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真のダートチャンピオンは?

  • 2015年01月16日(金) 18時00分


◆「3本立て」のチャンピオンに疑問

 JRA賞に続いて、NARグランプリの表彰馬・表彰者が発表された。

 ここでネタとして取り上げるからには、やはりダートに関連した部門。JRA賞の「最優秀ダートホース」と、NARグランプリの「ダートグレード競走特別賞」の選考は興味深いものだった。

 2014年のダート戦線では、ホッコータルマエとコパノリッキーの2頭が抜けていたということでは疑いようがなく、ともにGI/JpnIを3勝ずつで、ほかに勝ち星はなし。JRAのダートGIをひとつずつ分け合い、さらに直接対決でも互いに2勝2敗と、重賞タイトルの勝ち負けでは甲乙つけがたいもの。そのわりに、JRA賞の最優秀ダートホースでは、ホッコータルマエ276票、コパノリッキー9票という圧倒的な差がついた。

 あえてこの2頭の差を挙げるなら、同じGI/JpnIが3勝ずつでも、ホッコータルマエが国際レースとしてのGIを2勝だったのに対して、コパノリッキーは1勝のみ。それと、最高レーティングが、ホッコータルマエが119(東京大賞典)に対してコパノリッキーが117(JBCクラシック)ということもある。投票された方がこうしたことをどう評価されたかはわからないが、ホッコータルマエは、終盤のチャンピオンズCと東京大賞典を連勝したということは大きかったのではないだろうか。

 以前から言われていることだが、後の方のレースの結果が重要視される(ように思える)ことの判断は難しい。

 JRA賞「年度代表馬」の投票でも、ジェンティルドンナとジャスタウェイは、ともにドバイと国内のGIをそれぞれ1勝ずつで、ジャスタウェイがワールドベストレースホースランキングで日本馬として初めて世界1位になったということでは、もっとジェスタウェイが票を集めるかと思ったが、ジェンティルドンナ231票に対してジャスタウェイ51票という結果だった。レースで発揮したパフォーマンスの比較ということでは、そのレースが1年間のいつの時期に行われたかは関係ないはずだが、「1年間でどの馬がいちばん競馬を盛り上げたか」という心情的だったり印象的だったりということでは、引退レースの有馬記念を勝ったことが劇的だったジェンティルドンナに票が集まるということもわからないでもない。

 そしてNARグランプリ「ダートグレード競走特別賞」は、地方競馬で実施されたダート交流重賞の成績のみによって選考されるもの。ホッコータルマエとコパノリッキーは、こちらでもGI/JpnIを2勝ずつで、直接対決でもお互いに1勝1敗とまったくの五分。選考委員の多数決では、ホッコータルマエ7票に、コパノリッキー5票という接戦だった。

 選考過程を見ると、コパノリッキーを推した委員には「年間を通して(ダート路線を)リードしてきた」という意見があったようで、しかし「頂上決戦という意味合いを持った東京大賞典での勝利が最終的には決め手となった」とのこと。ただ地方競馬では、東京大賞典よりJBCクラシックのほうこそ頂点という見方もあり(実際に1着賞金でも東京大賞典が7000万円で、JBCクラシックが8000万円)、それゆえ「ダートグレード競走特別賞」の選考は接戦になったものと思われる。

 とはいえ日本の競馬全体で見ると、JRA賞「最優秀ダートホース」というダートのチャンピオンがいて、NARグランプリ「年度代表馬」というチャンピオン(これはかつてコスモバルクが選ばれたように、必ずしもダートのチャンピオンとは限らないが)がいて、さらに「ダートグレード競走特別賞」がいてという、ダートチャンピオンの3本立てになっているのはどうなのだろう。

 今や地方競馬のレースといえど、GI/JpnIになれば海外の主要メディアでもその結果が取り上げられている。先にも触れたワールドベストレースホースランキングが世界的な指標として注目されているように、競馬に国境はなくなってきている。そうした中で、日本ではダートチャンピオンが3本立てで選ばれているというのは、他国から見れば理解に苦しむのではないか。

 このダートチャンピオンの選考については、いずれ整理される必要があると思う。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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