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時代の変化を感じたNARGP

  • 2015年02月06日(金) 18時00分


◆所属という枠を越えた活躍

 2月5日、地方競馬の年度表彰であるNARグランプリの表彰式が都内のホテルで行われた。今回もグリーンチャンネルの番組企画で受賞者、受賞馬関係者の方々にインタビューをさせていただいたが、時代の変わり目を実感させられた年だった。あるいは世代交代と言ってもいいかもしれない。

 まずひとつは、特別賞として表彰されていたのだが、川島正行調教師が昨年亡くなられたということだろう。代わって南関東のトップに立ったといえるのが、最優秀賞金収得調教師賞を受賞した浦和の小久保智調教師だ。またNARグランプリの表彰とは関係ないものの、3年連続で年間100勝以上を挙げ、特に昨年は、自身の持つ南関東の調教師として最多勝記録を更新する134勝を挙げ、ぶっちぎりでの南関東リーディングともなった。

 小久保調教師はまた、ダートグレード初制覇となったジャジャウマナラシ(兵庫ジュニアグランプリ)が2歳最優秀牡馬に、そしてJBCスプリントで2着だったサトノタイガーが最優秀短距離馬に選出された。ちなみに浦和所属馬がNARグランプリで表彰されるのは、1994年にサラブレッド系2歳最優秀馬(当時は旧年齢表記の3歳最優秀馬)となったヒカリルーファス以来じつに20年ぶりのことだった。

 小久保調教師は表彰式のインタビューで、「川島調教師が元気なときにトップに立ちたかった」と話しておられたが、2012、2013年も収得賞金では川島調教師に次いでの2位で、昨年のこれらダートグレード戦線での活躍があれば、たとえ川島調教師がお元気であられても逆転していたかもしれない。

 また年度代表馬となったサミットストーンの矢野義幸調教師(船橋)は、2012、2013年と南関東の勝利数リーディングでは小久保調教師に次いでの2位で、賞金リーディングでも昨年小久保調教師に次いでの全国2位。おそらくこの2人の調教師が今後の南関東を、そして地方競馬全体を引っ張っていくことになるのだろう。

 表彰馬では開催規模的にどうしても南関東所属馬の選出が多くなるのだが、2014年も各部門表彰で選出された(中央のホッコータルマエが選ばれたダートグレード競走特別賞とばんえい最優秀馬を除いて)8頭のうち6頭が南関東所属馬。しかしそのうち主戦騎手が南関東の所属騎手だったのは2頭のみということでも時代の変化を感じさせた。

 先に挙げた浦和・小久保調教師の表彰馬では、ジャジャウマナラシが兵庫の田中学騎手、サトノタイガーが金沢の吉原寛人騎手(現在は期間限定で川崎所属)。そして3歳最優秀牡馬のハッピースプリントも吉原騎手だった。最優秀ターフ馬のプレイアンドリアルが中央の柴田大知騎手だったことはともかく、地方競馬では近年、期間限定騎乗や重賞でのスポット参戦によって、騎手は所属地区以外で騎乗することもかなり自由になった。それによって、実力が認められれば所属という枠を越えて活躍できるようになったことを示しているというのも、今回の受賞馬を見て感じたこと。

 最後に、ちょっとうれしくなったシーンをひとつ。表彰式後の祝賀会では、4年連続で最優秀勝利回数調教師賞を受賞した高知の雑賀正光調教師と、年度代表馬・サミットストーンの矢野義幸調教師が、かなり長い時間、楽しそうに酒を酌み交わされていた。聞いてみると、おふたりとも1988年に廃止された紀三井寺競馬場(和歌山県)の出身で、年齢も1つ違い。競馬場の廃止によって移籍を余儀なくされ、それでもまだ行き場のあった調教師や騎手は幸せなほうだろう。しかし移籍先ではおそらく相当な苦労があり、それでもこうして地方競馬の頂点ともいえるNARグランプリの表彰式で再会できたという、苦労が報われたことを喜び合う場面でもあった。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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