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同世代の明暗

  • 2004年02月16日(月) 16時15分
 1月11日、船橋「報知グランプリカップ」。イシノファミリーが見事な瞬発力で重賞3勝目をあげた。外からカイジンクンが押して先手を取りに行き、ナイキアディライトは引いて2番手。以下ロッキーアピール、ノムラリューオー、メイプルスプリング。1000m通過61.8秒、乾ききった馬場を考えるとけっして遅くはない。イシノファミリーは少し離れた中団。3コーナー過ぎ、徐々にエンジンをかけ、直線入口で先行馬群に取りついた。あと1F、叩き合いになってからは独壇場といってもいいだろう。ロッキー、ナイキ、前2頭をあっという間に捕え、最後は3馬身の差をつけた。「手応えはあまりよくなかったが、逆に折り合いがついていたということでしょう。今日はこの馬の切れ味がフルに生きた」(山田信騎手)。メンバー中最も状態がよかったこと、船橋コースに抜群の適性があること、別定52キロが恵まれたこと。ともあれ、1800m1分53秒7も含め、内容は統一Gレベルに近い。「もっと大きなところを狙わせたくなった。ローテーションはこれからじっくり考えます」(足立調教師)。おそらく今季は6月大井「帝王賞」が最終目標になるだろう。

 報知グランプリカップ(サラ3歳上 別定 南関東G3 1800m良)

○(1)イシノファミリー  (52・山田信)  1分53秒7
▲(2)ロッキーアピール  (56・山崎)   3
◎(3)ナイキアディライト (57・石崎隆)  3
△(4)メイプルスプリング (52・左海)   2.1/2
 (5)ナイキアフリート  (54・鈴木啓)  4
………………………………………………………
△(7)ノムラリューオー  (56・内田博)
△(10)カイジンクン    (56・的場文)

単360円 馬複490円 馬単980円 
3連複410円 3連単2170円

 ナイキアディライトは3着。道中ほぼ思惑通りの2番手とみえたが、直線中ほどロッキーに交わされた時点で、競馬を自ら終えてしまった。「現4歳=低レベル」という説がある。なるほどアディライトが試金石のここであっさり失速。続くべきナイキゲルマン、シャコーオープンもいっこうにふっ切れない。さらにJRAでもユートピア、ビッグウルフの伸び悩み。ただ、昨夏大井「JDダービー」は、帝王賞とほぼ互角の2000m2分04秒9、レースの迫力からも、名勝負であったとやはり思う。現に今回勝ち馬イシノファミリーは、同世代で羽田盃3着、東京ダービー15着。わずか半年、アディライトとの力関係がこうまで逆転するとは、おそらく誰もイメージできない。競走馬それぞれが内包する“成長力”の不思議さ。ともあれアディライトは正直一歩後退だろう。結果論ながら、昨夏以降の休養がさっぱり充電と出ていない。この日5キロ増。パドックの気配など素晴らしいが、いざ勝負となって別馬のように淡白だ。最近のトーシンブリザードとも何やら共通点がある。

 ロッキーアピールは正攻法の2着で能力通りの走りだった。勝ち馬と4キロ差を考慮しても、本質的に短〜マイルがベストだろう。メイプルスプリングはこの後26日川崎「エンプレス杯」を予定している。今日は11キロ増。いかにも途上と思える気配で見せ場十分の4着だった。昨秋クイーン賞はひとまくりの圧勝。次への期待はきわめて大きい。ノムラリューオー、バンケーティング(8着)は、ひとまず自分の競馬に徹した形で、すでに手詰まりというしかない。カイジンクンは3コーナーで失速。馬もパドックからカリカリした気配で、元よりG1川崎記念からの連闘は無理があった。

      ☆       ☆       ☆

 金盃(2月18日大井 サラ4歳上 ハンデ 南関東G2 2000m)

◎コアレスハンター (57.5・内田博)
○ファイブビーンズ (53・石崎隆)
▲ケリーライト   (51・山田信)
△マキバスナイパー (59.5・左海)
△ナイキゲルマン  (53・的場文)
△オンユアマーク  (56・鷹見)

 22日東京「フェブラリーS」も視野にあったコアレスハンターだが、寮馬ハタノアドニスにそこは預け、地元で確勝を期してきた。昨年このレースを6馬身差圧勝、以後統一Gロードへ快進撃が始まっている。南部杯、JBCクラシック、さらに東京大賞典、それぞれ2、3、2着だから、すでに全国区のダート最強ホース、その1頭として十分胸が晴れるだろう。デビューが遅れ、何度か長期休養もありながら、高橋三郎スタッフが我慢強く育て上げた夢の結晶。この相手で57.5キロでは正直ハンデ戦ともいえるまい。3ヶ月後の帝王賞を描きながらどう勝つかだ。

 ファイブビーンズは前々走埼玉新聞杯で初タイトル。しかし4コーナー先頭、必勝パターンに持ち込んだマキバスナイパーをあっさり捕えた内容は特筆に価する。昨暮れ大井→船橋転厩がいいカンフル剤になったということ。使える状態だった地元グランプリCを見送り、万全の態勢でここに臨む。ハンデ53キロも依然有利だ。本来注目すべきは明け4歳馬だが、No.2ナイキゲルマンは前走オープン特別でクールアイバーに差し返され、試行錯誤という以上に成長力に不満がある。それなら貫禄のマキバスナイパー、オンユアマーク。穴はケリーライトとした。ゲート難、気性難を抱えるサンシャインフォーエヴァー産駒だが、昨秋からのレースぶりは文字通り晩成開花。前走船橋、上昇馬アイディンワンダーの2着も、ゴール際の脚いろは数字に表わせない勢いがあった。

      ☆       ☆       ☆

 映画「シービスケット」をみた。いかにもアメリカ的なサクセスストーリーという風評で、なるほどお話は確かにそうだが、画面の迫力と美しさ。個人的にはごく素直に満足できた。とりわけG.スティーブンスら“本物”の熱演、シービスケットの成長を描くため、自前の競走馬を何頭も育てた経緯。例えば日本でこれを作ろうとすれば、大半が特撮になるのだろう。よくいわれるハリウッドの凄みとは、まさしくこれか。

 感じたこと。このストーリーは、現在日陰にいる馬、日陰にいる人々の逆転をテーマにしている。だから今それを日本流に翻訳すれば「地方競馬の物語」ともいえるだろう。とにかく上をめざして頑張る、それは無理だよといわれても頑張る。現実にシービスケットは、マイナーから紆余曲折で這い上がり、世紀の名馬とされたウォーアドミラルとの一騎打ちに勝っている(らしい)。

 高知のハルウララ。3月22日「黒船賞」に便乗し、その前座レースの馬券が全国発売になるという。好漢・武豊の騎乗はもちろんいいが、何かヘン…、ごく普通の競馬ファンはたぶんそう思っている。高知競馬の窮状、スターへの渇望、それは納得としてもやはり問題が違うだろう。実際、記者自身も、当日何やら不透明な気分でその予想をつけることになる。ハルウララにははたしてどんなシルシ(評価)がふさわしいか。ただこれは命から2番目に大切なお金がかかるギャンブルなのだ。負けてもいい、あるいは負けた方がいい…。シービスケットの物語とはいわば対極天でもあるだろう。この状況は何かヘン、やはりそういうしかない。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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