総合能力に注目
マイルCSのレコードは、10年エーシンフォワードの1分31秒8。あまりハイペースにはなりにくい京都1600mとすれば、かなり高レベルのレコード記録と思えた。
ところが、ここ2-3年の京都芝コースの高速コンディションはすごい。他場がさまざまな整備方法を模索しつつ、必要以上の高速コンディションを避けようとするなか、京都だけは一段と時計が速くなっている。下級条件だろうが、3歳戦だろうが、マイル戦を1分32秒台など珍しくないシーズンもある。
3歳
ミッキーアイルの2歳11月の1分32秒3の快レコードが、果たしてどのくらいのレベルを指し示すものなのか。あるいは、3歳牝馬
ホウライアキコの、ほぼ同時期10月の1分33秒2の高速記録が、果たして本当の、当時のスピード能力の指針になるのか。あまりに高速コンディションだったため、他馬との比較の際に、単なる馬場差だけでは埋め切れないところがあるから難しい。
今春4月のマイラーズC(京都外回り1600m)は、道中はそんなに速いタイムが生まれるような厳しいハイペースとは映らなかったが、ゴールすると、勝った
ワールドエースの時計は、1分31秒4のコースレコードだった。速いと見えなかったのも当然、レース全体は「前半4ハロン46秒6-後半44秒8」であり、マイルで大変なレコードが樹立されたのに、前半4ハロンの方が、後半より「1秒8」も遅いのである。
京都や阪神の1200mでは、コース形態もあって前半3ハロンの方が遅いバランスは出現するが、レコードの記録された1600mで、前半の方が1秒8も緩い流れは、未聞である。
もっと驚くのは、ワールドエースはドイツのシュタルケ騎乗だったから、いつもより早めに動いて出たのに、ワールドエース自身の前後半バランスは、前半を少し速く見積もってさえ、推定「47秒0-44秒4」=1分31秒4であり、前半4ハロンの方が実に「2秒6」も遅いのである。3000m級のレコードならこういうアンバランスもあり得るだろうが、レコードの樹立されたマイル戦である。
ワールドエースは、あのとき逃げた
レッドアリオンがバテずに頑張っているうえ、2着した
フィエロも、3着だった
エキストラエンドも伸びてきたから、後半は真剣、必死の1分31秒4ではあるが、でも、本当に能力を出し尽くすことによって快記録で勝ったのだろうか。前半の方が2秒6も楽なペースであの時計が記録できたのだから、もうちょっとだけ前半のピッチを上げていたなら、あのときの芝なら、もっと高速記録が生まれたのではないか。そう考えたくなる不思議なレコードの中身だった。
芝状態も、流れも、相手も異なるから、時計自体は大きな注目ではないが、あのマイラーズCが示すより、もっと高い能力があるのではないか。秘めている可能性はもっと高いレベルに違いない、と期待したい。ドイツ血統に、ディープインパクトの組み合わせ。同じディープインパクト産駒のなかでは、とくに総合能力に注目していい。重い血統背景ではない。逆に、G1が心配になるような軽いタイプでもあり得ない。若いP.ブドー騎手(21)は、下げてしまうような弱気な騎乗はない。シュタルケ騎手と同じように自力で進出するレース運びに期待したい。
相手本線は、定見のない騎手変更に多くのファンも戸惑いを隠せないが、今度はルメール騎手の
ロゴタイプ。やっぱり連続の騎手変更にいったいオーナーサイドはどうしたのだろう、の「?」はあるが、立ち直ったところでビュイック騎手が乗るエキストラエンド。明らかにここを目標にしたフィエロの3頭。穴馬なら、京都に戻った
グランデッツァか。