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浦和のジャジャウマナラシが快勝 地方勢のワンツー!/兵庫ジュニアグランプリ・園田

  • 2014年11月27日(木) 18時00分

(撮影:斎藤修)



小久保智調教師の見事な判断

 勝ったのは単勝万馬券の伏兵。そしてダートで連勝中の断然人気馬は6着。やっぱり2歳戦は難しい、というのがレースが終わっての感想だ。

 まずはデビューからダート2連勝で、単勝1.6倍という断然の支持を集めたキャプテンシップ。スタートして馬群のうしろ8番手からの追走は、前走も同じような位置取りだったので心配はしていなかったのだが、向正面半ばからペースが上がると、見るからに追走に一杯という感じ。直線ではバテた地方馬を交わしたが、中央4頭では最下位の6着という結果。前走の直線で見せた鋭い脚を発揮することはなかった。直前に坂路でかなり乗り込んでいたが、どうやらソエが出て間隔が空いた影響が少なからずあったようだ。立て直しての復活に期待したい。

 そして勝ったのは、浦和から遠征のジャジャウマナラシ。単勝169.7倍という、まったくの人気薄だった。平和賞5着、ハイセイコー記念5着は、ともに勝ったストゥディウムから4〜5馬身ほどの差。その成績からは、今度は中央の実績馬が相手で、さらに園田まで遠征してということでは、おそらく勝負にならないと見るのが普通で、それゆえの単勝万馬券だった。しかし今回のレースぶり、特に4コーナーの狭いところを割って抜け出したところ(これについてはあとで触れる)、さらに直線での切れを見ると、あくまでも結果論ではあるが、平和賞とハイセイコー記念が走らな過ぎたのだろう。それを見極めた上での、いわば格上挑戦という見事な判断は、さすがに2年連続で南関東の調教師リーディングを独走している小久保智調教師。恐れ入りましたというほかない。

 ちなみに小久保調教師は、これがダートグレード初制覇。つい最近でも、JBCスプリントでは6番人気のサトノタイガーで、勝ったドリームバレンチノにクビ差2着という惜しいレースがあった。サトノタイガーは、中央時代は芝のマイル以上が主戦場だったが、それをダートの短距離で再生させるというのだから、これもすばらしい。そうした実績を考えれば、グレードのタイトル奪取も時間の問題だった。中央の一線級とも互角に戦える馬を何頭も育ててきた船橋の川島正行調教師が今年亡くなられたが、その後を追う先鋒は、やはりこの人だろう。

 2着は北海道から遠征のオヤコダカで、着差は2馬身半つけられたものの、強い競馬を見せた。3コーナー手前ではまずトーコーヴィーナスが仕掛け、すぐにそれを追って3コーナー過ぎで外から被せるように先頭に立ったときは、勝つかとも思えるような勢いだった。強い時はものすごく強いレースをするが、負けるときはあっさりというタイプで、今後の成長に期待したい。

 そして残念だったのは、ここまで5戦5勝という地元期待のトーコーヴィーナスだ。3コーナー手前から動いて勝負に出たが、4コーナーでは、内の狭いところを突いてきたジャジャウマナラシと、外のオヤコダカに完全に挟まれるような形になり、馬が走る気をなくしたか、そのまま後退して7着という結果。ただ、自分から動いたぶん4コーナーではやや勢いをなくしているように見えた。仮にそこでも勢いがあれば、先に頭ひとつでも抜け出して、そうなると逆にジャジャウマナラシのほうが、最内にいたウィッシュハピネスとこの馬との間に挟まれて出られなかったのではないかとも考えられる。

 トーコーヴィーナスの予想のところで、<過去5年のこのレースの勝ちタイムは1分26秒〜28秒台。そしてこの馬自身は、園田1400m戦に4回出走して、勝ちタイムはいずれも1分31秒台というもの。>と書いたが、その不安が残念ながら当たったというべきかもしれない。今回はかなり水を含んだスピードの出やすい重馬場。ジャジャウマナラシの勝ちタイム1分26秒4は、一昨年のケイアイレオーネと同タイムでのレースレコード。ジャジャウマナラシは南関東で重賞に2度出走し、特に前走ハイセイコー記念では、逃げ馬が最下位に沈むという速いペースを2番手で追走したという経験があった。オヤコダカも前走北海道2歳優駿ですでに中央馬との対戦があり、2番手から4コーナーで先頭に並びかけての5着という経験があった。対してトーコーヴィーナスにとって、持ちタイムから5秒ほども縮めなければならないという今回の流れは厳しいものだったと思われる。仮に4コーナーで挟まれることがなくても、4着くらいが精いっぱいだったのではないだろうか。

 中央勢の最先着はトーセンラーク。前の集団からやや離れた中団を追走し、上り最速の37秒2で直線前に迫ったが、オヤコダカにはアタマ差届かずという3着。逃げて4着のウィッシュハピネスはそこから4馬身の差がついていた。中央勢で能力を発揮できたのは、初ダートでもトーセンラークだけという印象だった。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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