スマートフォン版へ

2014年の欧州リーディングサイヤーランキング

  • 2015年01月07日(水) 12時00分


17歳を迎えてもまだまだ続きそうなガリレオの天下

 netkeiba.comを通じて競馬をお楽しみの皆様、遅ればせではございますが、新年明けましておめでとうございます。海外の競馬や馬産に関する有益な情報を、わかりやすい文章にしてお届け出来るよう、益々精進を重ねる所存です。本年も、本コラム「世界の競馬」を御愛顧いただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
        ◇

 2015年へ向けた前向きな話題をお届けする前に、まずは、2014年を回顧し検証するのが手順というものだろう。ということで今回は、2014年の欧州リーディングサイヤーランキングを御紹介したい。

 英国と愛国の数字を合算した統計によるリーディングサイヤーは、ガリレオだった。

 産駒の総収得賞金は719万3916ポンドで、第2位に入ったインヴィンシブルスピリットの収得賞金が320万8381ポンドだったから、ダブルスコアを遥かに上回る大楽勝だった。03年に生まれた初年度産駒が3歳となった06年に早くもリーディング4位に食い込むと、07年には2位に上がり、08年には自身初めてとなるリーディングを獲得。翌09年は5位に陥落したものの、10年に再び首位に立つと、以降はそこがガリレオの指定席となった。すなわち、ガリレオにとって5年連続6度目の首位となったのが14年だった。

 全世界で25頭もの重賞勝ち馬を輩出したガリレオによって14年の稼ぎ頭は、欧州3歳世代にあって英国と愛国のダービーを制したオーストラリアで、収得賞金は204万7198ポンドだった。古馬にも、G1・3勝で117万6884ポンドを収得したノーブルミッションを筆頭に、錚々たる陣容を誇ったのはともかくとして、ガリレオの傑出したところは、2歳世代にもG1ナショナルSを制したグレンイーグルス、G1マルセルブーサック賞を制したファウンド、G1フィリーズマイルを制したトゥゲザーフォーエヴァーらが出現し、英愛2歳リーディングでも2位に入っている点にあろう。

 年が明けて17歳を迎えたガリレオの天下は、今後も当分続きそうである。

 第2位は前述したようにインヴィンシブルスピリットで、同馬にとってはこれまでの最高位となった。

 彼をその地位に押し上げる原動力となったのが、愛2000ギニー、セントジェームスパレスS、サセックスS、ジャックルマロワ賞と4つのG1を制したキングマンと、ジャンプラ賞、ムーランドロンシャン賞、クイーンエリザベス2世Sと3つのG1を制したチャームスピリットの2頭である。この欧州マイル路線の2トップは、収得賞金の面では、111万6884ポンドを収得したチャームスピリットが、94万4269ポンドに留まったキングマンを上回っている。

 第3位は、G1エクリプスS勝ち馬ムカドラムらを輩出し、274万2740ポンドを収得したシャマーダルだった。

 実はシャマーダルは、香港調教馬で香港マイルを圧勝したエイブルフレンド、同じく香港調教馬で5月にシンガポール国際Cを制したダンエクセルらを出しており、集計の範囲を広げるとインヴィンシブルスピリットを逆転する。

 第4位は、G1英二千ギニー勝ち馬ナイトオヴサンダー、G1英チャンピオンS2着馬アルカジームらの活躍で、249万4184ポンドを収得したドゥバウィーだった。

 このドゥバウィーもまた、ドバイのG1マクトゥームチャレンジ・ラウンド3を制したプリンスビショップ、香港調教馬でG1シンガポール国際スプリントを制したラッキーナインらを輩出し、多彩な活躍を見せている。

 第5位は、G1英オークス2着馬ターファシャ、G1エクリプスS2着馬トレイディングレザーらの活躍で、200万5349ポンドを収得したテオフィロで、英愛サイヤーランキングは3位から5位までダーレー供用種牡馬が並ぶことになった。

 仏国における14年のリーディングサイヤーは、ポンド換算で263万1899ポンドを収得したモティヴェイターだった。

 これはひとえに、1頭で231万1288ポンドを収得したトレヴのおかげで、更に言えば、274万2720ユーロ(=約215万ポンド)の1着賞金を手にした凱旋門賞におけるパフォーマンスだけで、トレヴは父を仏国のリーディングに押し上げたのだった。

 実は、欧州全域を集計対象としたリーディングサイヤーランキングを作ると、首位はガリレオではなく、モティヴェイターとなる。凱旋門賞の賞金が突出して高いゆえに起こる現象で、モティヴェイターが優れた種牡馬であることは認識していても、ガリレオよりも上と評価する生産者はおそらく皆無であろう。

 また、独国におけるリーディングサイヤーは、G1独ダービー馬シーザムーンを出したシーザスターズだった。

 前述したように、英愛2歳リーディングにおけるガリレオは2位だったが、それではガリレオを抑えて首位に立ったのは誰かと言えば、コーディアックであった。

 自身は現役時代に重賞勝ちの実績がなく、母がG1仏オークス馬ラファーで、4歳年上の半兄に英愛総合リーディング第2位のインヴィンシブルスピリットがいるという血統背景を買われて種牡馬入りしたのがコーディアックだ。これまでも、仕上がり早の仔を多く出す種牡馬との定評を得ていたが、14年の2歳世代からは、G1チーヴァリーパークS勝ち馬ティギーウィギー、G1デューハーストS2着馬コーディベア、G1チーヴァリーパークS4着馬テラー、LRメアリーゲートS勝ち馬ペイシェンスアレグザンダーといった、これまでには見られなかった「大物の相」を持つ産駒が出現。10年に初年度産駒が競走年齢を迎えた同馬にとって、5世代目の産駒にして迎えた大ブレークとなった。

 コーディアックは更に、集計の範囲を欧州全域に広げると、43頭の2歳勝ち馬を輩出しており、ケレイフとインヴィンシブルスピリットが保持していた42頭という記録を上回る、2歳勝ち馬数の歴代最多記録を更新している。

 英愛2歳リーディングの第3位が、タタソールズミリオン2歳S勝ち馬シークレットブリーフらが出て79万1891ポンドを収得したシャマーダル。

 そして第4位が、G1デューハーストS勝ち馬ベラードを輩出し、49万4073ポンドを収得したロペドヴェガで、この馬がフレッシュマンサイヤーチャンピオンとなった。

 同馬は伊国でもG2グランクリテリウム勝ち馬ヒーロールックを、仏国でもG3レゼルボワ賞2着馬バルティックコムテッセを出しており。極めて順調な種牡馬デビューとなっている。

 現役時代は、G1仏二千ギニー、G1仏ダービーの2冠を制しているロペドヴェガ。13年の1歳市場に上場された初年度産駒は、35頭が平均価格5万3839ポンドで購買され、マーケットにおける評価も上々だったが、実際に競馬場で、これを裏付ける結果が出たわけで、今後が楽しみな若手種牡馬と言えよう。

 次回のこのコラムでは、2014年の北米におけるリーディングサイヤーランキングを検証する予定だ。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング