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『海外レースの馬券を国内で販売へ』実現への見通しと課題

  • 2015年01月26日(月) 18時01分
教えてノモケン

 年明け早々、大きなニュースが飛び込んできた。政府が1月26日開会する通常国会に、海外の主要レースの馬券発売を解禁する競馬法一部改正案を提出する方針であることが明らかになったのだ。法改正がスムーズに進んだ場合、対象レースの絞り込みや発売に必要なコンピューターシステムの整備を経て、早ければ来年後半に発売が実現する見通しだ。

 日本馬の海外での活躍を受けて、JRAが所管官庁の農水省に以前から要望してきた案件であり、一歩前進したことは間違いない。だが、競馬を巡る文化が全く異なる海外のレースを発売することは、ファンにもメディアにも従来とは全く別なリテラシーを要求することになる。そもそも商品性があるかどうかを含めて、詰めるべき課題は山積している。

カジノ法案の「風よけ」に?


 この件は1月13日に産経新聞が報じたのだが、直後のJRAの反応には当惑の色が見えた。積年の懸案が動いたのだから、公式には当然、歓迎の意を示しているが、そう話は単純でない。裏にはカジノ解禁問題がある。

 昨年末の衆院解散・総選挙で、カジノ解禁の第一歩となるIR(統合リゾート)法案は廃案となり、今国会で再び議員立法として提出される。仕切り直しで、動きが表面化する前の微妙なタイミングで、別なギャンブル案件が世間の注目を浴びる。JRAの本音としては、カジノに関心が集まっている間に、この問題を静かに進めて欲しかったはずだ。

 現実には、カジノ解禁が現実味を帯びるとともに、メディアもギャンブル依存症問題に注目し始めた。カジノの有力候補地だった沖縄では、米軍基地移転問題が争点だった昨秋の県知事選で、与党推薦候補に圧勝した翁長雄志新知事が年明けに「誘致を見送る」と明言。

 与党でも公明党は、女性支持層を意識してか消極姿勢が目立つ。カジノと依存症問題を取り巻く現在の風向きは、ギャンブル事業者にとって、順風どころかアゲンストだ。この状況で法改正が表面化したことで、この件は「後出しジャンケン」どころか、カジノの問題「風よけ」にされかねない雰囲気だ。

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 正直、このタイミングでの表面化は、筆者も唐突に感じた。カジノ法案が進展し、依存症対策が既存の公営競技にも求められる際、半ばバーターのような形で実現するシナリオを描いていた。JRA内部には、現在の流れを「期せずして、我々に対する世間の風当たりを計る機会になった」との見方もある。

 法案成立の可能性だが、鍵は安倍晋三政権の進める農協改革問題か。1月11日投開票の佐賀県知事選は、この問題で保守が分裂し、自民党中央の推す候補が沖縄に続いて惨敗した。関連法案は今国会提出予定だが、競馬法と同様、予算関連法案ではなく、審議入りは予算審議後の5月後半から6月となる。処理の順位が農協関連法案より後回しになった場合、成立は予断を許さない展開となろう。

「損失補填」になるか?


 法改正が動き出した背景には、日本馬の国際的な活躍がある。昨年は史上最多の海外GI年間4勝を達成し、通算勝ち星も25に伸びた。昨年の競走馬の世界ランキングでは、ジャスタウェイ、エピファネイアが年間1、2位。1990年代、海外遠征を促すために、勝てば巨額の報奨金まで出していたJRAとしては慶賀の至りだが、90年代と今日では経営状況が一変した。

 昨年は29頭が海を渡ったが、施行者側から見れば、有力な競走資源の流失である。国内で走ることで期待された売り上げが失われる「機会費用」を、多少なりとも補填し、競馬への関心を引く装置として、海外主要レース発売は期待されている。一方、

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1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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