スマートフォン版へ

ダート女王サンビスタが貫禄のV/TCK女王盃・大井

  • 2015年01月22日(木) 18時00分

サンビスタ(撮影:高橋正和)



初めて背負う57kgにもかかわらず独壇場ともいえるレースぶりだったサンビスタ

 18回目のTCK女王盃は、過去最少頭数の8頭立て。中央・地方の格差がはっきりしている現状では、南関東勢といえど有力馬が勝ち負けのできる地方重賞にまわってしまうのもある程度は仕方ないと思う。

 それにしても断然人気に支持されたサンビスタは、初めて背負う57kgにもかかわらず、独壇場ともいえるレースぶりだった。スタートに課題があり、今回もゲートを出るのがもそっとしていて5番手から。それでも出遅れたというほどではなく、エスメラルディーナがハナに立つと、すんなり隊列が決まった。スタートしての2F目は先行争いで11秒台になることもめずらしくないが、そうはならず最初の3Fは、12.5-12.5-13.5で38秒5というゆったりとした流れ。その後も12秒台のラップが続いて1000m通過は63秒1。格下のタッチデュール、クロスオーバーらもひとかたまりの馬群についていけたことでも淡々と流れていたのがわかる。当然上り勝負となり、最後は12.6-11.9-12.3で3Fは36秒8と、後半の瞬発力勝負となった。最後から2F目にこのレースでは一度だけ11秒台を記録しているが、そこはヨーイドンとなった4コーナーから直線半ば。そして馬群からあっという間に抜け出したのがサンビスタで、この馬自身の上り3Fは36秒5。2着のアクティビューティに2馬身半差をつけてという完勝だった。それが他馬より1〜3kg重い57kgを背負ってということだけに、やはりこの馬の力が抜けていたという結果。雨の降る稍重の馬場で、戻ってきたC.デムーロ騎手は泥をかぶって上半身まっ黒。一団馬群のど真ん中を進んで、泥をかぶりどおしでのレースながら、まったくひるむことなく力を発揮したということでは、この馬は精神的な強さも兼ね備えているのだろう。

 牝馬限定のダートグレードを予想する際に、個人的にひとつ指標としているのが、「前走、前々走で牡馬とのダートの準オープンを勝つか勝ちに等しい内容があり、かつ、さらなる上昇も期待できそう」という馬には、▲以上の印を積極的につけようと考えている(もちろん相手関係もあるので、△以下の評価になることもあるが)。それが今回のソーミラキュラスで、54kgという斤量もあっての本命だった。残念ながら3着で、サンビスタからは離されたものの、2着アクティビューティにはクビ差、4着トロワボヌールには3/4馬身差で、斤量差をふまえた上で、それらの実績馬とはほとんど差がなかった。

 もうひとつ指標としているのが、「牡馬とのダート重賞で上位争いができれば、牝馬限定のダートグレードでは力が抜けていると見る」ということ。今回、それに当たるのがサンビスタのチャンピオンズCでの4着で、斤量を考えての予想は対抗だった。しかし実際には、斤量差以上に力が違っていたということ。その差には、繰り返しにはなるが、スタートいまいちでもペースが早くならなかったため楽に好位を追走できたという展開的なこともあったし、道悪で泥をかぶっても意に介さないというこの馬自身の強さも含まれる。次走はエンプレス杯ではなくフェブラリーSとのこと。たしかにブリーダーズゴールドCでの圧勝以降、ワイルドフラッパーに完敗の2着だったレディスプレリュードだけは力が発揮できなかったと考えるべきで、それを除けばダートではまだ底を見せていない。

 アクティビューティは、これで牝馬ダートグレードでは7度目の2着。今回は3頭に人気が集中し、単勝ではエスメラルディーナ18.5倍、アクティビューティ20.0倍と、中央勢の中では2頭がやや蚊帳の外という評価だった。それにしてもアクティビューティは、2013年12月のクイーン賞以来1年以上勝ち星から遠ざかっているとはいえ、実力以下の評価にしかならないことが多く、昨年のTCK女王盃から今回のレースまで牝馬のダートグレードを8戦して、そのうち6戦で着順が人気を上回った。常にそれなりの配当になる馬券にからむ可能性がある、ということは覚えておきたい。

 地方から7連勝のあと重賞初挑戦となったソーミラキュラスは3着。最後の直線ではアクティビューティのぴったりうしろを同じ脚色で伸びてきていただけに、牝馬同士のダートグレードなら勝負になる可能性を見せた。

 トロワボヌールは、距離の長い大井ならということで評価したが、得意の末脚を発揮することなく4着まで。最内を突いて、エスメラルディーナに寄られて狭くなったところもあったし、やはり左回りには課題があるのかもしれない。

 唯一の地元馬レッドクラウディアは着順こそ5着だが、2着以下とはほとんど差がなかった。積極的に2番手を追走してというレースぶりからも復調を感じさせるもの。話は逸れるが、この馬をモノサシにするなら、東京シンデラレマイルをぶっちぎって勝ったノットオーソリティは、次回エンプレス杯など牝馬限定のダートグレードに出てくれば上位争いが期待できそうだ。

 エスメラルディーナは、半年ぶりでしかもプラス17kgの馬体重ではいかにも厳しかった。残り200m手前、鞍上の左ムチで内によれてトロワボヌールに接触しそうになったところはすでに苦しかったのだろう。直後に失速し、5着のレッドクラウディアから4馬身離された。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング