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ダート牝馬重賞の充実を

  • 2014年11月21日(金) 18時00分


◆空白のある牝馬路線

 2015年のダートグレード日程と、平成27年度の南関東の重賞日程が発表になった。ダートグレードではJBCの開催場が変わる以外に大きな変更はなく、南関東の重賞では、しらさぎ賞の条件が、4歳以上牝馬、地方交流重賞に変わった(これまでは3歳以上牝馬、南関東限定)のみ。これほど変更点が少ないこともめずらしいのではないだろうか。

 ところで最近気になっているのが、12月1週目に行われている牝馬のJpnIII、クイーン賞の位置付けだ。JBCレディスクラシックという牝馬がダートで目指す唯一無二の頂点のレースができたのが2011年で、クイーン賞はその1カ月後。それゆえ中心的なメンバーが休養や引退などで不在となり、クイーン賞はちょっと気の抜けたようなメンバーになってしまっているような感じがある。苦戦する地方所属馬の立場としては、中央勢が手薄になってタイトルを獲るチャンスという見方もできなくはないのだが。

 地方競馬ではグランダム・ジャパンのシリーズが盛り上がるなど、牝馬路線がだいぶ充実してきたが、牝馬の交流重賞はまだまだ十分とはいえない。昨年から8月のブリーダーズゴールドCが牝馬限定戦となり、秋のJBCへと続く道筋ができたが、4月上旬のマリーンCから、7月のスパーキングレディーCまではまだぽっかりと空いた時期がある。中央では牝馬限定のダート重賞は行われておらず、この路線で活躍する陣営からは、この初夏の時期、それからブリーダーズゴールドCが牝馬限定になる以前は夏の時期も、「しばらく使えるレースがないから……」というコメントをよく聞くことがあり、休養に入ったり、仕方なく牡馬との対戦や芝のレースを使うということもめずらしくなかった。

 12月のクイーン賞が微妙な位置付けになってしまう現状であれば、いっそのこと6月中旬の船橋開催に移動すればどうだろう。現在は京成盃グランドマイラーズが行われている開催だ。これによってダート牝馬古馬路線は、4月のマリーンCからは約2カ月の空きはあるものの、その後は7月のスパーキングレディーC、8月のブリーダーズゴールドC、そして秋へとつながっていくことになる。

 もしくは5月1週目の開催に移すという手もある。船橋のこの開催は、例年、大型連休と重なることが多く、JpnIのかしわ記念、3歳馬による南関東限定の東京湾Cと、重賞が2つ組まれているが、ファンの来場も多い開催ゆえ、ここで牝馬限定のクイーン賞も実施し、併せて女性ファンの来場を促すなどして盛り上げるというのはどうだろう。ただひとつ悩ましいのは、冒頭でも触れたとおり、その1週前に行われるしらさぎ賞が地方全国交流になったことで、地方馬はメンバーが分散してしまうという可能性はあるのだが。

 日本での軽種馬の生産頭数は年間7000頭を割るまでになってしまったが、それでも、アメリカ、オーストラリア、アルゼンチン、アイルランドに次ぐ世界第5位(2012年統計による)は、生産大国と言って間違いない。であれば、牝馬限定の重賞はもっと増えてもいいように思う。

 たとえば世界一の生産国、アメリカでは2014年には3歳以上のGIが64レース行われることになっているが、そのうち38レースが牡牝混合で、牝馬限定のGIは26レースもある。

 冒頭のとおり発表となった2015年に予定されているダート交流重賞(中央も含む)では、3歳以上(または4歳以上)の牡牝混合戦が38レースあるのに対し、3歳以上(または4歳以上)の牝馬限定戦は8レースしかない。

 日本の生産地では、牡馬に比べて牝馬が安価で取引される傾向にあるが、牝馬限定重賞をさらに充実させることで、そうしたことの解決にもつながるのではないか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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