどね。特に心配なく、レースにも向かえるんじゃないかなと思います。

赤見 大野騎手にとっても、また一歩飛躍のチャンスになりそうですね。スプリンターズSが、ご自身のデビュー10年目でつかんだタイトルだったわけですけど。

大野 そうですね。重賞を勝つまでにも7年かかりましたから。結構ハナ差で逃したことも多かったんですよ。それで悔しいのはあったんですが、それだけ際どいレースもあるということは、どこかで勝てるチャンスも来るかなというのはあったんですけど。

赤見 初重賞勝ちが、2011年の中日新聞杯。11番人気のコスモファントムでした。

大野 あの時は本当にうれしかったですね。7年かかりましたが、ようやく勝ち切れて、初めてタイトルを取れて。

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▲11番人気で決めた自身の初重賞勝利、「穴男」の本領が発揮された


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▲ついにタイトルを手にして感慨深げな大野騎手


赤見 それまでの成績も、20勝とかコンスタントにあげられていましたし、本当に重賞もいつ勝ってもおかしくなかったんじゃないかなと思うんですけど、そこで勝てたのはご自身の中で何か変化があったんですか?

大野 いやいや、ないです。まぁでも、その年はちょうど勢いもあったかなと思うんです。乗り鞍も増え出した頃で、いい馬にも乗せてもらえるようになって。

赤見 翌年はさらに乗り鞍、勝ち星ともに増えましたもんね。重賞もトランスワープで函館記念と新潟記念を勝利。さっきのコスモファントムは乗り替わりでの騎乗でしたが、トランスワープは一緒に上がってきたという感じじゃないですか?

大野 そうですね。1000万下の時から乗せてもらっていましたし、攻め馬もつきっきりの状態でやっていました。攻め馬つきっきりってなかなかないですし、本当に貴重な経験で。それで重賞連勝して、サマー2000シリーズのチャンピオンにもなって。脚元のこともありましたし、本当に難しいところもあったんですけど、大きな経験をさせてもらった馬ですね。

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▲共に成長してきたというトランスワープ、写真は新潟記念優勝時


赤見 勝ち取ったという感じですよね。また、どちらのレースも伏兵という立場での勝利で。

大野 そうですね。重賞で初めて1番人気になったのは、インカンテーションのレパードSだと思います。人気で結果を出せて、また違ったものを味わえましたね。

赤見 このレースもすごく良いレースでしたよね。人気で競馬に乗る時と、人気薄で競馬に乗る時って、組み立て方に何か違いはありますか?

大野 う〜ん、そこはあまり変えないように心掛けています。どの馬でも同じようにするようにしています。まぁ、それが悪いふうに出てしまう時もありますけどね。人気の場合は特に、納得してもらえるレースをしないといけないのも事実なので。

赤見 負けても納得の競馬ということですよね?

大野 そうです。人気馬だと、そういう葛藤みたいなものはありますね。

赤見 自分の馬の人気は見ますか? 結構みんなパドックの電光掲示板で見てるじゃないですか。「えっ、そんなに人気なの?」って感じの背中をしている人を見かけます(笑)。

大野 それはよく聞きますよね(笑)。僕も、前までは見てました。ただ、ファンの人の人気と僕らの中での感じ方は、多分また違うと思うので。あんまりリンクしないところもありますから、最近はあんまり意識しないようにしています。さすがにダントツの1番人気の時とかは、新聞を見ていて目に入っちゃうこともありますけど、普段はそんなに意識しないです。

赤見 じゃあスノードラゴンの時も、まさか13番人気とは?

大野 びっくりしました。さすがにもうちょっと人気あると思っていましたけど(苦笑)。

赤見 高松宮記念2着ですからね。大外枠を気にした人も多かったんでしょうけど。今回のスノードラゴンもそうですけど、大野騎手は人気薄でドカンと来ますよね。馬券ファンには「穴男」って人気があるようで。「穴男」の異名はどう感じていますか?

大野 そうなんですか!? 自分ではそういう意識はしていないんですけど、うれしいですよね。

赤見 単勝万馬券量産の大野騎手。次回はそのあたりを掘り下げて聞いていきたいと思います!(つづく)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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